a flood of circle 佐々木亮介×加賀美ハヤト 対談 異なるスタイルと通じ合うルーツ――体温を持って探求していく“新しさ”

a flood of circleの佐々木亮介(Vo/Gt)とVTuberの加賀美ハヤトの対談が実現した。
昨年、初のソロミニアルバム『ULTIMATE CITY』をリリースし、今年1月に初ワンマンライブ『加賀美ハヤト 1st One Man Live “ALPHA ONE”』を東京・TOYOTA ARENA TOKYOで開催した加賀美にとって、a flood of circleはロックに傾倒したきっかけのバンドであり、佐々木亮介は憧れのボーカリストだという。
a flood of circleはデビュー以来、オーセンティックなロックンロールを貫き、音楽ファンはもちろん、多くのバンドマンからもリスペクトされる存在。今年5月6日には初の日本武道館公演も決定し、さらに注目度を増している。
まったく違うジャンルで存在感を示し続けている佐々木と加賀美。お互いに抱いているイメージから始まった対話は、「ボーカリストとは」「音楽とは」という根源的なテーマへとつながっていった。(森朋之)
「パフォーマンスに嘘がないし、優しさを感じられる」(佐々木)
——まずは加賀美さんとa flood of circleとの出会いについて教えてもらえますか?
加賀美ハヤト(以下、加賀美):10代の頃なんですけど、周りにバンドに対するアンテナが高い友達がいまして。「このバンド、ヤバいよ!」って勧められたのが『泥水のメロディー』(2ndミニアルバム/2008年)だったんです。
佐々木亮介(以下、佐々木):そうなんですね。すごい昔(笑)。
加賀美:CDを聴いて、「うわ! 来た!」と思って。それまでは自分の世代より前のバンドを掘り起こすように聴くことが多かったんですけど、「この時代に、こんな名曲があったのか」という感じでした。現在進行形のブルースロックに初めて触れたのがa flood of circleで、すごく衝撃を受けたんですよね。まず「泥水のメロディー」と「ロシナンテ」がめちゃくちゃ刺さって、その後、畳みかけるように「Buffalo Dance」「Thunderbolt」「シーガル」が出て、もう完璧にやられてしまって。「最高のバンドに出会ってしまった!」という感じでした。
佐々木:嬉しいです。加賀美さんはバンドやってなかったんですか?
加賀美:やりたくてもできなかったと言いますか。なかなかメンバーが集まらなかったりして。
ーーフラッドに出会う前は、もう少し上の世代のバンドを聴いてたんですか?
加賀美:そうですね。たとえばマキシマム ザ ホルモンさん、THE BACK HORNさんが好きで。
佐々木:栄純さん(菅波栄純/THE BACK HORN)、加賀美さんに楽曲提供(「デュオバース」)してましたね。
加賀美:そうなんです。もっと上の世代だと、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTさん、BLANKEY JET CITYさんだったり。
佐々木:日本のロックのど真ん中ですね。自分がティーンの頃に出てきたのがTHE BACK HORNで。それ以外にもストレートなギターロックとかブルースロックをやっている人たちが結構いて、その世代から見ると、自分たちは「パチモンが出てきたな」くらいの感じだったと思うんですよ。で、これは加賀美さんと話したいポイントでもあるんですけど、それでも自分たちはその場所にいちゃったんです。でも加賀美さんはそうじゃなくて。ルーツはわりと自分と近いはずなのに、すごい飛距離で別の表現を掴んだわけじゃないですか。それがすごいなと思って。

