崎山蒼志×原口沙輔 同世代対談 尽きない好奇心と互いへのリスペクト 惹かれ合う才能が結実した共作を語る

崎山蒼志×原口沙輔 同世代対談 共作を語る

 崎山蒼志からニューアルバム『good life, good people』が届けられた。

 前作『i 触れる SAD UFO』以来、2年8カ月ぶりのフルアルバムとなる本作には、「ダイアリー」(TVアニメ『SANDA』EDテーマ)、「泡沫」(TVアニメ『青のミブロ』-芹沢暗殺編-のEDテーマ)、Mega Shinnosuke、紫 今をフィーチャーした「人生ゲーム」、諭吉佳作/menとのコラボによる「ghost」、かもめ児童合唱団との共演が実現した「eden feat. かもめ児童合唱団」など11曲を収録。「この2年間の自分自身の混沌が漂うアルバムになっていると思います」というコメントの通り、崎山自身の葛藤や迷い、音楽仲間との交流や音楽への深い愛情などがリアルに反映された作品となっている。

 リアルサウンドでは、本作の収録曲「人生ゲーム album remix (prod. 原口沙輔)」「ending routine feat. 原口沙輔」に参加した原口沙輔との対談をセッティング。両者の交流、それぞれの音楽観、楽曲の制作などについて語り合ってもらった。(森朋之)

初対面から意気投合していた二人、「しょうもない夜」の共演に至るまで

ーー崎山さん、沙輔さんの交流が始まったのはいつ頃からですか?

崎山蒼志(以下、崎山):たぶん2019年くらいですね。最初はTwitter(X)でフォローして。

原口沙輔(以下、原口):そうですね。

崎山:最初に沙輔くんを知ったのは、フィンガードラムの映像ですね。「すごい人がいるな!」ってビックリしたんですけど、その後、ポップスっぽい曲をリリースしたり、めっちゃ踊れることもわかって。できることがどんどん出てきて、どこまで行っちゃうんだろう? っていう。とにかくすごいポップセンスだし、最初から完成されている感じもあって。同世代の人にこんなに衝撃を受けたのは、将棋の藤井聡太さん以来でした。

原口:だいぶ別ジャンルですね。僕も崎山くんのことはYouTubeで知りました。野外の弾き語りの映像だったり、その前にやっていたバンド(KIDS A)だったり。僕は「この人、気になるな」と思ったら、観られるものは全部観ようとするタイプなので、できる限り活動を追わせてもらって。当時からメロディが好きですね。

崎山:うれしい。ありがとうございます。

原口:自分にはない感覚を持っている人だなと思ってたんですよ、最初は。今となっては、だんだん近づいているような感じもあって。

崎山蒼志 原口沙輔 撮り下ろし写真

ーー崎山さんは中学3年生のときにインターネット番組からシンガーソングライターとして世に出ましたが、その後は打ち込みを始めたり、音楽性の幅が広がってますからね。

崎山:そうですね。

原口:僕は2020年くらいにギターを弾き始めたんですよ。最初は「一音ずつ録音してつなげる」というシンセみたいな使い方をしてたんですけど。

崎山:「ギター買いました」って写真送ってくれたんですよ。それからしばらく経ったらめちゃくちゃ弾けるようになってて、またビックリして。

原口:ちょうどコロナ禍だったから、めっちゃ弾いてたんですよ。今も全然弾けないですけどね。

ーー実際に会ったのは?

崎山:自分のイベントにお呼びしたときです。2020年2月に『人間旅行』というイベントを渋谷のWWWでやらせてもらって、そのときに沙輔君に出ていただいて。17歳のときかな。

原口:僕は一つ下なので16歳でした。

崎山:年齢の割にすごく落ち着いていて。僕もそんなに騒ぐほうじゃないから、すごい静か(笑)。でも、今振り返ると年相応のかわいさもあった気がします。

原口:(笑)。崎山くんはすごく話しやすかったですね。無理に話を合わせなくてもよかったし、好きな音楽がかぶっていることもわかって。

崎山:「ルイス・コール、かっこいいよね」とか。

原口:そう、LAのジャズミュージシャンの話とかしてました。

崎山:「ブレインフィーダー」(フライング・ロータスが主催するレコードレーベル)ですよね。サンダー・キャットとか。沙輔くんはすでにそういう要素を取り入れて表現していて。

原口:ルイスとか実際に関わりがありましたからね。僕としては「好きな界隈が流行ってうれしい」という感じで。崎山くんとはそういう話もできたし、ルーツは違うけど、追ってるものは近いという。

崎山蒼志 原口沙輔 撮り下ろし写真

崎山:いきなり話が飛びますけど、アルバムに入ってる「ending routine」を一緒に作ったときは、坂本龍一さんの昔のラジオ番組(NHK-FM『サウンドストリート』)のことを教えてくれて。その番組でデモテープを募集するコーナーがあって、槇原敬之さんが投稿してたっていう。「HALF」という曲なんですけど、坂本さんへのリスペクトが感じられるシンセがすごくよくて。あとはテイ・トウワさんの楽曲だったり。

原口:「デモ・テープ1」というCDにもなってますね。この前レコードを見つけて、それも買いました。……だいぶ話が脱線しましたね(笑)。

ーーその後はどのように交流していたんですか? 

