『COP CAR コップ・カー』主演、ケヴィン・ベーコン インタビュー
「悪役を演じるのは役者冥利につきる」なんてのは迷信だよーーケヴィン・ベーコン、役者道を大いに語る
「デビューした当時は、もっと人間の深部を描いたような作品がたくさんあった」
——今作『COP CAR コップ・カー』では製作総指揮にも携わっていますが、具体的にはどのようなことをしたのですか?
ベーコン:僕が製作に携わることになった時点で、もう資金も集まっていたし、脚本もできあがっていたので、作品の立ち上げや資金集めに奔走したわけじゃないんだ。ただ、映画って怖いもので、どんなに条件が整ったように思えても、撮影時の天候だったり、キャスティングの問題だったり、公開タイミングだったりの影響で、「やっぱりこの作品は作らないでおこう」となってしまうことがあるんだ。製作延期や製作中止になる理由はいつだって山のようにある。だから、僕のこの作品での裏方としての役割は、レールに乗った作品を、止まらないように後ろから押し続けたということかな。ちょうど『ザ・フォロイング』(FOX製作のテレビシリーズ。ケヴィン・ベーコン主演)のシーズン2と3の間にちょっとだけ休みの時間があったので「そこで撮るしかないよ」と念を押したりしてね。ただ、この作品の現場は、みんながプロデューサーであり、誰もプロデューサーではないような、そんな感じだった。少人数での撮影だったから、みんなで昼のケータリングの準備から機材運びまで、なんでもやっていたんだ。久々にそういう現場に参加するのは、とても楽しいことだったよ。
——そんな低予算の作品だった本作の次作として、まだ30代前半という若さの監督のジョン・ワッツは、『スパイダー・マン』シリーズの新作という大きなプロジェクトに挑むことになりました。映画界の先輩として、彼に何かアドバイス、あるいはエールを送るとしたら、どんなことでしょうか?
ベーコン:ジョンにアドバイスなんて不要だと思うけど(笑)。彼はまだ本作を含めて長編作品は2作しか撮ってないけれど、本当にびっくりするほどの自信を持っていて、彼だけのぶれないビジョンを持っているんだ。決して生意気にはならずに、そういったものを持ち合わせているのは見上げたものだと思う。きっと『スパイダー・マン』でも今回と同じようにクリアなビジョンを持って、いい作品を作ると思うよ。個人的には、きっと彼の『スパイダー・マン』は成功するだろうと思うけど、その後は、また『COP CAR コップ・カー』のように自分からアイデアを出した、自分自身で作りあげたような作品に立ち戻ってほしいと思っている。ずっとスーパーヒーローものだけを作り続けるようになるとしたら、彼の才能の無駄遣いになるんじゃないかなって(笑)。多分、僕がそう思うのは、今の映画業界って、そうしたメガヒット・フランチャイズ、それこそ製作費だけで1億ドルも2億ドルもかかっていて、興収も10億ドルくらい稼がないとつじつまが合わないような作品ばかりが作られているからなんだ。自分がデビューした当時は、もっと人間の深部を描いたようなストーリーの作品がたくさんあった。だからスーパーヒーローもの、モンスター、それから宇宙もの、こういったものじゃない、より人間を掘り下げられるような作品を、ジョンにはこれからもぜひ撮ってほしい。映画にとってアクションも大事だし、サスペンスやスリルも大事だ。でも、それと同時に心理描写やディテールに富んだ、人間をしっかりと描いた作品というのも大事なんだ。まぁ、僕がそう言ったとしても、彼はスーパーヒーローものを撮り続けるかもしれないけどね(笑)。
(取材・文=宇野維正)
■公開情報
『COP CAR コップ・カー』
2016年4月9日(土)公開
監督:ジョン・ワッツ
製作:コディ・ライダー、アリシア・バン・クーバリング、サム・ビスビー、ジョン・ワッツ
出演:ケビン・ベーコン、ジェームズ・フリードソン=ジャクソン、ヘイズ・ウェルフォード
公式サイト:cop-car.com
(C)Cop Car LLC 2015