DAZBEEが考える、日本語を知る楽しさ 韓国における歌い手・ボカロの音楽文化としての広がりも明かす

5月16~17日に渋谷・Spotify O-EASTほか周辺施設7会場で開催された、ミュージックアートフェス『NIGHT HIKE - scramble - '26』(以下『NIGHT HIKE』)。ネットカルチャーを背景とするVOCALOIDプロデューサーやコンポーザー、歌い手文化をルーツとするシンガーなどの面々が2日間のステージを彩る中、このイベントの出演のために海を渡って来日したアーティストが複数いたことも、今回の開催トピックスのひとつだろう。
そんな海外勢のひとりが、韓国在住のシンガー・DAZBEEである。2011年頃よりニコニコ動画で歌い手として活動を始め、2022年にシンガーとして日本でメジャーデビュー。どこか儚げな独特の擦れを持つ歌声が、長年大勢を魅了し続けるアーティストだ。これまでも数々のオリジナル曲をリリースする一方で、今なおコンスタントに「歌ってみた」動画を投稿し続ける彼女。そんなDAZBEEに、今回リアルサウンドでは初のインタビューを行った。
これまでも各所で語られてきたバックボーンやシンガーとしての歩みに加え、現在韓国に住む彼女の目線から見た、ネットカルチャーミュージックほか日本の音楽の海外拡大についても、今回は非常に興味深い話を聞くことができた。ライブ翌日の取材にもかかわらず、入念な準備の上でほぼ通訳を介さず自身の言葉で語ってくれた、彼女ならではの貴重なエピソードトークをぜひ最後まで余さず楽しんでほしい。(曽我美なつめ)
『NARUTO -ナルト-』、ニコニコ動画……韓国でふれてきた日本のカルチャー
ーー改めて、昨日の『NIGHT HIKE』出演お疲れさまでした。ライブはいかがでしたか?
DAZBEE:普段は私の曲を画面越しに聴いてくださっている方も多いと思うので、同じ空間でみなさんの熱気を直接感じながら歌えるのはとても新鮮でしたね。あと、インターネット発の音楽をお好きな方が大勢集まっていたからか、最初から空気がとても温かいな、と感じて。緊張もしたんですが、それ以上に「ここに来られて嬉しい」という気持ちが大きかったです。
ーー昨年、DAZBEEさんは日韓でそれぞれワンマンも経験されていますよね。そういったライブの時と比べても、やはり違いはありましたか。
DAZBEE:全然違いましたね。ワンマンの時は自分の世界観をじっくり見せる場所という感覚があったんですが、今回はどちらかというと出会いの場、という感覚で。初めて私のライブを見てくださる方も多いだろうな、と思ったので、限られた時間の中でどう空気を作っていくかをかなり意識していました。あと、韓国のライブの場合はお客さんも一緒に歌ってくれる感じを受けましたが、日本の ライブでは音をしっかり聴きながら没入してくれる印象が ありました。反応の仕方は違うんですけど、どちらも私の音楽を大事に受け取ってくれているのは同じだと思いますね。
ーーちなみに、元々『NIGHT HIKE』というイベントはご存知でしたか?
