ディカプリオ「賞を受け取るために仕事をしているわけではない」 来日会見でオスカー受賞に言及

ディカプリオ来日記者会見
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レオナルド・ディカプリオ

 『レヴェナント:蘇えりし者』で、米アカデミー賞主演男優賞に輝いたレオナルド・ディカプリオをゲストに迎えた記者会見が、3月23日に都内ホテルで行われた。

 本作は、熊に襲われ重傷を負ったハンターのヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)が、息子を殺害し自分を見捨てた仲間へ復讐するために、荒野の中でサバイバルを繰り広げていく姿を描く作品。本年度のアカデミー賞では、監督のアレハンドロ・イニャリトゥが2年連続で監督賞に輝き、撮影監督のエマニュエル・ルベツキも3年連続で撮影賞を受賞した。日本を代表する音楽家・坂本龍一が音楽を担当している。

 黒のスーツで登壇したディカプリオは、日本語で「ありがとう」と述べ、「来日は15回目くらいだと思うが、日本へ戻ってくるたびにいつも嬉しく感じている」と挨拶した。オスカー受賞の感想を聞かれると「私がオスカーを受賞した理由について分析するのは難しいが、この作品は私の人生において特別なものになった。アレハンドロがどうやってこの映画を完成させたのかは理解し難いが、本作は永遠に映画史に残る芸術作品だ」と、監督と作品への敬意を表した。続けて、「受賞したばかりなので、これからどんな変化があるのかはまだわからない。ただ、私自身はなにも変わらないことを望んでいる。今回の受賞は嬉しいが、私は賞を受け取るために仕事をしているわけではない。偉大な俳優たちの後に続けるように、これからも最高の映画を作り続けていきたい」と語り、オスカー像の所在を問われると「自宅のリビングルームに飾ってある。友達がみんな見せてほしいと家にやって来るんだ」と、笑みを交えて語った。

 プライベートでも度々日本を訪れるというディカプリオは、今回の来日で行きたい場所を聞かれると「大好きな場所は京都。日本は歴史が古く素晴らしい文化を持っているので、大仏を見たり寺院を巡ったりするのが好きなんだ。桜の季節に来たのは初めてだから、すごく楽しみにしている」とコメントした。

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 休業宣言を取り止めて本作に出演した理由を「『アモーレス・ペロス』からアレハンドロのファンだった。彼の製作スタイルがとても独創的で特別なものだったから、この機会を逃してはいけないと思ったんだ」と明かし、アレハンドロ監督との撮影現場については、「出演者もスタッフも過酷な撮影になることは最初から分かっていた。現場では毎日8〜9時間のリハーサルを行い、本番はチーボ(エマニュエル・ルベツキ)が“マジックライト”と呼んでいる1時間半の限られた時間の中で撮影した。まるで演劇の舞台に臨んでいるような気持ちだったが、その限られた撮影時間や過酷な状況が作品に大きな影響を与えた」と述べ、意欲的な撮影を成し遂げた監督の功績がこれからも高い評価を受けていくのではないかと続けた。

 また、ディカプリオは撮影中で一番つらかったのは厳しい寒さだったと語る。「スタントやアクションのシーケンスは何ヶ月も準備期間があったが、極寒の中での演技は一番のチャレンジだった。気候変動の影響で急に暖かくなり、雪がなくなる事態が発生したため、アルゼンチンの最南端まで雪を探しにいくこともあった。過酷な撮影だったが、振り返った時にチャレンジしたことを誇りに思える作品だ」と撮影時のエピソードを明かした。

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 19世紀、アメリカ西部の未開拓地を舞台に、主人公のグラスが命をかけてサバイバルしていく姿がみどころのひとつである本作。もしサバイバルすることになった場合、なにを持っていくと質問されたディカプリオは、「電話、ソーラーパネルのような充電装置、火を起こすためのライターを持っていきたい」と笑顔で回答し、「人類は環境に順応するとよく言うけど、私はあんな過酷な状況には耐えられないと思う。オスカー像は家に置いていくよ」と続け、笑いを誘った。

 本作のテーマについて言及する一幕では、「映画の中では、純粋無垢な大自然の中に資本主義(商業)が入り込み、白人対原住民の戦いに発展する。しかし、これは現代でも全世界で起こっていることだ。たくさんの動物が生息する森林、原住民が長く守っていた土地を資源のために荒らしていく行為には、自然への敬意が欠如しているように感じる。人類というものがどういう存在で、地球を守るために我々はこれから何をすべきなのか、すべての人がこの問題意識を持ってほしい」と呼びかけた。

 監督に直談判してまで、ジョン・フィッツジェラルド演じるトム・ハーディーとの共演を熱望したというディカプリオ。「トムとは『インセプション』をきっかけに良い友人になれた。彼の男らしさや強さには共感できるし、最高の俳優のひとりだと思っている。今回共演できたのは非常に光栄で、また共演したい」とトムへ賞賛の言葉を贈り、劇中での関係については「フィッツジェラルドとグラスはコインの裏表のような関係。生へ執着心が誰よりも強い部分は共通しているが、フィッツジェラルドは人種差別の意識を持っていたり、仲間を後ろから刺すような男で、原住民とのハーフの息子を持つグラスは、人種差別がある中でも息子をなんとか守ろうとする父親だ。そんな二人の対比が良く描かれている」と語った。

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 最後に、過酷なロケを撮影を終えての感想を聞かれると、「2年の製作期間と6ヶ月間のプロモーションを含め、私の人生の中で非常に重要な一章を体験することができた。日本でのプロモーションが最後なのでいまは少し安堵している」と表情をほころばせた。現在、『ザ・コーヴ』のルイ・シホヨス監督とドキュメンタリー映画を製作しているというディカプリオは、「すでに中国、インド、南極、北極には行き、これからインドネシアにいく予定だ。本当に地球はどんどん変わってきていて、我々は地球のために何ができるのか考えていく必要がある。このドキュメンタリーは次の大統領選挙前に公開したいと思っている。米国のリーダーには科学を理解している人が必要だ」と語った。

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(取材・文=泉夏音)

■公開情報
『レヴェナント:蘇えりし者』
4月22日(金)TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディほか
(c)2016 Twentieth Century Fox
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/revenant/

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