Official髭男dism、Fujii Kaze、ONE OK ROCK、米津玄師……“パフォーマンスシーン”中心のMVが届ける生々しい迫力
Fujii Kaze(藤井 風)が、昨年リリースの3rdアルバム『Prema』より「It Ain't Over」のMVを公開した。『Prema』からはこれまでにも、物語と演奏シーンが交差する「Casket Girl」、大勢のダンサーと作り上げた華やかな世界観の「I Need U Back」といった楽曲のMVが公開されてきたが、比較すると「It Ain't Over」はシンプルな作りになっている。
MVで終始映し出されているのは、夕日に照らされる海にひとり浸かって楽曲を歌い上げるFujiiだ。静かに波打つ水面が穏やかな雰囲気を強調させるようにして、素肌をあらわにした姿で歌う彼。楽曲が死生観をテーマにしていることも相まって、まるで生と死の境界を思わせるような神聖さを帯びている。逆光に浮かぶ美しいシルエットや、カメラが近づいたときに見える柔らかな表情など、Fujiiの存在そのものが楽曲の世界観を体現しているように思う。
同じようにして、アーティストのパフォーマンスシーンを中心にして構成されたMVとしては、直近ではOfficial髭男dismの「Make Me Wonder」も挙げられる。全面LEDのボックスのなかで演奏する4人を撮影したもので、個々の音をフィーチャーするようなソロカットもあれば、目まぐるしく変化する映像との融合を見せるシーンもあり、遊び心が感じられる映像だ。一度転んだら最後、とも言えるような矢継ぎ早に吐き出される言葉、じりじりと迫りくるような演奏が印象的な楽曲だが、ブレない正方形を描き続ける4人の闘志のようなものも、パフォーマンスシーンが軸にあるからこそ存分に味わえる。楽曲に宿る衝動や躍動感が視覚的に表現され、観る者を未知の世界に引き込んでいくような作品だ。
「Make Me Wonder」と同じく映像クリエイターのmasaki watanabeが監督したMVがONE OK ROCKの「C.U.R.I.O.S.I.T.Y. feat. Paledusk and CHICO CARLITO」で、こちらは完全にパフォーマンスシーンのみで構成されている。本楽曲は昨年リリースのアルバム『DETOX』に収録されており、フィーチャリングゲストにPaleduskとCHICO CARLITOを迎えたナンバー。彼らの演奏と歌唱を追い続けることで、3組がぶつかり合い生まれる熱がダイレクトに伝わり、楽曲が持つ爆発的な勢いを高まらせている。3組の共闘を映像で表現するかのような、生々しさと迫力を最大限に引き出したMVだ。
米津玄師の「1991」は、主題歌を務めた映画『秒速5センチメートル』の監督でもある奥山由之が手掛けている。米津と奥山は「感電」や「KICK BACK」でもタッグを組んでいるが、ユーモアを滲ませたこの2作に対し、「1991」は繊細な質感だ。奥山の「ポートレイト(肖像画)のような映像にしたい」(※1)という想いから完成したMVは、米津の歌唱シーンのみで構成。ひらひらと桜が舞うなかで歌唱する米津を静かに追うような映像は、タイトルの通り1991年生まれである彼が自身の半生を重ねたという曲のメッセージ性を強調させる。また、最小限のシーン展開だからこそ、米津の感情のこもった歌声や表情の変化を堪能できる作品と言えるかもしれない。
ドラマ仕立てやアニメーション、アート色の強いものなど、MVには多彩なスタイルがある。そのなかで、アーティストのパフォーマンスシーンを中心にして成り立っているMVは、楽曲に込められたメッセージや演奏の熱量を観る者に真っ直ぐに伝えているように思う。パフォーマンスを軸にしたMVは、その生々しさこそが最大の演出なのだ。
※1:https://reissuerecords.net/2025/10/15/1991_mv/

























