累計370万部のベストセラー『コーヒーが冷めないうちに』なぜ海外展開に成功? 著者・川口俊和 & 編集・池田るり子インタビュー
国内外で記録的な大ヒット!
――川口さんは、ご自身の作品が日本はもちろん海外でも広く読まれた理由はどこにあるとお考えでしょうか。
川口:それが、いまだにわからないんですよね(笑)。池田さんからも、出版前に「売れるかどうかは出してみないとわからない」と言われましたし、国内でのヒットも、ましてや海外でのヒットなんて想像もしていませんでした。その背景には、ストーリーのわかりやすさや、誰もが感じていることを書いた点が影響しているんじゃないかと思います。国が変わっても、誰にでも兄弟や親子の関係性はあるからかもしれません。
――池田さんはいかがですか。
池田:実は、小説を担当するのが初めてだったので、何もかも手探りで。ここまでの反響があるとは想像もつきませんでしたね。国内で手応えを得たのは、最初に東北地方と広島で同時多発的に売れていったときです。日本中で売れ始めたのは、それから1年くらい経ってから。その後は台湾で売れて、イタリア、ポーランドと反響が広がっていきました。
――ポーランドで売れたのは何か要因があるのでしょうか。
池田:ポーランドはウクライナの隣国です。読者の方からは、近隣の国が戦争で大変なことになっている中で、この本が希望になったと聞きました。イタリアでも、コロナ禍で国中がロックダウンしているときに、身近な人が亡くなる経験をした人たちが手に取ってくれたのだと思います。仙台で売れたのも、東日本大震災を経験して様々な悩みや苦しみを抱えていた人の心に、物語が染み込んだのかもしれないと書店員さんに言っていただきました。
――読者から届いたお手紙には、どんな感想が多いですか。
池田:物語の中に私みたいな人がいるとか、あのときのような思いをしているといった具合に、自分の体験に置き換えて読み進めた方は多いみたいですね。父母やパートナーを亡くしたときに別れの言葉を言えなかった後悔が、物語を読んで解消されたという手紙もいただきました。
海外展開が成功した要因
――海外を川口さんが訪問されると、行く先々で大歓迎を受けておられますよね。印象に残ったエピソードを教えてください。
川口:とにかく、たくさんの人が集まってくれるんです。面と向かっても言葉が通じないのにこんなに集まってくれていること自体が驚きで、本を出さなかったら人生で一生体験できなかった出来事だと思います。ポーランドにしても、イタリアにしても、会場に500人近く集まってくれました。僕は会場の行列を見て驚いたのですが、まさか自分を目当てに来てくださった方々だとは夢にも思わなかったです。20人くらいの規模かなと思っていましたから(笑)、想像の域を超えていました。
――会場にはどんな方々が集まっていましたか。
川口:来場された方々を見ると、若い人から年配の方まで幅広い層の方々に集まっていただきました。また、舞台の時から女性の観客が多かったのですが、海外でも圧倒的に女性読者が多かったですね男性では、めちゃくちゃガタイのいい怖そうな方がポーランドの会場にいてびっくりしました。僕はトーク中にお客さんの目線を見ているのですが、その人は怖い顔をしてじっと聞いているんですよ。終了後、何か言われるかもと思ってビクビクしていたら、凄い笑顔で写真に収まってくれました(笑)。
――海外の読者のみなさんとは、どんな話をされましたか。
川口:「どうやって作品を書いたのか」とか、「何を大事にして物語を書いたのか」などの質問がありましたね。あと、海外の読者からは、僕自身の思想をかなり聞かれます。僕は物語を思い付きでしか書かないんです、と答えましたが(笑)。