ジャニーズWEST 中間淳太の推薦で脚光! 『medium 霊媒探偵城塚翡翠』が文芸書ランキングで再浮上

 3位にランクインした湊かなえ氏『カケラ』は美容整形がテーマのミステリ。大量のドーナツに囲まれて自死した少女は、モデルみたいな美少女だったといううわさもあれば、学校一のデブだったという声もある。美容整形外科医の橘久乃は、元同級生の娘らしい彼女の死の真相を探るべく、関係者に話を聞き続けるのだが……。その過程で浮かび上がっていくのは、男も女も関係なくみなが無意識にとらわれている、美醜によるジャッジだ。

 先だって、ジャーナリストの伊藤詩織氏がインターネット上の誹謗中傷について、名誉棄損の訴えを起こしたことがニュースになった際、彼女の肖像を“描いて応援”するムーブメントが起きた。その行為自体は伊藤氏を純粋に強く支持しようとするもので、悪意などまったくなかったが、これをきっかけに“美をアイコン化する危険性”についての議論が生まれた。

 また著名人の不倫に際し「あんなに美しい奥さんがいるのに……」と、やはり“美”について触れるコメントに違和感を覚える声も多くあがり、社会に浸透しているルッキズムを問題視する動きは近年、大きくなっている。

 『カケラ』では、太っている人は不健康だとか、痩せたいに違いないといった思いこみが描かれる。外見を貶すのはもちろんNGだけれど、痩せたら美人なのにとか、あなたは美しいからとか、褒めているようで相手の内面や経歴をないがしろにするような言動も、場合によっては他者を深く傷つける。これまで自分たちが当たり前だと思ってきたこと、よかれと思ってきたことが、実は大きなひずみを生む行為であるかもしれないと、考え直さなければならない時代が来ている。

 謎が謎を呼ぶ展開に夢中にさせられながら、ふとした瞬間に自分の心にも事件を招きかねない闇があることを同時に教えてくれるから、湊かなえ作品は支持され続けるのではないだろうか。

■立花もも◎1984年、愛知県生まれ。ライター。ダ・ヴィンチ編集部勤務を経て、フリーランスに。文芸・エンタメを中心に執筆。橘もも名義で小説執筆も行い、現在「リアルサウンドブック」にて『婚活迷子、お助けします。』連載中。

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