TMNETWORKにしか到達できない領域へ 小室哲哉が“最高傑作”と自負、アルバム『QUANTUM』を徹底レビュー

2026年9月1日、東京・Shibuya LOVEZで、極めてぜいたくかつ刺激的なイベントが開催された。公開収録イベント『TMNETWORK QUANTUM キク・ミル・ヨム観測日』である。

集まった大勢のFANKS(TMNETWORKのファン呼称)の前で、9月23日にリリースを控えるニューアルバム『QUANTUM』の一部楽曲が先行試聴され、壇上のメンバーから、さまざまなハプニングがありながらも充実したツアーの裏側や、今作のスタジオワークにおける音源制作にまつわるエピソードの数々を、ユーモアたっぷりに語られた。



イベント前半のラジオ公開収録を兼ねて、そのトークと音源試聴が行われたのだが、これまでスピーカー越しに聞いていた小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登の3人が繰り広げる軽妙なトークを間近に体感でき、そして会場スピーカーから圧倒的な密度のサウンドで新曲を聴く。小室は「家でじっくり聴いてほしいですけどね」と語っていたが、試聴中の観客席は、食い入るように耳を傾け、まさにタイトルの通り“新しい音楽が観測される瞬間”を、その場にいた全員で分かち合っているようだった。ツアーの記憶を想起させつつも、新しいスタジオ音源として生まれた楽曲たちを、参加者は肌で体感したのである。




ツアーの追体験にとどまらない楽曲群
アルバム『QUANTUM』の最大の魅力は、全国ツアー『TMNETWORK TOUR 2026 QUANTUM』のセットリストに完全準拠した楽曲群で構成されている点だ。
【トラックリスト】
RESISTANCE -2026 Version-
We Can’t Stop That Way
Quantum
Entanglement
Rise Together
Superposition
恋せよ乙女 -Run Through The Night-
Major Turn-Round -2026 Version-
fate
Get Wild Continual -2026 Version-
CUBE -2026 Version-
全11曲で構成され、ライブに足を運んだFANKSにとっては、あの日の光景や会場での感動が鮮明に蘇る並びである。それは1曲目「RESISTANCE -2026 Version-」の冒頭からはっきりとステージ上の映像、照明、演出がプレイバックされる。しかし、単なるライブの再現盤ではないのがTMNETWORKたる所以だ。イベントでも小室が「すべて作り直した」と語っていたように、サウンドは細部にわたりアップデートが図られている。これは、アルバムと同時発売の『TMNETWORK QUANTUM LIVE Blu-ray』で聴き比べてみると明確に分かるだろう。
ライブ会場で先に音を浴び、後にアルバムとして精緻に構築されたスタジオバージョンを聴く。この順序によって、聴き手の記憶の中にあるライブの音とアルバムの音が混ざり合い、過去の体験が新しく書き換えられていくような感覚を覚える。まさにTMNETWORKらしい“タイムマシン”という時間軸の仕掛けが、作品全体に張り巡らされているのだ。
“量子もつれ”を体現した“Quantum組曲”
アルバムの中で最も象徴的なハイライトと言えるのが「Quantum」から続く「Entanglement」「Rise Together」「Superposition」の4曲だろう。特に前半3曲はライブでは組曲としてひと続きに演奏された。“量子もつれ”を映像と演奏で表現した圧巻のパフォーマンスで、多くの観客の記憶に刻まれたはずだ。イベントでは、小室が一番伝えたかった言葉としてタイトルにした「Rise Together」について、英語の歌詞にこだわり、アルバム・バージョンで完成形となったと言う。宇都宮も、ボーカルレコーディング時の苦労を語っていた。
そして6曲目に配置された「Superposition」。この楽曲は、ツアーのラストを飾った有明アリーナ公演のエンドロールにて、インストゥルメンタルの状態で突如流されたものだった。ツアーに参戦したFANKSたちは「あのトラックは何だったのか?」と期待と疑問を抱えたまま会場を後にしたはずだ。その謎は今回のアルバムで解明した。あの軽快なリフで作られたトラックに宇都宮のボーカル、力強いメロディと歌詞が加わり、楽曲としての完成をみた。





“量子もつれ”を意味するタイトルの通り、ライブで聴いた“声のないインスト曲”と、アルバムで対面した“歌を得た現在”。〈奇跡は起こらない〉という冒頭の歌詞が、“量子もつれ”をテーマにした“Quantum組曲”としての最後のパートを担う楽曲として、締めくくっているのだと思う。公開収録イベントで初披露された際にも、この楽曲が放つ圧倒的なポテンシャルに会場全体が息をのんだ。






















