星街すいせい「私たちが今、折れないことが本当に大事」 過渡期のVTuberシーンを背負って活動する覚悟

KizunaAIや剣持刀也とのコラボーー「事務所間の壁みたいなものは壊していきたい」
ーーその後、8月には「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2025」の選出もありましたね。日本における「30歳未満の特筆すべき30人」に選ばれ、「Forbes JAPAN」の表紙も飾られました。
星街:ビックリしましたよねえ。
ーーそこもあまり実感がなかったですか(笑)。
星街:そうなんですよ(笑)! そもそも私は雑誌系に明るくないので、選出のご連絡をいただいたときも、「え、はあ……すごーい!」みたいな。で、その情報が世に出ると、いろんな方から大反響をいただいて、そこでようやく実感できた感じなんですよね。とんでもなくありがたい機会をいただけたんだなって。頑張ってきてよかったなと、すごく思いました。これもまた一つの大きな勲章ですね。
ーー星街さんの2025年は、武道館アーティストやForbes JAPAN 30 UNDER 30選出アーティストといった新たな勲章という武器を手に入れた1年でもあったわけですね。
星街:そうですね。今後もそういう武器は増やしていきたいと思います。ただ、今後はその武器を持って戦うというよりは、もっと穏やかにアプローチできたらいいなっていう思いがあるんですよね。
ーー穏やかに?
星街:振り返れば2ndアルバム(『Specter』)、3rdアルバム(『新星目録』)と、自分としてはけっこう戦ってきた印象があるんですよ。特に3rdはコンセプトが“革命”でしたし。でも、ここからは戦わない戦い方というか。そういう表現を探ってみたいんです。もちろん攻撃的な楽曲を作ることは今後もあるとは思うんですけど、同時に聴き手の方に寄り添うような楽曲も作っていけたらいいなって、今はすごく思っているんですよね。
ーーその裏には、未踏の地を切り拓くように攻撃し続けてきたフェーズを超えた感覚があるんですかね?
星街:うん、そういう部分もありますね。がむしゃらに、どうにかしていろんな人に知ってもらわないといけないっていう部分をある種、超えたというか。それを踏まえ、ここからはどう受け入れてもらえるかが重要な気がしているんです。いろんな武器を振りかざして「どうだ! どうだ!」というよりは、もっと共存していきたい気持ちが強い。みんなと一緒に、どう手を取り合っていくのか。そういったアプローチをかけていきたいなって思ってますね。
ーー安定を求めることなく、常に新しいストーリーを紡ごうとしていくのが実に星街さんらしいところですよね。
星街:確かに。私の人生って、一本の映画が作れそうな面白いストーリーになってるなっていつも思います。やっぱりストーリーは劇的な方が楽しいですもんね。常に刺激が欲しいです(笑)。いつでも新しくありたい、新しくなりたい気持ちは強い方だと思います。
ーープライベートでもそういうタイプですか?
星街:えー、プライベートは安定してたいですけどね、逆に(笑)。でも、普段の生活の中で知らない道を通ってみたりとか、そういう刺激を求めるタイプではあるかも。同じ道ばかり通ってると飽きちゃいますもんね。絶叫系に乗りまくったり、激辛食べたりするのも刺激が欲しいからなのかも(笑)。
ーー楽曲のリリースペースが緩やかだった昨年ですが、その中で2024年リリースの「ビビデバ」が1億5000万回再生を突破しましたね。VTuberのオリジナル楽曲では1位の記録だということです。
星街:嬉しいですよね。でも、だからこそ「ビビデバ」を超える、「ビビデバ」とはまた違った立ち位置の楽曲を作り出せたらいいなってすごく思いますね。
ーー星街さんはキャリアの中でご自身の楽曲をライバルとしながら、次への一歩を刻んできた印象がありますよね。以前は「Stellar Stellar」を超える楽曲を作りたいとおっしゃってましたし。
星街:そうなんですよ。以前のインタビューで「“『Stellar Stellar』芸人”から抜け出したい」って言ってたのを思い出したんですけど、そこを抜け出せた実感はすごくあるんです。でも今度は“「ビビデバ」芸人”になったなっていう(笑)。もちろん、そういう状況はありがたいことではあるんですけど、今後も過去の自分をどんどん超えていきたい気持ちが強いんですよね。
ーー「もうどうなってもいいや」が新たな代表曲になった感じもしますけどね。
星街:うん、私もそう思います。今は“「もうどうなってもいいや」芸人”かもしれない(笑)。
ーー冒頭でお話が出ましたが、9月にはKizunaAIさんのライブ『KizunaAI Comeback Concert“Homecoming”』にゲストとして出演されましたね。いかがでしたか?
星街:AIちゃんはもう私自身はもちろん、すべてのVTuberにとっての親みたいな存在、始祖ですからね。やっぱりカリスマオーラがとんでもなかったですし、あらためてリスペクトの気持ちが強くなりました。ただ、同時にすごく身近な存在でもあるんだなっていうのを感じたライブでもあったんですよね。AIちゃん自身も、いわゆる神みたいな立ち位置ではなく、みんなと一緒に楽しく過ごしたい人なんだなってすごく感じたというか。だからこそ私と肩を並べて歌うことに、きっと大きな意味があったんだと思うんです。あのライブを経て、私自身もAIちゃんをより身近な存在として自分の中に落とし込むことができたので、本当にいいきっかけだったと思います。
ーーあの日のライブはKizunaさんのやってきたことが連綿と受け継がれ、今のVTuberシーンがあるという系譜みたいなものを感じるものだったとも思います。Kizunaさんがいたから今の星街さんがいるように、星街さんも次世代に何かを受け継いでいきたいという気持ちは強いですか?
