本木雅弘、Eテレ『SWITCH』で真鍋大度と対談 本木「一瞬でも体験しておくと演技の糧になる」

 では、実際に体験することのできない役の場合は、どうなのだろう? 本木が昭和天皇を演じた『日本のいちばん長い日』を例に挙げ、質問する真鍋。あらゆる文献を読みあさり、とりわけ玉音放送の音声は、常に持ち歩いて繰り返し聴き、自らの体に沁み込ませるなど、事前の役作りに苦労したとい同作。「もともと監督から、モノマネでなくていいとは言われていました。つまり、昭和天皇個人を模写するとか、そのたたずまいを再現しようとは考えなくていいと。そのもって生まれた宿命……国を思い、民を思い、世界の平和を願う。そういったものを抱えている、ルーツとしての役割を全うすればいいんだなって」。続けて、「私はやっぱり、映画は監督のものだと思っているんです」と語る本木。(役者というのは)その監督のセンスを形にしていくコマのひとつだと思っているんです。だから、まずは監督に、たくさん確認します。自分の意見を言うっていうよりも、まず『どう作りたいんですか?』ってことを、できるだけ詳しく聞くんです。そういう細かさというか、しつこさはあります(笑)」。そんな本木の姿勢を、課題を引き出して解決していくデザイナーのようだと言う真鍋に対し、「だから、頑張って秀才になろうとしているってことですよね。そのへんが多分、天才とは違うところだと思います」と、本木は答えるのだった。

 最後、「将来的には、監督も考えている?」という真鍋の問い掛けに対し、「無いですね」と即答した本木は、自身の俳優としての“在り方”に言及する。「演じるといっても、結局映っているものから感じられるものの半分ぐらいは、その人そのものが持っている資質なり感性が漂っちゃうと思うんです。そういう意味でやっぱり、自分そのものをさらしている仕事だとは思っていて。(中略)なので、やっぱり最後まで、たださらしているだけの役割でいたいっていうのはありますね。その年齢なりのさらし方っていうのが、多分あると思っていて……もう、あんまり気取ってばっかいられない年齢だと思うので、もう少し何かリアルな味わいが出せる役者になりたいとは思っているんですけどね」。40代最後の年となる現在、監督・西川美和が書き下ろした小説を自身で映画化する話題作『永い言い訳(2016年秋公開予定)を撮影中であるという本木。長年連れ添った妻を突然のバス事故で亡くした人気作家(本木)が、同じ事故で母を亡くした家族との交流を通して、亡き妻との関係を見つめ直し、人生を取り戻してゆく……この映画のなかで、俳優・本木雅弘は、どんな演技を見せてくれるのだろうか。同作の撮影風景を流しながら番組は終了した。

(文=宮澤紀)

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