SUPER BEAVER 渋谷龍太、紆余曲折の20年で確信した“音楽をやる意義” スピッツ愛や「楓」カバーの秘話も語る

音楽で向かうベクトルに「すごくしっくりきています」
ーーそして、SUPER BEAVERは今年で結成20周年を迎えましたが、渋谷さんにとってどんな1年になりましたか?
渋谷:今年度いっぱいは20周年アニバーサリーとして動いているので、1年を総括するにはまだ早いと思っていますが、この20周年という機会をいろいろなきっかけにしてもらいたいなと思いながら活動してきました。せっかくここまで多くの人に支えていただいて、お世話になりながら、ようやくこういった嬉しい活動をさせてもらっているバンドなんでね。「祝って!」とか「すごくね?」ではなく、僕らを使って、僕らをきっかけにして、周りの人と一緒に楽しいことができたらいいなという感覚が強かったです。SUPER BEAVERのためではなく、かといってSUPER BEAVERを好きでいてくださる方のためだけでもない。双方にとって最高な1年を作りたいなと思って今も動いています。その点に関してはいい時間を過ごせているんじゃないかなと現時点では思いますね。
ーー20年間紆余曲折あったと思いますが、アーティストとしての明確なターニングポイントを挙げるとしたらいつでしたか?
渋谷:SUPER BEAVERが山あり谷ありのバンドだというのは、僕らに興味を持ってくれている方はわかっていると思います。個人的にはバンドを始めた動機も、ノリと勢いだったんですよ。僕は音楽がめっちゃ好きで、聴くのが超好き、ライブ観るのも好き。でも「音楽をやるのが好き」ではなかったんですよ、一度も。クラスメイトの上杉(研太/Ba)に誘われてなんとなく始めたバンドだったので、最初から何か大きな信念を持っていたわけでもない。「音楽をやる」ということが、自分の中でかなりふわっとしていました。だからターニングポイントになったのは、最初にメジャーデビューして、そのあとメジャーから落ちたときですね。24歳ぐらいのときになるのかな。そのタイミングで初めて、「自分はなんで音楽をやるんだろう」「音楽をやっていて何が楽しいんだろう」ということをきちんと考えました。その結果、やっぱり誰かが喜んでくれること、好きな人と一緒に歩めていること、何かを共有し合えること、大事な気持ちの往来を繰り返すことーーそれらが音楽をやる意義だっていうことの片鱗にようやく気がつけましたね。

ーーSUPER BEAVERとして届けるメッセージや体現するものは、活動初期からどのように変化してきたと感じていますか?
渋谷:なんとなく始めたときは「楽しけりゃいい」という純粋な動機があったと思いますが、それだと自分にしかベクトルが向いていないんですよね。その後に大事なものに気がつけて、誰かと共に作っていくものになった。その“誰か”というのも、漠然とした誰かではなく、明確に「この人と共に作っていくんだ」という照準を絞った“誰か”ということです。誰かに向けた音楽、誰かと共にやっていく音楽がすごく好きだなと思ったときから、矢印はそちら側にかなり大きく向いているんですよね。だから直近の3年ぐらいは、ベクトルの割合は自分と誰かの半々でいいだろうとも思っています。
自己犠牲の精神で、全て身を粉にして、聴いてくださる方のためだけにやる。そういう音楽も、僕の思う美徳からはズレてきたんですよ。飲み会を無理やり盛り上げているヤツみたいなイメージかな。「俺のことはどうでもいいから、とにかくこの飲み会の時間が楽しくなればいい」と思っていて、家に帰ると一人で体育座りしているような人。そういう人もいると思いますが、その姿が美しいかと考えると、僕はやっぱりそうじゃないなと思います。だから、しっかりと人に目を向けることを大事にしつつも、自分が楽しいと思うことを大事にできる人が一番素晴らしいのかなって。最近はそういう風に考えているので、今までは極端に傾いていたベクトルも、今ちょうど中間のいい位置に収まっている感覚があります。左右に振りきったことがあるからこそ、今はちょうど真ん中に落ちているような感じ。すごくしっくりきています。
ーー2026年以降の活動面での抱負や目標を教えてください。
渋谷:実はあんまりないんですよね。具体的な目標をしっかり掲げるのをやめているので。でも去年と比較したときに「今年の方がいい1年になった」と胸を張って言えるような年を過ごしたいなって思いながら、ずっと活動はしています。この漠然とした目標を実現するためには、かなり具体的な目標を積み重ねていかないといけないから、どちらかというとそのために一個ずつ構築しているイメージですね。だから僕らは「2024年より2025年の方がよかった」と思っているし、きっと来年になったら「やっぱり2026年の方がいい」と言っていると思います。それを着実に叶えるために、一つずつを真摯な姿勢で取り組みたいですね。

◾️作品情報
映画『楓』
・出演: 福士蒼汰 福原遥
宮沢氷魚 石井杏奈 宮近海斗
大塚寧々 加藤雅也
・監督:行定勲
・脚本:髙橋泉
・原案・主題歌:スピッツ「楓」(Polydor Records)
・音楽:Yaffle
・プロデューサー:井手陽子 八尾香澄
・製作:映画『楓』製作委員会
・制作プロダクション:アスミック・エース C&Iエンタテインメント
・配給:東映 アスミック・エース
・コピーライト:Ⓒ2025 映画『楓』製作委員会
・2025/日本/カラー/120分/シネスコ/Dolby5.1c
映画『楓』公式サイト
公式X/公式Instagram/公式TikTok:@kaede_movie1219






















