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“内面の声”を描くのが新たなトレンドに? NHKドラマ10『わたしをみつけて』を分析

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 「話題性のあるテーマと高品質のエンターテインメント」を標榜し、これまで『八日目の蝉』(主演:檀れい/2010年)、『セカンドバージン』(主演:鈴木京香/2010年)、『紙の月』(主演:原田知世/2014年)、『聖女』(主演:広末涼子/2014年)、『さよなら私』(主演:永作博美/2014年)など、現代を生きる「女性たち」を主人公とした、数々の秀作ドラマを輩出してきたNHK総合の「ドラマ10」枠。その最新作『わたしをみつけて』(全4回)が、去る11月24日よりスタートした。

 物語の舞台となるのは、とある街にある総合病院。准看護師として勤務する主人公・山本弥生(瀧本美織)は、手際のいい仕事ぶりで、医師や患者からも一目置かれる存在だ。しかし、他人と関わることを避け、終業後も同僚や友人と交わることなく、ひとり孤独に暮らす彼女には、ある秘密があった……。そんなある日、彼女が勤務する病院に、新しい看護師長がやってくる。救急看護認定看護師であり、緩和ケアの認定看護師でもあるスペシャリスト、藤堂優子(鈴木保奈美)だ。常に笑顔を絶やさず、不機嫌なときや怒っているときですら微笑んでいるように見える彼女は、これまでなあなあで済まされてきた病院内の暗黙のルールを次々と打ち破り、それらをひとつひとつ正してゆく。最初は「この人、苦手だ…」と思っていた弥生だが、確固たる信念のもと他者の内面へと切り込んで来る藤堂との出会いを通じて、彼女自身の心にも、やがてある変化が訪れるのだった……。

 連続テレビ小説『てっぱん』以来、久々にNHKドラマに主演する瀧本美織の存在や、彼女が演じる主人公・山本弥生に大きな影響を与える看護師長・藤堂役を鈴木保奈美が演じることが、事前段階から注目を集めていた本作。その他にも、弥生の心に変化をもたらす、もうひとりの人物……定年後、地元の小学生の身守りや、地域の消防団としての活動に従事するなど、自分のこと以上に「他者を思いやる」ことに意識を注ぐ老人・菊地役を古谷一行が演じていることや、院長(本田博太郎)の後継者として期待されながら、医学部をドロップアウトし、現在は同病院の事務長に収まっている青年を溝畑淳平が演じていることなど、キャスト面でも観るべき点の多い本作だが、むしろ注目すべきは、このドラマの原作が、映画『そこのみにて光り輝く』(2014年)で高い評価を獲得した呉美保監督の最新映画『きみはいい子』(2015年)と同じく、中脇初枝の小説であることだろう。

 虐待、いじめ、認知症などの社会問題に真正面から向き合いながら、人を愛することの大切さを描き出した映画『きみはいい子』。それが表題の通り、「いい子だね」と言ってもらえなかった子どもたちの苦悩と、彼らと対峙する大人たちの戸惑いを描いた作品であったのに対し、本作で描かれているのは、むしろその逆……「あなたはいい子だから」と言われ続けることによって、いつしか本来の自分を見失ってしまった人物の物語なのだ。主人公・弥生の「ある秘密」……彼女は、生後間もなく親に捨てられ、孤児として育った女性であった。まわりの大人たちから、常に「いい子」であることを求められ、ときにそれに反発しようとしながらも、自らの「居場所」を失うことが怖くて、それを言い出すことができなかった弥生。それは准看護師として勤務するようになった現在も変わらない。なるべく波風を立てぬよう、求められた役割を淡々とこなしながら、彼女はその内面に深い孤独を抱えているのだった。

      

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