マンガ大賞2020授賞『ブルーピリオド』はなにが凄いのか? 授賞式の模様を徹底レポート

 マンガ大賞は、マンガをもっと読んで欲しいと、マンガ好きの書店員とニッポン放送の吉田尚記アナウンサーが中心となり、「本屋大賞」を参考にして立ち上げた。2008年に第1回の発表があって、石塚真一氏の『岳 みんなの山』が受賞した。以後、末次由紀氏『ちはやふる』、ヤマザキマリ氏『テルマエ・ロマエ』、吉田秋生氏『海街diary』といった作品が受賞。2019年はWEB連載だった篠原健太氏『彼方のアストラ』が受賞し話題になった。マンガ大賞2015では、同じように美大受験を目指す女子が主人公となった東村アキコ氏『かくかくしかじか』が受賞している。

 選考員は実行委員が声をかけた書店員を含むマンガを良く読む人たちで、最初に5作品選んで投票し、ここから得票数の多かった上位10作品が候補としてノミネートされる。選考員はこれをすべて読んだ上で3作品を選び投票する。配点は1位3ポイント、2位2ポイント、3位1ポイント。これを集計した結果、マンガ大賞2020は『ブルーピリオド』が69ポイントを集めて1位に輝いた。

 2位は遠藤達哉氏が「ジャンプ+」で連載している話題作で、スパイの男と殺し屋の女、そしてエスパーの少女が疑似家族になる『SPY×FAMILY』が63ポイントで1位と6ポイントの僅差。3位も2位と5ポイント差の58ポイントを獲得した高松美咲氏『スキップとローファー』。以下に並ぶ候補作も傑作ぞろいだが、ほとばしる情熱に感動し、テクニックも学べるストーリーから『ブルーピリオド』が抜けだしたといったところか。

 『鬼滅の刃』はどうしてノミネートされていないのか、といった疑問が浮かぶが、マンガ大賞はエントリーできるのが、その時点で刊行が8巻までの作品に限られる。それ以上の作品はすでに人気があって広く知られているからというのが理由。今はまだ有名ではないが、面白いからもっと多くの人に読んでもらいたいという趣旨から創設されたマンガ大賞らしい配慮だ。

山口つばさ氏による受賞記念イラスト

マンガ大賞2020 投票結果

大賞 『ブルーピリオド』 山口つばさ 69ポイント
2位 『SPY×FAMILY』 遠藤達哉 63ポイント
3位 『スキップとローファー』 高松美咲 58ポイント
4位 『波よ聞いてくれ』 沙村広明 57ポイント
5位 『水は海に向かって流れる』 田島列島 56ポイント
6位 『ミステリと言う勿れ』 田村由美 54ポイント
7位 『夢中さ、きみに。』 和山やま 50ポイント
8位 『チェンソーマン』 藤本タツキ 40ポイント
9位 『まくむすび』 保谷伸 36ポイント
10位 『違国日記』 ヤマシタトモコ 31ポイント
11位 『僕の心のヤバイやつ』桜井のりお 24ポイント
12位 『あした死ぬには、』 雁須磨子 20ポイント

■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。

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