宮﨑駿にとってのイメージボードの意義ーースタジオジブリ編集者・田居因に聞く、出版背景と映画制作の裏側

「宮﨑監督や鈴木プロデューサー、高畑監督と出会えたことは素晴らしい財産」

──『ナウシカ』『ラピュタ』『トトロ』と年代順に刊行してきましたが、今後もその予定ですか?

田居:次は7月刊行予定で『宮﨑駿イメージボード全集4 ナウシカ前史』を刊行する予定です。『THE ART OF 風の谷のナウシカ宮崎駿水彩画集』にも一部掲載されましたが、今度は190点程度を収録する予定です。ナウシカという少女や世界についていろいろと考えたことが描かれたものになっていると思います。

 宮﨑監督と高畑勲監督が、『リトル・ニモ』を原作にしたアニメーションを作るためにアメリカに行っていた時代に描いたものが多くあって、アメリカンコミックに影響を受けたような絵もありますね。その後の刊行は来年はじめごろになりそうです。アーカイブチームが頑張って素材を整理して外に向けて発表しても大丈夫となった素材から、本にしていく予定です。

──田居さんは入社した徳間書店で『テレビランド』の編集を始めた頃から鈴木プロデューサーといっしょに仕事をしてきたとのことです。その後『アニメージュ』を経てスタジオジブリ出版部に移り、宮﨑監督や高畑監督と仕事をしてきました。こうした方々との付き合いからどのような影響を受けましたか。

田居:才能のある人のそばにいられることは本当に面白かったです。作られる作品だけでなく、その人が読んでいる本だとか何に関心があるといったことを間近に見られますし、相談したり話したりすることもできます。得がたい経験でした。

宮﨑監督や鈴木プロデューサー、亡くなられましたが高畑監督と出会えたことは素晴らしい財産だと思います。もちろん大変な経験もたくさんしました。1冊の本を編集していても、鈴木プロデューサーや宮﨑監督の考えによって、根底からやり直さなければならないことも多々ありましたが、最後には、編集しなおしてよかったと思える。自分が少し成長したような気分になれる。なかなかない経験だったと思っています。

──宮﨑監督の作品はまだまだたくさんあります。『イメージボード全集』も続きます。頑張ってください。

田居:長いスパンでの企画なので、こちらも腰をすえて取り組んでいきたいと思っています。

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