——ロックバンドではなく、VTuberになったわけですからね。
佐々木:時代が変わる分岐点に立ってる人っていると思うんですよ。たとえばSex Pistolsが出てきて、その前のバンドが全部古くなったりだとか。自分は時代が変わった後もロックバンドの幻を追いかけてるところがあるんですけど、加賀美さんはそうじゃなくて、時代を変えるほうに立ってる人だなと。しかもすごいスターになっていて。
加賀美:いやいや、そんな……。今、佐々木さんが話してくれたことでいうと、 自分はフラッドを聴いたときに「こうはなれない」と思ったんですよね。「うわ、本物だ」と思ったし、自分には絶対できないなと。
佐々木:気持ちいいなー(笑)。
加賀美:ははは。「こんなことができる人が、この世代にもいるんだ!?」と思ったし、自分にとっては本物中の本物で。特に佐々木さんのボーカルですよね。フラッドの曲がカラオケに入ってからずっと歌ってたんですけどーー。
佐々木:その頃から歌は好きだったんですね。
加賀美:はい。「泥水のメロディー」「ロシナンテ」も歌ってましたけど、もちろん満足に歌えなくて。そこでも「やっぱり、あんなふうにはなれない」と思ったし、自分はロックスターになれないんだなと。その後もずっと“消費者”の感覚から抜け出せなくて、その期間が結構長かったんです。それがずっと負い目みたいになってて。
佐々木:それはたぶん、加賀美さんが優しいからじゃないですか。加賀美さんのワンマンライブの映像を観させてもらったんですけど、いろんなゲストの方も出てたじゃないですか。どちらかというと周りの人たちがボケて、加賀美さんがツッコむことが多くて。
加賀美:そうですね。
佐々木:ツッコむ人って優しくないといけないというか。相手をちゃんと見て、欲しい言葉を言ってあげたり。さっき「消費者の感覚が消えなかった」と言ってましたけど、だからこそ観てる人の気持ちがわかるんだろうなと。もちろんエンターテインメントなんですけど、パフォーマンスに嘘がないし、優しさを感じられるのがいいなと思ったんですよね。ちょっと細かいんですけど、「ケーブルが抜けた」みたいなくだりがあったじゃないですか。
加賀美:ありました(笑)。
佐々木:そこでケーブルのことを“線”って言ってたのが素朴だなと(笑)。
加賀美:(笑)。“線”のほうが伝わりやすいかなと思って。
佐々木:やっぱり優しい。「満足のいく歌が歌えない」と思いながらもカラオケにはずっと行ってて、そこから時間が経って、今はたくさんの人の前で歌ってる。同じように「歌いたい」と思っている人たちは勇気をもらえるかもしれないですね。
加賀美:ありがとうございます。こうやって佐々木さんとお話しさせてもらってること自体、「間違いじゃなかったんだな」と思います。
「佐々木さんの楽曲やボーカルはずっと手を伸ばし続けられるもの」(加賀美)
——加賀美さんはボーカリストとしてのスタイルを作り上げるまでに、どんなプロセスがあったんですか?
加賀美:それで言うと、自分の内側に個性を求めたことがあまりなくて。もともと好きな曲をただ歌っていただけなんですよ。それこそフラッドやTHE BACK HORNさん、マキシマム ザ ホルモンさんの曲を歌って、どうしたらもっと上手く歌えるだろうって試行錯誤していて。そこから生まれた発声だったり歌い方なんですよね、今やってるのは。なので、自分のスタイルが確立したとは思ってなくて。
佐々木:謙虚ですね。
加賀美:でも、本当にそう思ってるんです。「これがいいのかな」と解釈しながら歌ってみることが今もすごく多いので。なかでも佐々木さんのボーカルは、ずっと手を伸ばしたくなる対象、ずっと追いかけられるものなんです。そういうボーカリストに出会えて幸せだなって。

——届かないからこそ追いかけたい、と。
加賀美:はい。自分の座右の銘が「月に手を伸ばせ」なんですよ。ジョー・ストラマーの言葉「月に手を伸ばせ、たとえ届かなくても(Reach for the moon, even if we can’t)」から取っているんですけど、佐々木さんの楽曲やボーカルはまさにずっと手を伸ばし続けられるものなので。
佐々木:めちゃくちゃ素敵なこと言ってくれますね! そこまで言ってもらっといてアレなんですけど、僕はジャンケンで負けて歌い始めたんですよ。
加賀美:ええ!?
佐々木:ギタリストのヤツと2人で「バンドやろうよ」ってことになって。ベースもドラムもいなかったんだけど、曲を作りたかったから、「ジャンケンで負けたほうが先に歌おう」と。最初は交互に歌うはずだったんだけど、なぜかずっと歌うことになったんです。
加賀美:そうなんですね! 初めて知りました。
佐々木:なので歌は向いてないというか、ヘタクソだなって。
加賀美:いやいやいやいや!
佐々木:なんて言うか、それよりも“自分でいる”ことが大事だろうなと思ってて。何を着るかとか、ライブでどういう態度でいるかとか、そういうもの全部含めて、自分でいるようにしてるんですよ。ボーカルはそのうちの1つなので、ボーカリストの部分だけ切り取られるとすごく弱いと思います。あと、さっき加賀美さんは「自分の内側に個性を求めてなかった」とおっしゃったじゃないですか。
加賀美:はい。
佐々木:そのことでかなり苦しんでるんですよ、自分も。別に言いたいこともなくてバンドを始めたのに、“自分でいる”とか言ってると、どうしても自分と向き合わなくちゃいけなくて。別にカッコつけてるわけじゃなくて、向き合えば向き合うほど、空っぽだって気づくだけなんです。だからと言って「歌に懸けるぞ」という根性もないからこうなっちゃってるっていう。加賀美さんはいろんなバンドを聴いて、「これはできないな」と思っても、歌はずっと続けてて、今みたいな状況になっていて。「“歌に懸ける”という想いがあったんじゃないかな」と勝手に妄想しちゃうし、実際にライブを観ても「歌に懸けてる感じが滲み出てるな」と思ったんですよね。だからファンの皆さんも感動しているのかなと。
加賀美:ありがとうございます。確かに「自分が一番向いているところはどこだろう?」という時期もあったし、世に出られたのは、歌うことに専念したからかもしれないです。
佐々木:しかも、お喋りも上手だし。やっぱり配信とかやってるからかな?
加賀美:そうかもしれないです。
佐々木:ゲーム実況とかもやってるし、この先もっと続けることで、また違う自分が出てくるかもしれないじゃないですか。もしかしたら自分をさらけ出す芸風が出てくるかもしれないし、そこは羨ましいなって。俺は今更ゲーム実況とかできないから。
加賀美:観たいですけどね(笑)。
佐々木:(笑)。栄純さんが書いた曲(「デュオバース」)に〈命滾らせ死ぬか 死んだ目で生きるか〉という歌詞があるじゃないですか。あれが今、自分に突き刺さってるんですよ。バンドを20年やってきて、5月に初めて武道館をやるんですけど、長くやってきちゃったなって。バンドを生き延びさせるってどういうことなのかなっていう……お悩み相談になりそうですけど(笑)。

