星街:その思いはめっちゃありますね。私はVTuberをカルチャーにしたいって思ってるんですけど、その在り方には今後、いろんなルートがあるはずなんですよ。アニメカルチャーの一種みたいになるルートもあるだろうし、アーティストの新しい形として根付いていく可能性もある。本当にいろんなルートがある中、私としては、誰かが自分の表現したいものを持っているときに、その選択肢の一つとしてVがあるといいなってすごく思うんです。そういう立ち位置、そういう界隈にしていくための活動を今後も続けていきたいんですよね。
ーーそういった思いを、例えばホロライブの後輩たちにもしっかり届けようともしている?
星街:はい。私の意志はちゃんと繋いでいきたいと思ってて。今、世の中にはたくさんのバーチャルアーティストがいますけど、私がその代表的な存在として扱われることも多くなってきたからこそ、私がどう動いていくかがすごく大事だと思うんです。私の活動次第によって、次の世代に繋げられるものが増えることもあれば、減ることもあるわけなので。私はVTuberという存在をここで途絶えさせたくはないので、長く愛されるための土台はしっかり作りたいんですよね。
ーーそれってホロライブ、引いてはVTuberシーンを背負っている感覚があるということですよね。
星街:勝手にですけどね。勝手に背負っちゃってるだけなんですけど(笑)。
ーーその重さってどうですか?
星街:いや、そこも勝手に背負ってるだけなので、別に私の好き勝手やればいいと思っている感じなんですよ(笑)。だからそこまで重さを感じることなく、楽しみながらできてはいますけどね。
ーーその流れで言うと、昨年はにじさんじの剣持刀也さんと対談をされたりとか、ホロライブ以外のVTuberとのかかわりも積極的にされていましたよね。それもシーンを途絶えさせないための思いによるところなんでしょうか?
星街:そうですね。シーンとして盛り上げたいですし、事務所間の壁みたいなものは壊していきたい。同業という意味ではみんなライバルではあるけど、でも今はこのシーンを盛り上げていく大切な仲間でもあるから、一緒におもしろいことをやっていけたらいいなっていう気持ちはずっとあります。そういう思いを持っている人は、めっちゃ多いと思いますよ。ほぼ全員がそうだと思う。
ーーその中で星街さんくらいの人が率先して動くことに意味があるんでしょうね。
星街:そうそう。他の事務所さんとのコラボに対してハードルが高いと感じる子もいるし、なかなか一歩を踏み出しづらかったりもすると思うんですよ。だから、「そういう道もあるんだよ」っていうところを私が率先して切り開いていければなって。選択肢として目の前にある状況にしてあげたいなとは思っています。まあ、それも勝手にね(笑)。
ーーでも下の世代の子たちからしたら、そうとう頼もしいと思いますけどね。
星街:そうだといいんだけどな。最近、後輩とかが心配すぎて。いつも「大丈夫?」「悩んでることない?」って聞いちゃうんですよね。「私、お局みたいになってないか⁉」って思っちゃったりもするんですけど(笑)、ほんとに心配だからつい聞いちゃう。
ーーその心配っていうのはどういう面でなんですか?
星街:例えば、デビューしたての新人の子たちで言えば、ある意味、ホロライブとしての土台がすでにある状態のところに飛び込んでいくわけなので、そこの大変さがあると思うんですよね。すでに出来上がってるものを壊さないように、慎重に動かなきゃっていう思いから、けっこう縮こまっちゃいがちかなって。そこで本当にやりたいことを押し込めちゃったらもったいないじゃないですか。もちろん実際にそう言われたわけではないんですけど、みんなには自分の思うように、好きなことを表現してほしいと思うので、つい心配してしまうんです。やりたいことがあるのだったら、思う存分、挑戦して欲しいですからね。そういうことは常に伝えてます。
ーーシーンが大きくなってきたからこそ、心無い声が飛び交うことも少なくない状況ですしね。
星街:そうなんですよね。そういう声を聞いたときに委縮しちゃうのはすごくもったいないですからね。だから、何かあれば何でも話は聞くので、みんなには好きなことを続けて欲しいなってすごく思います。物事には時間が解決する部分もたくさんあると思うんですよ。だから、このシーンに身を置いている私たちが折れずに継続していくことが何より大事なことかなって今はすごく思います。「とにかく長く続けることが大事だよ」って、後輩にも言ってますね。きっと今が一番ネガティブな意見が多い時期だと思うんです。でも、ここから絶対に時代は変わっていくはず。かつてアニメオタクが虐げられてた時代もあったわけじゃないですか。
ーー確かに。今やアニメはメインストリームのカルチャーと言える時代ですからね。
星街:そうやって、いろんな問題もちょっとずつ時間が解決していくんだろうなって思ってるので、私たちが今、折れないことが本当に大事だなと思ってます。



















