勢い衰えぬDECO*27の活躍、職業・ボカロPの多様化、リアルイベント需要増……2025年VOCALOIDシーンの注目トピック総括
2025年もまもなく終盤。振り返れば、音楽、とりわけVOCALOIDといういちジャンルにおいても、今年は実に多彩な話題が飛び交った1年だった。近年続くカルチャーの海外進出や、潮流とともに変化する音楽の楽しみ方など、数字的な功績のみならず、文化としてのVOCALOIDは2025年でどんな変遷を辿ったのだろうか。本稿では、改めて今年のシーンを象徴する話題を拾い上げ、この1年間を振り返っていきたい。
DECO*27、勢い衰えぬ大御所の矜持 新世代の台頭と発掘の加速
まず最初のトピックは、今年も各所で躍進を遂げた大勢のボカロPたちの功績だ。中でも、活動十数年を誇る大ベテランながら、2025年も八面六臂の活躍でリスナーの度肝を抜き続けた存在――それがシーン屈指のトップクリエイター・DECO*27である。Billboard JAPANによる2025年の「ニコニコ VOCALOID SONGS」では、2024年投稿の「モニタリング」と2025年投稿の「テレパシ」の2曲がTOP10入りを果たし(※1)、2023年投稿の「ラビットホール」は自身初のYouTube再生回数1億回を突破。さらに年始には、制作に携わった『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』関連曲が1カ月弱で計7曲が解禁となり、その驚異の手腕をファンへ鮮烈に焼きつけたことも記憶に新しい。
コンスタントな新曲投稿に加え、「弱虫モンブラン」などの過去曲セルフリメイク、自身初となるトータルプロデュースライブ『デコミク LIVE starring 初音ミク「Hello」Produced by DECO*27 / OTOIRO』の開催が2026年2月に決定など、2025年も斬新かつ先鋭的なトピックで注目を集め続けてきた。いまだ勢い衰えぬ大御所の矜持を示す中、本人はすでに初音ミク誕生20周年のアニバーサリーイヤーとなる2027年の案件に着手中とのこと(※2)。来年以降も、大勢の期待を上回る、目覚ましい活躍を見せてくれることだろう。
シーンが誇る逸材はDECO*27だけではない。今年は特に“職業・ボカロPの多様化”がより進んだ1年のようにも感じられる。
過去曲ばかりが取り沙汰される風潮もすでに昔のものとなり、ここ数年でシーンからは年々新たな才能が輩出されている。2025年を象徴する存在としては、「お返事まだカナ💦❓おじさん構文😁❗️」が投稿約半年でYouTube再生回数3000万回を記録した吉本おじさんや、「目撃!テト31世」が公開2カ月で再生1200万回超えを記録するはろける、さらに『The VOCALOID Collection』を契機に注目を集めた海茶、山本、sabio、あばらや、ひらぎといった面々も挙げられるだろう。直近開催の匿名投稿祭『無色透名祭3』でも、知る人ぞ知るクリエイターたちがその確かな音楽性を“発掘”され話題となった。
カルチャーの世界的な広がりを背景に、韓国在住の音楽プロデューサー・TAKやアメリカ在住のSAWTOWNE、Vane Lilyを筆頭とする欧米圏クリエイターユニット・FLAVOR FOLEYなど、海外拠点のボカロPが頭角を現し始めたことも、2025年を象徴するトピックのひとつと言える。
すでに実績を持つクリエイターが“もう一つの顔”としてボカロP活動を行う潮流も、今年は随所で散見された印象だ。「ダイダイダイダイダイキライ」がYouTube再生回数4000万回超えのヒットとなった雨良や、YouTube Shortsも含め5本ものYouTube再生数1000万回超え作品を持つさたぱんP。
今や確固たる人気を確立するキタニタツヤは、約10年ぶりにボカロP・こんにちは谷田さん名義でコンピレーションアルバム『Eingebrannt』を主催し、シンガーソングライターの須田景凪はボカロP・バルーンの企画アルバム『Fall Apart』を、神山羊はボカロP・有機酸としてのアルバム『六 -ROKU-』をリリースしている。ボカロPとクリエイター、かつては二者択一の道を選ぶ先人が目立った中で、近年は両立の道を取る者も増えており、その点にもカルチャーの成熟と多様化を感じられることだろう。