DAZBEE:お恥ずかしながら、今回お話をいただいて初めて知ったイベントでした。でも調べてみると、私自身も好きなアーティストさんがたくさん参加されていて。ここに混ぜてもらえることをとても嬉しく思いましたし、ものすごく光栄なことだな、と思いました。他のいろんなアーティストさんが持つ、インターネット音楽ならではの個性の濃さにもすごくあちこちで刺激を受けた1日になりましたね。
ーー他の方のステージもいろいろ見られたんでしょうか。
DAZBEE:昨年別のイベントでご一緒した水槽さんは、リハーサルを拝見しました。以前も思ったんですけど、ステージの真ん中でお一人であの空気感を作られるのはやっぱりすごくかっこいいな、と。あと本当は、「Sugarcoat」や「Bitter Loss」の楽曲を手がけてくださった笹川真生さんも見たかったんですけど、自分のステージの準備でライブが見られなかったのがとても悔しくて……。タイミングも合わずご挨拶もできなかったので、またぜひどこかでご一緒したいです。
ーー今回は改めてDAZBEEさんの人となりを伺えればと思うのですが、まず最初に音楽を好きになった原体験について聞かせてください。
DAZBEE:昔から、自分の感情を言葉にするのがあまり得意ではなくて。でも音楽を聴くと自分の言えなかった気持ちがそこにある気がして、気づけば辛い時も嬉しい時もずっと音楽を聴くようになっていました。それが中学生ぐらいの頃です。
ーー自分の言葉にできない思いを、音楽が代弁してくれている、と感じたんですね。
DAZBEE:なかでも特に、日本のアニメの音楽が好きで。『NARUTO -ナルト-』の主題歌だった、little by littleさんの「悲しみをやさしさに」が本当に大好きだったんです。辛いことがあるとずっと聴いていましたね。
ーー別のインタビューでは、音楽好きだったお姉さんの影響も大きいと拝見しました。
DAZBEE:姉も日本のアニメが好きでしたし、家族全員音楽が好きで。ドライブの時はずっと日本の曲を流したりしていました。歌詞の日本語の意味はあまりわからなくても、日本の音楽のメロディやサウンド感が好きだったんです。
ーーそこからVOCALOIDや、ニコニコ動画を知ったきっかけは何だったんでしょう。
DAZBEE:当時韓国で流行っていた「NAVERカフェ」に、今で言う宅録をする人たちのコミュニティがあって。そこを覗いた時に、「日本にこんなサイトがあるらしい」という情報を得たのがニコニコ動画だったんです。元々日本のアニメや曲が好きだったので、日本の文化にも興味がありましたし、自分の話す日本語が現地の人たちに通用するのか、というのも試してみたくて。存在を知った約1年後には、「歌ってみた」の投稿や生放送をニコニコ動画で始めていました。当時は“歌枠”もやってみたりして。そうやってニコニコ動画を日々見る中で、VOCALOIDのことも自然と知りましたね。ランキングを見ながら、「こんな音楽があるんだ」と知って、どんどんボカロも好きになっていったんです。
ーーその頃、特にお好きだったボカロPさんやボカロ曲などはありましたか?
DAZBEE:一番好きだったのはジミーサムPさんです。「Little Traveler」という曲がすごく好きでしたし、当時発売されていたアルバムの『Toy Box』がどうしても欲しくて、一生懸命ネットで検索して手に入れた記憶がありますね。あとは最近の話になるんですけど、流星P(minato)さんが「magnet」をリメイクして投稿されましたよね。原曲も昔よく聴いていたので、あれはとても嬉しかったです。
ーー昔はボカロPさんのアルバムも、物によっては日本国内でも入手できる機会がかなり限られていましたから、DAZBEEさんが当時から相当ボカロを聴きこんでいたことがよくわかるお話です。
DAZBEE:有志の方が投稿してくださっていた「ぼからん」(VOCALOIDランキング動画)も、ニコニコ動画で毎週見ていました。ランキング映像を見るのも本当に好きでしたし、動画の最後に文字だけで紹介されるランク外のボカロ曲も検索して動画を見に行ったりしてました。その中でいい曲を見つけたりすると、すごく嬉しかったりして。そんな趣味が当時はありましたね(笑)。
ーーそこから、ご自身でも「歌ってみた」を投稿されるようになって。
DAZBEE:最初は本当に軽い気持ちで始めたんです。当時の歌ってみた文化って、「好き」という気持ちだけで参加できる場所だったというか。投稿した曲にコメントをもらった時も、「私の日本語がちゃんと日本の人にも届いているんだ」と感じて、嬉しかったと同時にすごく不思議な気持ちでしたね。
ーーお好きな歌い手さんも当時いらっしゃったんですか?
DAZBEE:VALSHEさんはアルバムを買うぐらい大好きでした。あの頃はカッコイイ声の女性歌い手さんも大勢いましたよね。ナノさんとか。
ーーそれこそナノさんも、DAZBEEさんと同様海外をルーツに長く活動されている歌い手さんですね。そこから今日まで長く歌を続けられていますが、DAZBEEさんのこれまでの活動で一番印象に残っていることとなるとやはり2022年のメジャーデビューでしょうか。
DAZBEE:そうですね。あと、デビュー曲の「声の在り処」の制作も印象に残っています。



















