ぼっちぼろまるはなぜ音楽を選び、ギターを持って歌うのか 決心と復讐のアルバム『COMICAL』を語り尽くす

音楽での地球侵略を目指す地球外生命体アーティスト、ぼっちぼろまる――。ぼっちぼろまる自身が「とっても楽しいアルバムです」と言ってくれているが、まさにその通りで、初のフルアルバムとなる『COMICAL』には、“ぼっちぼろまる”そのものが投影されている。なぜぼっちぼろまるが音楽を愛するのか、なぜぼっちぼろまるは曲を作るのか、その理由が刻まれた究極のアルバムである。
ぼっちぼろまるが鳴らす音楽は何への復讐で、なぜ“復讐”なのか。そんなことを今回彼はじっくり話してくれた。初めてのアルバムに名付けられた『COMICAL』の意味、これからのぼっちぼろまるの行き先が見える、そんなインタビューになった。(編集部)
初のフルアルバム『COMICAL』――「やりたかったことをほぼ100%表現できた」

――今年はTVアニメ主題歌だけでも『ババンババンバンバンパイア』(テレビ朝日系)エンディングテーマの「NE-CHU-SHOW」、『3年Z組銀八先生』(テレビ東京系)オープニングテーマの「桜風」もあって、とても忙しい一年だったかと思いますが、肝心の地球侵略のほうはいかがですか?
ぼっちぼろまる:侵略のほうは徐々に、って感じですね。もちろん地球侵略という名の音楽活動ですけど(笑)。今年はもっと攻めたかったなという気持ちもありつつ、一昨年、去年とありがたいことにずっと忙しくさせてもらっていたので、やりきれなかった部分もあって。正直、ちょっと悔しさも残る一年です。
――ちょうどアルバムが12月リリースということで、年末も見えてくるタイミングですよね(取材実施は11月中旬)。2024年に仕込んでいたものが2025年に一気に走り出して、「この一年どうだったかな?」と振り返るタイミングでもあると思うのですが。
ぼっちぼろまる:精一杯頑張ったとは思っているんですけど、もうちょっとやれたんじゃないかとも感じていて。もっと寝なくてよかったな、とか(笑)。でも、寝ないとパフォーマンスが落ちるっていう話もあるじゃないですか。頭のなかがずっと忙しい状態の時が多くて、その状態だからこそ書けた曲もある気がしていて、どっちが正解かはわからないんですけど、「もう少しピシッと全部整えたかったな」という反省はちょっとありますね。
――ここ数年はアニメ主題歌などのタイアップ、そしてコラボ系のお仕事も増えましたよね。ご自身の作品を作るだけでなく、「どういう形で作品とシンクロさせるか」「どうやって作品のファンに届けるか」といったことも含めて、考える時間がとても増えた時期だったんじゃないかな、と。
ぼっちぼろまる:たしかに、自分ひとりで好き勝手に曲を作っていた頃に比べると、考えることはだいぶ増えましたね。特にアニソンとしてやらせていただく時は、作品にのめり込んで作っているので、やっている最中は「大変だな」とはあまり思ってなくて。ただ、その一曲、その一作品と向き合うかわりに、ほかのことが一切できなくなる(笑)。でも、そのぶん一曲一曲にしっかり向き合えている実感はあります。
――アルバムやライブでは“コミカルな宇宙人・ぼっちぼろまる”のイメージが強いですが、制作の向き合い方は相変わらず真面目で、いつも真摯で。こういう言い方すると営業妨害かもしれませんが(笑)。
ぼっちぼろまる:「真面目ですね」って言われるの、ちょっとこそばゆいです(笑)。本当は「いつでも適当にやってますよ~」って言いたいんですけどね。アルバムタイトルが『COMICAL』なので、ライブMCももう少しコミカルにやりたかったんですけど、この前のライブなんて真面目に喋りすぎて、バンドメンバーに「もっとふざけろよ!」と怒られちゃって(笑)。

――ここからは、フルアルバム『COMICAL』について伺わせてください。完成した今の手応えはいかがですか?
ぼっちぼろまる:かなり自信があります。僕がやりたかったことを、ほぼ100%表現できたなと思っています。今の音楽って、“アルバム”という形態自体が少し特別になってきていると思うんですけど、今回は明確に“コンセプトアルバム”にしたかったんです。これまでのヒット曲がまとまっているのでベスト盤的にも聴けるんですけど、それだけで終わらせたくなかった。「-目次-」や「-質問を募集するコーナー-」、「-挿絵-」、「-あとがき-」まで含めて、一冊の本、一冊のコミックみたいに楽しんでもらえるように作りました。
――ぼっちぼろまる名義では、初のフルアルバムになりました。
ぼっちぼろまる:そうなんです。自分はアルバムというものにすごく思い入れがあって。レコードも少し集めているんですけど、やっぱり「頭から最後まで通して聴いて、初めてひとつの作品になる」というアルバムにずっと憧れていたんですよね。今は自分自身もアルバムを通して聴く機会が昔より減ってしまったなとも思います。それでも、アルバム全体で伝わるものがある作品を作りたかった。だから、今回「ついに作れた!」という嬉しさがあります。
――今の音楽シーンだと、曲単位でバズっていくことが多いですよね。ぼっちぼろまるさんも「おとせサンダー」や「鎌倉STYLE」などは、“TikTokやYouTubeのショート動画でよく流れてくる曲”として認識されることが多かったと思います。今回のアルバムは「これがぼっちぼろまるです」と、やっと自己紹介できた作品のように感じました。
ぼっちぼろまる:めちゃくちゃそう思います。僕、本当に曲を作ることが好きで。一曲一曲に全力を込めているんですけど、特にアニソンの場合は作品に寄り添うことが第一だと思うんです。言い方が難しいんですけど、ある意味、自分の存在感を薄めるくらいでちょうどいいと思っているんです。アニメのオープニングやエンディングって、その作品のためにあるべきものだと思うので、“ぼっちぼろまるが前に出る”というのはいちばんではなくていい。だから、ここ数年は自分の思想や価値観を前面に出す曲は意識的に減っていたかもしれないです。
その反動もあって、『COMICAL』ではタイアップ以外の曲――新曲や再録曲には、自分の思想をかなり強く入れました。「僕はこう考えているよ」「こういうことを感じているんだよ」という部分を、ちゃんと聴いてほしくて。選曲もそこを意識して決めましたね。



















