『ど根性ガエル』が描く、人間とキャラクターの別れーー脚本家・岡田惠和が追求するテーマとは

 9月15日、日本テレビ系で土曜夜9時から放送されているテレビドラマ『ど根性ガエル』の最終回に関連したイベントが開催された。それは、劇中の登場人物であるパン工場の社長にして区議会委員のゴリライモ(新井浩文)が、都内三か所(巣鴨、日比谷公園、スカイツリーのある東京ソラマチ)をゴリラカーで凱旋し、ゴリラパンを配布するというもの。僕は東京スカイツリー駅に向かい、3時間ならんでゴリラパンをゲットしたのだが、面白かったのは母親と並んでいた子どもたちの反応。

 ゴリライモが登場した瞬間に、「社長!」、「ゴリライモ―!」と絶叫していた。そんな子どもたちにゴリライモこと新井浩文は笑顔で応対していたのだが、ドラマ(フィクション)と現実(リアル)がつながったような感覚がそこにはあった。

 『ど根性ガエル』は70年代に描かれた吉沢やすみの漫画が原作。ひょんなことから、シャツに張り付いてしまった平面ガエルのピョン吉とシャツの持ち主であるひろしを主人公としたドタバタ人情喜劇だ。

 ドラマの舞台はそこから16年後。30歳となったひろし(松山ケンイチ)は働かずに毎日ぶらぶらしている。ガキ大将だったゴリライモはパン工場の社長となり、幼なじみの京子(前田敦子)は、離婚して実家に出戻っている。そして、ピョン吉(声・満島ひかり)には、死期が近づいていた……。

 脚本を担当したのは『ちゅらさん』(NHK)や『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)で知られる岡田惠和。プロデューサーは『野ブタ。をプロデュース』や『妖怪人間ベム』(ともに日本テレビ系)の河野英裕。この二人は、本作でひろしを演じている松山ケンイチが主演をつとめた問題作『銭ゲバ』(日本テレビ系)ではじめてタッグを組み、多くのドラマファンから注目された。

 岡田は、デビューしてから『若者のすべて』や『彼女たちの時代』(ともにフジテレビ系)といった山田太一の影響下にあるオリジナルドラマを執筆する一方で、『南くんの恋人』や『イグアナの娘』(ともにテレビ朝日)といった漫画原作のキャラクタードラマを多く手掛けてきた。このような経歴は当時のドラマ脚本家の間ではそう珍しいものではない。しかし、多くの脚本家がキャリアを重ねることで漫画原作モノを卒業してオリジナル作品に集中していくのに対し、岡田は漫画原作モノを描きつづけた。そのことによって「人間にとってキャラクターとは何か?」あるいは「人間にとってフィクションとは何か?」という主題を先鋭化させていった。

 2013年に河野と手掛けた『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)は、その集大成といえる作品だった。かまぼこ工場で働く日々に鬱屈していた越前さん(麻生久美子)は、漫画を書くことだけがストレス解消だった。そんなある日、漫画の世界と現実がつながり、フィクションの中の住人だったはずの"はらちゃん”(長瀬智也)が越前さんの前に現れる。

 はらちゃんは越前さんを「神さま」と呼び、私たち人間の世界を神々の世界だと思い込んでいる。言うなれば、「人間とキャラクター」の関係を「神と人間」に見立てたドラマだ。

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