伊坂幸太郎の最新短編集『パズルと天気』は“伊坂ワールド”全開! 独創的な設定とキャラクターの魅力
なお本書の巻末には「各短篇について」という一文が添えられていて、それぞれの作品の成立過程などについて触れている。それによると本作は、恋愛小説のアンソロジーのために執筆されたそうだが、読み終わってみると、人と人の繋がりを描いた物語に思える。135ページの五行目から六行目にかけての文章が心に沁みた。個人的に本書の中で、一番好きな作品である。
第四話「イヌゲンソーゴ」は、読み始めてすぐに、ある有名なお伽噺をモチーフにしていることが分かる。ここからどう話を発展させるのかと思ったら、すぐにストーリーが大きく飛躍。これは驚いた。どこをどうすれば、こういう発想が出てくるのだ。
そしてラストの「Weather」は、友人の恋人に気をつかうあまり、すぐに天気の話に逃げる“僕”が主人公。その友人の結婚式でも、いろいろ考えてはやきもきしてしまう僕だが、思いもかけない事実が待ち構えていた。お人好しすぎる僕の、心の中での右往左往をニヤニヤしながら読んでいたら、温かな感動に包まれるのである。微妙にリンクしている五編は、どれも設定やキャラクターが独創的で、読者を存分に持て成してくれる。まさに伊坂ワールドとしか言いようがない。