二宮和也とビートたけし、『赤めだか』で師弟愛をどう描く? キャスト陣の実力を読む

 2人を取りまく登場人物も個性派ぞろいだが、最注目は同じ前座として修業に励む仲間たち。ライバル的な存在の立川志らくに『釣りバカ日誌』の好演が記憶に新しい濱田岳、のちに『たけし軍団』のダンカンとなる立川談かんに柄本時生、さらに、立川談々に北村有起哉、立川ダンボールに新井浩文、立川関西に宮川大輔と、芸達者なコメディ巧者が並ぶ。談春を含めた前座の6人が、談志から無理難題を言われ、家事を押しつけられるドタバタ劇は、やたらおかしく、どこか哀しく、彼らのお笑いセンスが引き出されている。

 さらに、兄弟子の立川志の輔に香川照之、高田文夫にラサール石井、談春の両親に寺島進と岸本加世子、本人役として春風亭昇太、春風亭小朝、中村勘九郎、三遊亭円楽が出演するなど、年末の特別ドラマらしい豪華なキャストがそろった。

 肝心の物語は、「談志の破天荒な人柄と生き様を弟子の視点から見つめる」という図式。しかし、スタッフが本当に描きたいのは、「どんな世界よりも濃密な落語界の師弟関係」だろう。一般企業ではパワハラでしかない師匠の振る舞いも、談志と談春の関係においては当てはまらない。談志の理不尽な言動にどれだけ戸惑っても怒っても、結局、談春の心は師匠への憧れで満ちているからだ。また、両者には“落語への絶対的な愛”という揺るぎない共通点があり、「クセのある師匠をあえて選んだ」弟子と「選ばれて入門を許可した」師匠の間には計り知れない信頼関係がある。そんな2人の不器用でまっすぐな愛情表現が、このドラマの醍醐味と言ってもいいだろう。

 プロデューサー・伊與田英徳と脚本家・八津弘幸は、『半沢直樹』『下町ロケット』などを手がけた名コンビ。一方、演出はドラマから映画、バラエティ、MVまで、さまざまな映像作品を手がけ、業界内でのファンも多いタカハタ秀太が務める。タカハタ監督の基本スタイルは、「リハーサルなしでいきなり本番を撮る」というもの。その上で「一発OKが多かった」のは、緊迫感のあるムードの中、キャストの研ぎ澄まされた集中力とスキルが発揮されたからではないか。

 『赤めだか』は、単に特殊な世界を描いただけではなく、「師弟関係とは?」「仕事に挑む姿勢とは?」という普遍的なテーマを考えさせてくれる作品。落語に興味のない人にもぜひおすすめしておきたい。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。番組やタレントがテーマのコラムを各メディアに毎月20~30本提供するほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。

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