乃木坂46、試練の夏を越えて 一ノ瀬美空の涙、遠藤さくら&賀喜遥香の名演、6期生の躍進……『全ツ2026』を振り返る

6月13日の福井・サンドーム福井を皮切りに、全国8都市で計18公演が開催された乃木坂46の全国ツアー『真夏の全国ツアー2026』は、彼女たちにとってここからの未来を左右する重要なものとなった。
新体制で挑む全国ツアー、進化を証明した夏
今年5月に3代目キャプテン・梅澤美波が卒業し、5期生の菅原咲月が新キャプテンに就任。そして、昨年前半に加入した6期生が本格的にグループに馴染み、戦力として多くの楽曲に参加することになったこの夏は、結成15周年という節目を迎えた乃木坂46がここからどう戦っていくのか、その真価を問われる期間でもある。2023年に梅澤が新キャプテンになった際も、初期メンバーの1期生や2期生がすべて卒業したあとのタイミングだったこともあり、メンバーはかなりのプレッシャーを感じながらツアーに臨んだことを、のちにさまざまなインタビューで語ってきた。今回はそうした新体制への移行時期というだけでなく、女性アイドルシーンが多様化をみせ、いろいろなタイプのグループが支持されるようになった今だからこそ、王者の看板を背負った乃木坂46の動向が注目を集めた。

筆者は本ツアーにおいて、ツアー序盤の神奈川・横浜アリーナ公演と、最終地の神宮公演を観覧したが、ライブのメニューや見せ方の違いこそあれど、今もなお彼女たちが“守り”よりも“攻め”を意識してライブに臨んでいることが窺えた。
横浜を含む各地のアリーナ公演では、何者かに奪われた14の“夏曲”を1曲ずつ取り戻すという試練が与えられ、ライブの盛り上げに欠かせない「ガールズルール」や「裸足でSummer」などのアゲ曲がない状態での公演が求められた。これらの公演しか観られなかったファンにとっては、そういったライブ必須の楽曲を見られなかったことに対して不満もあったはずだ。しかし、それでも乃木坂46は「こういう見せ方もあるんだよ、こういうこともできるんだよ」と、今できることに全力で向き合い、3期生から5期生までの頼もしい面々に、昨年よりも実力が備わった6期生を交え、シャッフルした編成でさまざまな楽曲を披露。ライブのクライマックスには「これぞ」という横綱相撲も見せてくれたが、多くの場面で今このタイミングだからこその化学反応を起こして、観る者をワクワクさせてくれた。


その傾向は、ツアーのクライマックスとなる神宮公演でも同様で、各地でトライ&エラーを重ねてきたメンバーはいつにも増して頼もしい表情で、“聖地”神宮の舞台に立っていた。かつ、人気の“夏曲”をすべて取り戻したこともあり、「これでもか」と大盤振る舞いのセットリストと、完全にリミッターの外れたメンバーのパフォーマンスからは例年以上の熱が感じられた。
遠藤さくら&賀喜遥香による名演、“完全体”の6期生
特に今年は、1曲目の「ガールズルール」から上空に向けて大量の水を一斉放出するウォーターショットや、メンバーが客席に向けてホースや水鉄砲で放水する演出もあり、例年以上に“濡れる”こと必至。ライブ序盤から中盤にかけては、人気のシングル曲やユニット曲が連発され、実に“夏の乃木坂46”らしいステージが展開される。

その一方で、後半では各期を代表するメンバーのメッセージとともに、DAY1(20日)に「My respect」、DAY2(21日)に「設定温度」、DAY3(22日)に「きっかけ」、DAY4(23日)に「君の名を希望」と、乃木坂46の“芯”を表した楽曲も披露されている。こうした全メンバーで歌唱する姿を目にするたびに、乃木坂46はほかの何にも染まらない、独自の道を歩んでいることを再確認できるのではないだろうか。


先に触れた「3期生から6期生までをシャッフル」した楽曲は、神宮でいうと6曲目「逃げ水」から12曲目「チートデイ」までがそれに相当する。中でも、1期生・生駒里奈のセンターポジションを、同じ秋田県出身の6期生・矢田萌華が引き継いだ「太陽ノック」や、同じく6期生の大越ひなの&森平麗心が浴衣姿で中心に立つ「ロマンティックいか焼き」は、頼もしい先輩たちに支えられながら、彼女たちに追いつこうとがむしゃらにパフォーマンスする6期生の姿が印象に残った。また、このブロックではないが、見事なアイドル性を発揮した瀬戸口心月センターの「ジコチューで行こう!」、アンコールでの盛り上げ振りに一役買った瀬戸口&矢田のダブルセンターによる「ビリヤニ」も忘れてはならない。

その6期生はDAY1のみ、自身のデビュー曲「タイムリミット片想い」を披露したのだが、ここでは今春から休業中だった増田三莉音が合流するサプライズも用意。昨年は小津玲奈が休業中だったため、この日初めて神宮で11人が揃うこととなった。その後、最新の6期生楽曲「命の色」を11人の“完全体”でパフォーマンスしたのだが、DAY1こそ緊張からぎこちなさが感じられた増田も、最終日には堂々とした表情で乃木坂46としてのステージを全うしていた。そして、同曲でセンターを務めた長嶋凛桜も、短い期間でこの難しい楽曲を自分のものとし、繊細な動きや表情の変化で伝える見事なパフォーマンスを見せたことも、重要なポイントとして特筆しておく。


こうした後輩の躍進に刺激を受けるかのように、最前線で看板を担う先輩たちも各所でその存在感を遺憾なく発揮した。中でも、DAY4で強く印象に残った、4期生の遠藤さくら&賀喜遥香による「マグカップとシンク」は、本ツアーにおけるハイライトのひとつ。

3年前(2023年8月発売の33rdシングル『おひとりさま天国』収録)の楽曲で、これまでライブで披露される機会も決して多くはない楽曲だが、この日のパフォーマンスは幾多の苦難をともに乗り越えてきた2人の絆が感じられるもので、特に無音の中で2人の呼吸とステップのみが響きわたる曲後半の演出は圧巻の一言。気迫に満ちたこの10数秒は、15年にわたる乃木坂46史に残すべき名演だと断言したい。























