稲垣吾郎がしなやかに変化を続けられる理由 “知的な笑い”と”もがく大人”の表現――誕生日を機に紐解く
本日、12月8日は稲垣吾郎の誕生日。2025年の歩みを振り返ると、NAKAMAとのつながりを大切にしながら、個人としてもテレビドラマ、レギュラーラジオ、主演舞台と大いに充実した一年だった。
際立っていたのは、表現の場に応じて“正反対の顔”を自在に切り替える稲垣の幅の広さだ。バラエティやラジオといったパーソナルな空間では、肩の力が抜けたチャーミングな“吾郎さん”の顔を。対してドラマや舞台では、経験を重ねた俳優だからこそ描けるもがきながら前へ進む“大人”の顔を深く掘り下げてみせた。軽やかさと重厚さ、そのどちらにも嘘がないところに稲垣吾郎の面白さがある。
稲垣吾郎というキャラクターがもたらす、ウィットに富んだ“笑い”
今年3月に教育バラエティ『ワルイコあつまれ』(NHK Eテレ)が最終回を迎え、ひとつのお笑いの場が幕を閉じた。だが、その寂しさを埋めるように、稲垣はワイドラジオ番組『THE TRAD』(TOKYO FM)で、日常のなかに潜む小さなズレや自身の天然性を織り交ぜながら、独特のユーモアを響かせ続けている。
象徴的だったのが、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でロン役を演じた関町知弘(ライス)が出演した9月30日の放送だ。作品理解を深めるためのワークショップで、出演者が順に感想を述べていくなか、稲垣だけが「あ、僕は大丈夫です」とさらりと断ったというエピソードが明かされた。
これから作品を作り上げていくタイミングであれば、何かしらの言葉を絞り出そうとするのが普通だろう。実際に、関町は周囲の熱に押され、自分なりの言葉を準備したという。その“普通”を軽やかに飛び越える稲垣の一言が、状況を知るほどにおかしい。
しかも、稲垣本人が「面白かったでしょ?」「だって、(感想が)ない場合もあるじゃん!」と悪びれず笑ってみせるのだから、その無邪気さもまた魅力だ。自ら好かれようとしない誠実さと、ふとした瞬間のマイペースさ。関町が「行けー! これぞ吾郎さん!」と言った言葉にも大いに共感した。
この“飾らなさ”ゆえに、アシスタントの山本里菜から「大丈夫ですか、吾郎さん」「言い方(笑)!」とツッコミが入る場面もしばしば。だが、距離を縮めすぎない絶妙なバランス感覚があるからこそ、稲垣のキャラクターは“親しみにくさ”ではなく“愛される不思議さ”として成立している。
【🗺️THE TRAD ENTERTAINMENT MAP】#ライス #関町知弘 さんがご来店❗️
(@sekimachin)上演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』のウラ話やお気に入りの曲について、お話を伺いました❗️
ありがとうございました‼️
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— THE TRAD (@THETRAD_TFM) September 30, 2025
さらに『THE TRAD』では、三宅健やNumber_iに対して、彼らTOBE所属のアーティストが一堂に会して出演した東京ドームでのコンサート『to HEROes 〜TOBE 1st Super Live〜』に「なんで呼んでくれないの?」と無邪気に詰め寄る場面も。また、『櫻井・有吉THE夜会』(TBS系)にゲスト出演した7月10日放送回でも、櫻井翔とワインを飲み交わしつつ、後輩には「吾郎くん、牛丼行こうよ!」くらいのノリできてほしいという願望を語り、櫻井が思わず吹き出す場面もあった。
引き締まった緊張感を保ちながら、その空気をたちまち柔らかな笑いに変えるのは、稲垣が長年かけて築いてきた“稲垣吾郎像”の賜物だ。唯一無二のキャラクターを守り育ててきたからこそ、そのイメージを自らイジるギリギリの茶目っ気が成立する。そこに成熟したエンターテイナーとしての技を見た。
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変化の激しい時代に向き合う“大人の苦悩”をすくい上げる演技
一方で、ドラマや舞台で稲垣が描いてきたのは、変わりゆく時代のなかで若者と向き合う“大人”の姿だった。7月クールのドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ/フジテレビ系)では、濱ソラリス高校の理事長・尾碕美佐雄として、学院運営の責務と教育者としての理想のあいだで揺れる人物像を丁寧に表現した。
並行して舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』では、父親になったハリーを熱演。幼くして両親を失ったハリーは、自分が父親としてどうあるべきかがわからず、息子・アルバスと距離を縮められない。その不器用さと痛みは、世代間の価値観が大きく変わる令和の空気とどこか重なる。
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— 新しい地図 (@atarashiichizu) July 8, 2025
時代が移ろう速度は年々増している。自分の歩んできた道を若者に示そうとしても、環境や価値観があまりに違えば、それは助言ではなく押し付けとして受け取られてしまうこともある。そんな“難しい時代”に立つ大人が抱える葛藤を、稲垣は誠実にすくい上げていた。
尾碕理事長がスーツを脱ぎジャージ姿になって、理事長室を生徒が気軽に出入りできる空間へと変えていく。ハリーが息子に素直な思いを伝え、新しい父親像を模索していく。その変化の柔らかさと決意には、稲垣自身がアイドルの新しいあり方を探求しながら進み続けてきた歩みが透けて見える。芯は変わらず、しかし、状況に応じてしなやかに変化する。長年のキャリアで育んだその姿勢が、演じるキャラクターにも深い説得力を与えていた。
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『#僕達はまだその星の校則を知らない 』
最終回は #TVer で無料配信中💫
**┈┈┈┈┈**✂️⸒⸒最終話 切り抜き✂️⸒⸒
『もし受かったら…』久しぶりに濱ソラリス高校へやってきた健治(#磯村勇斗)は
そこで尾碕(#稲垣吾郎)と再会を果たす… pic.twitter.com/xf5aWIdLfs— 『僕達はまだその星の校則を知らない』公式【月10ドラマ】 (@bokuhoshi_ktv_) September 29, 2025
来年2月には、舞台『プレゼント・ラフター』の主演も控える稲垣。同作は1942年初演とは思えないほど、稲垣の人生と共鳴する要素も多いイギリス喜劇だ。彼が演じるのは、私生活でも“求められる自分”を演じてしまうスター俳優・ギャリー。人々に愛されながらも、ふと心をよぎる孤独。年齢を重ねるなかで避けて通れない“老い”への戸惑い。そうした深い感情を抱えたギャリー像は、2025年の稲垣が見せた“知的な笑い”と”もがく大人”という両側面が強く作用し、より豊かな表情を帯びるのではないか。2026年の稲垣吾郎もまた新たな顔を見せてくれそうで、楽しみでならない。
























