超問題作『懲罰大陸★USA』の衝撃 70年代モキュメンタリーの特異性に迫る
さらに、本作のドキュメンタリー的な面白さを強調するのが、次々と登場する政府に囚われた若者たちだ。彼ら彼女らは、裁判の場で理不尽な社会への怒りをぶちまける。ここで若者たちが語る怒りは、当時のアメリカで実際に社会問題となっていたことばかりだ。当時の空気がそのまま真空パックされているような印象すら受ける。これもまた間違いなくドキュメンタリー的な面白さであると言えるだろう。現代の観客も本作を通じて、彼らが持っていた「空気」を掴むことができるのだ。彼らが語るメッセージは、今を生きる我々の目から見れば、極端すぎるようにも見える。だが、実際にこういった思想に人生をかけた人間がいたのは事実なのだ。何よりエンドロールに挿入される紛れもない「事実」こそ、この作品のドキュメンタリー的な面白さが最高値に達する瞬間だ。「こんなことが本当にあったのか」と驚く、それはまさにドキュメンタリーの魅力である。
本作は正真正銘のモキュメンタリーである。しかし、ここには作り物ではないメッセージと、リアルな怒りが込められている。なんとも奇妙な構造の映画である。モキュメンタリーにしてドキュメンタリーという、極めて特異な魅力を持った1本であり、数十年前の映画でありながら、その魅力と衝撃は現代でも十分に通用するだろう。何より、このような映画が存在したという事実に驚くはずだ。
■加藤ヨシキ
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。
■商品情報
『懲罰大陸★USA(Blu-ray)』
発売:2月17日
品番:KIXF-351
価格:¥4,800 + 税
収録時間:本編91分+映像特典
『懲罰大陸★USA(DVD)』
発売:2月17日
品番:KIBF-1398
価格:¥3,800 + 税
収録時間:本編91分
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