アートゥーン!、プロの顔とユーモアが同居する唯一無二のステージ 初の音楽ライブで見せた底知れぬポテンシャル

登録者数20万人を誇るYouTuberで、“芸術をもっと身近に”をコンセプトに活動する、東京藝術大学出身クリエイター集団のアートゥーン!が、8月27日に渋谷WWWにて1stワンマンライブ『Artoone!Live2026』を開催。期待と興奮に満ちあふれ、予測不能の唯一無二のステージを展開した。
美術組と音楽組の8名からなる彼ら。まずは美術組の真田の前説によって温められ、会場は異様な熱気に包まれた。大歓声が沸くなかステージに現れた、桶家、矢野、池田、おばんの音楽組メンバー。
まずは矢野によるピアノ演奏で幕を開ける。狭いステージに押し込まれたグランドピアノに着席し、美しくもどこか牧歌的なイメージの演奏。続いてボーカルの桶家が、オペラ『道化師』の一節を歌い上げる。見事な声量で朗々と声を響かせ、もっとも高まったその瞬間、緊張感あふれるピアノとともに「らりこっぱい」が始まった。





ダウナーなミディアムビートに合わせ、観客は〈らりらりらりこっぱい〉とコーラスを歌いながら、ハンズアップしたその手を揺らす。桶家はビートに合わせてブレイクダンスのような動き。「ぶっ飛ばして行くぞ!」と鬨の声をあげると、演奏は一転カオス状態。ジャズ展開を挟みながら、変幻自在な演奏で観客を魅了した。
続く「PonPonPainPain」はアッパーのビートを中心に、ダブやヒップホップなど多彩な展開を繰り返す。早口のボーカルでまくしたて、高速ラップを繰り出す桶家に、会場からは歓声があがった。また3曲目には、 昔のプッシュホンの音をサンプリングした新曲「PI・PO・PA」を披露。「簡単だからみんなも歌ってください」の声に、会場には〈PI・PO・PA PI・PO・PA〉の合唱が響いた。




最初のMCでは、「真田ウケすぎじゃない?」と若干の嫉妬をにじませながら、冒頭で披露したオペラ『道化師』について「奥さんが寝取られた男がピエロになって……」と解説。また「音楽は究極の非言語コミュニケーション。ライブが終わったあとの長文の感想DMなんかいらない。その代わり音を聴いたら歌え叫べ踊れ! メチャクチャでもそれがあなたらしければ、俺らはもっと音楽を届けたくなる!」と自身の音楽観をメッセージ。
その後、しっとりと始まり、アッパーへと移行するドラムンベースの「リンドウ」で、エモーションをぶちまけるように、熱く激しく声を響かせた桶家。矢野のピアノソロ「Blue Sapphire」は、昨年の藝祭で販売したカセットテープ曲とのこと。演奏風景がモノクロ映像となってバックに大きく映し出される演出でも魅せた。そしてバラードナンバー「北風と太陽」では、どこか寂しげなムードを漂わせながら、しゃがんで歌い始めた桶家。楽曲が進むと、どんどん力強さを増すボーカル。四畳半アパートから宇宙まで届きそうなほど壮大に広がる愛の歌に、観客はうっとりとした表情で聴き入った。


2回目のMCでは、美術組メンバーも登壇してYouTubeのようなトークを展開。“対談”をテーマにした映像も流され、矢野と小松﨑の気まずい雰囲気に会場が笑いであふれる場面も。「全自動殺戮回転旋盤マシンⅡ」というネタも飛び出し、ファンにはうれしい演出となった。今回誰が何をデザインしたかなどのトークをダラダラ続けていると、突然ステージが暗転して強制終了となった。


ストリングスのサウンドと巧みなコーラスで、どこかファンタジックな雰囲気を持った「カラスミの墓」でスタートしたライブ後半戦。一転、おばんのドラムソロコーナーでは、「にゃん」などかわいいボイスサンプルを使いユーモアたっぷり。かと思えばテクニカルかつド迫力のドラムプレイで、会場を大歓声で沸かせた。続く「黒衣」は結婚をテーマにした、ソウルフルなポップナンバー。とある映画のために作られた曲とのこと。クラップや「ダラダラッ!」と歌うコーラスで会場をひとつに。鐘の音も響く、幸福感に溢れた空間が目の前に広がった。
ミニMCではマニピュレーターの池田をフィーチャーし、コール&レスポンス。まんざらでもない笑顔の池田。そして「名曲は突然やって来る!」という名言っぽい導入で、アートゥーン!の名前を一躍有名にした「怪獣」(サカナクション)のカバーが披露され、会場は大騒ぎとなった。バックにはサカナクション 山口一郎お墨付きのMVも流され、会場全体でクラップしながら大合唱。「まさかこの曲をライブで披露する日が来るとは!」と、桶家はうれしそうな表情。



ライブはいよいよ終盤戦。タオルを振って楽しんだ「Still Cold」では、ノリのいいビートを繰り出し、桶家の絶唱が会場に響き渡る。そして本編ラストは「馬鹿と薬」。アッパーなビートながら、切なくて温かさあふれるサビメロが秀逸。後ろ髪を引かれるような雰囲気に、観客は手を揺らして世界観に没入。間奏では、ドラムのおばんが前に出てラップする展開でも楽しませ、最後は会場全体でジャンプを合わせた。
アンコールでは「長く短い祭り」(椎名林檎)のカバーを披露。各パートのソロ演奏に歓声があがり、桶家はおどけるようにブレイクダンス。観客は手を左右に揺らして楽曲に聴き入った。「みんながいてくれたおかげで、1stワンマンは大成功だったと思う」。最後は、指を前に突き出すポーズで「アートゥーン!」と全員で叫んでライブの幕が下りた。



藝大出身で、QuizKnockの運営元でもある会社に所属するなど、どこかハードルの高さを感じさせる文言とともに紹介されることの多いアートゥーン!。その入口としての彼らの音楽は、クラシック、フュージョン、プログレッシブロックやクラブミュージックといった、多彩なジャンルが融合され、実にオルタナティブ。さらに名曲カバーもあるなど、彼らなりに広く門戸を開いたものに感じた。どこか人を食ったようなシニカルさも良いエッセンス。ヒーヒー言いながらでも食べたくなる、スパイスたっぷり多国籍料理のような、病みつきになる中毒性をはらんでいる。


























