【ライトノベル最新動向】『わたしの幸せな結婚』TVアニメがいよいよスタート 映像化が相次ぐ7月の注目ライトノベル

 2023年7月7日に発売の支倉凍砂『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙IX』(電撃文庫)は、2006年2月から刊行が始まった「狼と香辛料」シリーズの最新刊。「新説」とあるように、行商人のクラフト・ロレンスが少女の姿をした狼の化身ホロと出会い、旅をして来た本編を受け継いたもので、ロレンスとホロの娘ミューリが、シリーズに初登場時は少年だったトート・コルと共に旅をするストーリーが描かれる。

 中世風の舞台で繰り広げられる商取引や経済活動が展開に盛りこまれた物語は、転移・転生した異世界で現代の知識を駆使して商売する作品群の先駆けと言える。再開が発表されて話題となった賀東招二の「フルメタル・パニック!」シリーズや、高橋弥七郎「灼眼のシャナ」シリーズと同様に、2000年代のライトノベル人気を支え、両作品と同様にアニメ化もされた。

 今回、この「狼と香辛料」シリーズが2024年に再アニメ化されることになった。シリーズ自体は新編と並行して本編も続いており、1月発売の『狼と香辛料XXIV Spring LogVII』を最新刊とした「Spring Log」編が始まって、娘のミューリを追って旅に出たホロとロレンスのストーリーを楽しめる。再アニメ化によって物語が振り返られることで、当時からのファンだけでなく新しいファンも掴んで盛り上がりそうだ。

 アニメ化といえば、劇場アニメ『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』が公開中で、続く『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』も冬公開の鴨志田一による「青ブタ」シリーズでも、7月7日に最新刊『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』(電撃文庫)が発売。ネットで人気となりながら姿を見せないシンガーで、主人公の梓川咲太にはミニスカのサンタクロース姿が目撃されている霧島透子の正体に迫る。

 実写映画化に次ぐTVアニメ化で話題沸騰の顎木あくみ「わたしの幸せな結婚」にも、待望の新刊『わたしの幸せな結婚 七』(富士見L文庫)が7月14日に発売。Rakutenブックスの週間ライトノベルランキングでは、発売が発表となってからずっと1位を記録していて期待は高い。舞台となっている日本の明治・大正期を思わせる古い街並みが残る石川県の金沢では、アニメとのコラボも行われていて、スタンプラリーやオリジナルグッズがもらえる宿泊プランといったメニューが用意されている。TVアニメが始まり新刊が出て一段と盛り上がれば、金沢行きを考える人たちも増えそうだ。

 アニメ化決定作品の新刊は他にも。7月25日発売の細音啓『神は遊戯に飢えている。 7』(MF文庫J)は、シリーズのアニメ化が2024年に決定した。神々から「神呪(アライズ)」という能力をもらい、神々が繰り出してくるゲームに挑んで攻略を目指す少年フェイ・テオ・フィルスと、元神様の少女でフェイの相棒となる竜神レオーシェの物語。フェイを島﨑信長、レオーシェを鬼頭明里と人気声優2人が演じることも決まっている。原作の最新刊で繰り広げられるゲームはマーダーミステリー。ファンタジーだけでなくミステリのファンも興味を惹かれる内容だ。

 7月13日からTVアニメの第2期がスタートする竹町「スパイ教室」シリーズからは、7月20日に最新刊『スパイ教室10 《高天原》のサラ』(ファンタジア文庫)が発売。スパイ学校の落ちこぼれ少女たちが集められたチーム〈灯〉にあって、動物を扱う能力に長けたサラに与えられていたコードネームは《草原》だったが、チーム崩壊すら懸念された事態を乗り越え何か成長が見られたのか。第2期開幕ともども待ち遠しい。

 新人では、第15回講談社ラノベ文庫新人賞を受賞の彩月レイ『詐欺シスター』(講談社ラノベ文庫)が6月28日に発売。悪徳冒険者によって魔法石を奪われた武器屋の娘セイラに助力を申し出たシスターのレイチェルは、嘘と策略を駆使して冒険者から魔法石を取り戻す。聖女に見えて魔女のようなシスターの活躍を楽しみたい。

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