『HAJIMARE Project』を振り返る アイドルの卵たちが“ぶつかって、立て直していく”成長が見える合宿編の魅力

 スターダストプロモーションとバンダイナムコミュージックライブによる新オーディション『HAJIMARE Project』。二次審査と合宿編を経て、ついに最終審査へと駒を進めた16人が選抜された。このタイミングで改めて激動の合宿編を振り返ってみたい。

最終審査へ進む16人が決定ーーオーディションの見どころをプレイバック

 合宿編では、二次審査を通過した24人が同じ場所で過ごしながら、チームごとに課題曲のパフォーマンスを作り上げていく。ここで見られるのは、歌やダンスの上手さだけではない。意見がぶつかったときにどう話し合うのか、落ち込んだときにどう立て直すのか、周りとどう関わりながら前に進むのかーーそうした動きまでが、はっきり映るのだ。だからこの合宿は、技術が伸びる瞬間以上に、参加者の表情や言葉が変わっていく瞬間が面白い。昨日まで迷っていた子が、少しだけ顔を上げる。そういう変化が積み重なるから、初めて見る人でも「この子、どうなっていくんだろう」と自然に引き込まれていく。

 合宿はA・B・Cの3グループに分かれ、課題曲もそれぞれ違う。しかも歌割りは候補者自身で決めるため、やりたいパートが重なればぶつかるし、譲れば譲ったで「このまま埋もれるかもしれない」という不安が残る。実際、序盤のAチームは歌割りに時間をかけすぎてしまい、コレオグラファーから「遅刻してるのと一緒」と釘を刺される場面もあった。さらにボイストレーニングでは、“音楽ファースト”という言葉とともに、自分が歌いたいだけで決めるのではなく、誰が歌えば曲が一番良く聴こえるかを考えるよう促される。アイドルのオーディションではあるが、点数を取る技術以上に、現場で必要な判断や姿勢が試されていることをはっきり感じさせる時間だった。

 合宿編の面白さは、アイドルの卵が“孵化していく瞬間”を、段階ごとに見届けられるところにあると思う。ここで言う孵化は、いきなり完璧になることではない。うまくいかない部分や弱さが表に出たときに、そこから目をそらさず、向き合い直すことで、その人の“らしさ”がはっきりしてくる。たとえば酒井唯菜が、自信のなさから涙をこぼした場面。あの涙は、その場が崩れてしまう合図ではなく、チームがもう一度まとまるきっかけになった。周囲は責めるのではなく、言葉を選びながら支え、同じ方向へ向き直していく。個人のつまずきが、そのままチームの学びに変わっていく流れがあった。そこには、アイドルという仕事が集団で表現するからこその難しさと、ひとりでは抱え込まなくていいという救いが、同時に映っていた。

 合宿編でのグループを振り返ると、序盤にもたつきが目立ったグループAは、白浜あやや酒井が声をかけ合い、ダンスが苦手な田上優海を浅利海晶らが自然に支えていく関係が少しずつ育っていった。安井泉妃も不安を抱えたまま前に立つ役割を託され、ボイストレーナーから「(不安を)無視しなさい」と背中を押される。苦手や怖さが消えなくても、それでも一歩前に出られるか。合宿はその問いを、何度も突きつけてくる。終盤に進むほど、声をかけて空気を整え、方向をそろえていける人が見え始めたことも、Aチームの大きな変化だった。

 グループBは、技術の土台があるからこそ「会話が少ない」という指摘が刺さった。まとまっているようで、実は噛み合っていない。そこで高月凛々が課題を言語化し、マイクの扱いへの不安を共有したり、掛け声を足して盛り上げ方を設計したりと、改善が具体に落ちていく。櫛橋成美が表情の作り方を相談し、短いアドバイスで表現が変わっていくのも、合宿ならではのスピード感だ。一方で体調不良やメンタルの揺れも起きる。順調さと不安定さが同居するのが、現実のチーム作りなのだと教えられる。

 完成度が高く見えたグループCほど、別の壁が立っていた。ダンスが揃い、明るさも強い。横並びで見たときの総合力は一歩抜けていたが、講師陣は「気の緩み」「予定調和」と、次の段階を求める言葉を投げかけた。良いチームにいるほど、自分の色の足し方が難しくなる。白石るりや中沢結乃が「遠慮せずに言う」「自分を出せていない」と揺れたのは、うまくいっているからこそ生まれる葛藤だった。