原口:地元の愛媛にいた頃は、「〇日に東京に行きます」って連絡して、お会いしたり。

崎山:喫茶店で喋ってました。話は大体同じで、「最近、何聴いてる?」「どんな曲を作ってるの?」がメインコンテンツ。同世代でそういう話ができる方は本当に貴重だったんですよ。沙輔くんと、諭吉佳作/menさんくらいで。

原口:そうですよね。20代になってようやく増えてきた感じです。

ーー二十歳になるとお酒も飲めますからね。

崎山:一回くらいですけどね(笑)。確か焼き肉屋さんに行ったときに、ちょっと飲んだ気がする。

原口:そうだ(笑)。「しょうもない夜」のトラックダウンの後じゃないですか?

ーー崎山さんの楽曲「しょうもない夜」(2023年)のアレンジは沙輔さん。あれはどういう経緯だったんですか?

崎山:ずっと「沙輔くんとご一緒したい」という気持ちがあったんですよ。「しょうもない夜」はバンドサウンドなんですけど、もっとコラージュしたいというか、「ぶっ壊したいな」と思ったときに、沙輔くんにやってもらえないかなと思って。

原口:LINE電話で突然「『しょうもない夜』という曲があって、めちゃくちゃにしてほしいんですよ」と連絡があって。あまり時間がなかったんですけど、「たぶんできると思います」とお受けして。

崎山:沙輔くんの曲を聴いていても、「ここはあえて壊しているんだな」というセクションがあって。それをバンドサウンドのなかでやったらどうなるんだろう? という興味があったんですよね。

原口:僕はアレンジャーとしての仕事もしていましたし、そこに関してはマジメといいますか、もともとの曲の良さを壊すようなことはしたくないんです。「しょうもない夜」はすでに完成されている音源があったので、アレンジといっても、まったく触ってない部分もあるんですよ。「“壊してほしい”というのはきっとここだな」と思うところを探して、音を差し込んでいく感じでしたね。

崎山:上がってきた音源がすごくよくて、めちゃくちゃうれしかったです。しっかり壊してくれたし、沙輔くんらしさもしっかり感じられて。やっぱりすごいなって改めて思いましたね。

原口:よかったです。

「沙輔くんの新たな一面を見た気がしました」(崎山)

——そして崎山さんのニューアルバム『good life, good people』では、2曲目の「人生ゲーム album remix (prod. 原口沙輔)」、3曲目「ending routine feat. 原口沙輔」に沙輔さんが参加。まず「人生ゲーム」のリミックスのことからお伺いできますか?

崎山:先に「ending routine」を作ったんですけど、もう1曲、沙輔くんと一緒にやりたくて。「人生ゲーム」自体もアルバムに収録されているんですけど、この曲を新しい形で聴いてみたくて、お願いしました。そのときも「めちゃくちゃにしてほしいです」と言ったんですよ(笑)。

原口:そうでした(笑)。

崎山:今回もめっちゃカッコいいリミックスに仕上げてくれて。すごくクールだし、どこか洗練された感じもあって、これが今の沙輔くんのモードなのかなと思ったり。あまりにも気に入りすぎて、リミックス作品なのにアルバムの2曲目にしました。1曲目の「悪魔」からのつながりもよかったんですよ。スッと入っていけるというか……。

原口:いい曲順ですよね。このリミックスに関しては、例の如く「どうしてもらっても大丈夫です」という感じだったんですよ。

崎山:ピッチを変えてもらってもいいし。

原口:と言われていたんですけど、もとの曲も打ち込みが中心で、リミックス的なアレンジメントだったから、あえて生音感みたいなものを出してみたらどうだろう? と思って。冒頭に部屋鳴りの音が入ってるんですけど、あれは僕の部屋で録ったんですよ。

崎山:そうなんだ! 「悪魔」が部屋のなかで歌ってるような曲だから、そこでつながってるのかも。

原口:「悪魔」はスタジオ録音感のあるサウンドだから、部屋っぽい始まりがいいかなと。あと、音の位相をかなりズラしていて。デジタル特有のコンプのかかったまとまりをあえてバラして、ボーカルの位置も定まってないんですよ。Mega ShinnosukeさんのボーカルがずっとL・Rを行き来してたり。あれは僕なりの小ボケみたいなものなんですけど。

崎山:おもしろい(笑)。

原口:制作中はいろんな音を入れてみたりしたんですけど、結局かなり引いて、リズムとベース、主旋律のシンプルな構成になってます。

崎山蒼志 原口沙輔 撮り下ろし写真

崎山:キックやベースの出音もヤバいんですよ、めっちゃロー(低音)が効いてて。紫 今さんが歌ってるセクションのストリングスも美しくて、沙輔くんの新たな一面を見た気がしました。

ーー沙輔さんがやってみたいことも反映されている?

原口:そうですね。一つ挙げるとしたら、最近、ドラムシンセをずっと触っていて。崎山くんもそういう音が好きそうだし、「人生ゲーム」のリミックスでも取り入れてますね。すごい高音のパーカッションみたいな音が入ってるんですが、あれもドラムシンセなんですよ。とりあえずランダマイズして、すべてのパラメーターを締めるっていうのにハマってた時期だったので、それを使ってます。

崎山:あの音、「来た!」という感じがありました。この前、ちょっと実家に帰ってたんですけど、母親も「沙輔くんはすごいね。どうなってるんだろうね」って分析してました(笑)。

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