 合宿後半の転機として効いたのが、超特急のユーキの存在だ。中間発表のフィードバックが、技術面だけでなく“自分の表現”へ向かっていく中で、ユーキは「自分なりの表現を徹底してほしい」「最初のエナジーをもう一個超えていく勢いが欲しい」と、出し方に言葉を置いた。臼井碧衣へ「自信を持ってほしい」とまっすぐ伝えた一言も象徴的で、候補者たちが“正しくやること”よりも、“自分らしく届けること”へ目線を切り替えていくきっかけになったように感じた。

 そして最終審査へ進む16人が決まった。臼井碧衣、安井泉妃、岡田真夏、柿沼里音、高月凛々、田上優海、田中杏夏、中嶋星、中沢結乃、那須ほほみ、針ヶ谷心、白石るり、白浜あや、太田梨月、禾本珠彩、宮崎心桜。名前が呼ばれるたびに、ほっとする顔と、こらえきれない悔しさが交差する。そんな場面で、eatの「やりきった自分を褒めて」、ボイストレーナー・なつきの「諦めずに進んで」という言葉が、結果だけで終わらせない“次の一歩”を用意していたのが印象的だった。落ちた候補者が合格者に「おめでとう」と伝える姿も含めて、この合宿が勝ち負けだけの時間ではなかったことが伝わってくる。

悔しさが滲む、落選者たちの言葉

『HAJIMARE Project』#6

 総集編では、結果発表のあとに行われた落選者インタビューも印象的だった。中沢結乃は、最終で落ちた直後でも番組内の課題曲を自分で聴けたと話す。これまでなら悔しさが強くて関連するものを避けてしまっていたが、今回は「ここでは全力を出せた」という実感があったからこそ、前向きに受け止められたのだという。パフォーマンスでは、カメラを見る、円になって反対側のメンバーとも目を合わせる、といった工夫を自分たちで決めて実行し、その手応えが涙につながったとも振り返っていた。酒井も、合宿を通して「自分に足りないものが見えた」と語りつつ、それでも「歌って踊りたい」という気持ちを信じ直せたと話していた。結果は届かなかったが、学びや気づきを次へつなげようとしている。通過者の名前が呼ばれた瞬間も、悔しさ以上に「嬉しい気持ちが大きかった」と言い切ったのは、合宿で一緒に過ごした時間の濃さゆえだろう。

 この2人の言葉を読んで、合宿編の価値は“通過したかどうか”だけでは測れないと改めて感じた。結果が出たあとに、「自分は何ができたのか」「どこが足りなかったのか」「次はどうしたいのか」を自分の言葉で整理できている。それ自体が、合宿で得た大きな成果だと思う。中沢が「全力を出せた」と言い切れたこと、酒井が「足りないものが見えた」と認めたうえで目標を信じ直していたことは、悔しさを“ただの傷”で終わらせない強さにつながっているはずだ。勝ち負けの結果の外側に、確かに残るものがあることを、分かりやすく示してくれるインタビューだった。

 合宿編のラストに発表されたのが、オリジナル曲「きっと、いまが青春。」だ。勝ち残った16人にとっては新しいスタートラインであり、届かなかった候補者にとっても、費やした時間を否定しない言葉になっている。この曲が象徴的なのは、合宿での頑張りを意味のある時間だったと感じさせてくれるところだ。歌やダンスの完成度だけでなく、誰かとぶつかったあとにどう立て直したか、チームの中でどんな役割を引き受けたか――その積み重ね全部が物語そのものであり、青春である。

 ここから先は、身につけたスキルを見せるだけでは足りない。合宿で掴んだ「自分はどう見せたいか」「何を届けたいか」を表現として出せるかが問われるだろう。ここから先は、孵化した“自分の色”が結果に直結するフェーズになる。最終審査で彼女たちがどんな表現を見せるのか、見届けたくなる。

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■番組概要
『HAJIMARE Project 〜自分を推して、はじまれ未来。〜』
出演者:SHELLY、尾崎里紗 ほか
11月28日(金)より毎週金曜日20時配信(予定)
配信日時:12月5日(金)20時配信(予定)
配信話数:全11回
番外編配信日時:12月13日(土)より毎週土曜日12時配信(予定)
※配信スケジュールは変更となる場合あり。

■関連リンク
オーディション特設サイト:https://hajimareproject.jp
公式HP:https://hajimareproject.jp
公式YouTube:https://www.youtube.com/@hajimareproject
公式X(旧Twitter):https://x.com/@hajimareproject
公式Instagram:https://www.instagram.com/hajimareproject/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@hajimareproject

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