ぼっちぼろまるはなぜ音楽を選び、ギターを持って歌うのか 決心と復讐のアルバム『COMICAL』を語り尽くす

ぼっちぼろまる、決心と復讐のAL

「ぼっちぼろまるは邦楽ロックに対する復讐だ」と言われて、すごくしっくりきた

ぼっちぼろまる(撮影=加古伸弥)

――タイトルでもある『COMICAL』という言葉には、どんな意味を込めたのでしょうか。

ぼっちぼろまる:このタイトルは3、4年前からずっと頭のなかにあって、「いつか『COMICAL』というアルバムを出したい」と言い続けてたんです。でも、なかなかタイミングが合わず、時間がかかってしまって。その間に“コミカル”という言葉についてはずっと考えていたんですが、まず第一に、ぼっちぼろまる自身が“コミカルな存在”であるということ。そして、もうひとつが、“コミック”=“漫画”的であるということ。僕、漫画が大好きなんです。ラノベ原作作品の主題歌や漫画、アニメにまつわる曲もたくさんやらせていただいてきましたし、自分の歌詞も漫画やアニメから大きな影響を受けています。だから『COMICAL』は、コミカルな宇宙人シンガーソングライターとしての自分と、コミック、漫画、アニメへの愛を両方含んだ言葉で。アルバムの構成もコミックを意識していて、目次があって、挿絵や質問コーナーが入っていて、最後にあとがきがあって……まさに一冊の単行本にしたかったんです。

――「桜風」はもちろんですが、「シン・タンタカタンタンタンタンメン」などを聴いていても〈語尾にアルがつく女の子〉なんて歌詞も出てきますし、『銀魂』をはじめ、漫画やアニメへの強い愛情を感じます。

ぼっちぼろまる:まさに(笑)。昔から漫画をテーマにした曲も書いてきましたし、特に歌詞は、漫画からの影響が本当に大きいですね。

ン・タンタカタンタンタンタンメン / ぼっちぼろまる (Music Video)

――『銀魂』だと、笑わせるために泣かせて、泣かせるために笑わせる感じ。笑いと涙が二律背反しながら共存している世界というか。

ぼっちぼろまる:そうそう。そこが僕もすごく好きで、『COMICAL』全体でも意識している気がします。パッと聴くと「なんじゃこりゃ」と笑える曲でも、歌詞にはしっかり伝えたいことを詰め込んでいる。そこは自分のアイデンティティに近い部分かもしれません。

桜風 / ぼっちぼろまる (Music Video)|TVアニメ『3年Z組銀八先生』オープニングテーマ

――アルバムを通して強く感じたのが、2000年代、2010年代の邦楽ロックへの深い愛です。

ぼっちぼろまる:それはもうめちゃくちゃありますね。最近、知り合いから「ぼっちぼろまるは邦楽ロックに対する復讐だ」と言われて、すごくしっくりきたんですよ。10代、20代の頃、いろんなロックバンドが下北沢やライブハウスから這い上がっていく姿を見てきたけど、自分はその波に乗り切れなかった。「売れていった人たちをたくさん見てきた側」の人間として、いまのぼっちぼろまるのスタイルでロックを鳴らしている――それはある意味、青春を捧げた邦楽ロックへの“愛ゆえの復讐”なのかもしれないな、と。とはいえ、憎んでるわけじゃないです。むしろ大好きで、それがにじみ出ている感じですね。

――いわゆる「フェス時代の邦楽ロック」と呼ぶに相応しいバンドサウンドに、ぼろまるさんからのものすごく強いリスペクトを感じました。オーディエンスが仮にフェスで初めて聴く曲でも、否が応でも一体感が生まれて盛り上がれる、あのバンドサウンドで踊れる祝祭感というか。

ぼっちぼろまる:ですね。自分のなかでも、ぼっちぼろまるはアニメと邦楽ロックの時代に青春を捧げた“僕”からのアンサーという感覚があります。『COMICAL』は、まさにそのアンサーを形にしたアルバムなのかもしれませんね。

ぼっちぼろまる(撮影=加古伸弥)

――ぼっちぼろまるさんは、地球侵略をしにきた宇宙人なわけですが、その姿でギターを持ち、歌い続けること自体に、実は強いロック的アティテュードを感じます。

ぼっちぼろまる:たまに冷静になって思うんですよ。「なんでこんな大変な思いをして、大きな頭の虚無顔でギターを弾きながら歌わなきゃいけないんだろう」って(笑)。でも、自分の深いところには、「ギターを持って歌うことはかっこいい」という刷り込みがものすごく強く残っていて。幼少期からそういうロックをたくさん聴いて観てきたので、自分のなかでは「ギターを持たないで歌うほうがむしろ違和感がある」というか。宇宙人の姿で歌うことも含めて、意味わからないけど、かっこいいからやる。それはある種、僕なりのロックな姿勢……なのかもしれないですね(笑)。

――ギター、ベース、ドラムのいわゆるバンドスタイルが今でも日本で元気なのって、『NARUTO』や『鋼の錬金術師』、『銀魂』、『BLEACH』……そういうアニメ主題歌で、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやサンボマスター、L'Arc-en-Ciel、DOES、SPYAIR、BLUE ENCOUNTなど、子どもの頃から良質なバンドサウンドに触れてきた人が多いからだと思うんです。

ぼっちぼろまる:たしかに、その影響は絶対に大きいですよね。だって僕自身、子どもの頃からアニメを観ながら自然と邦楽ロックにのめり込んでいった世代ですから。海外に比べて日本が常にロックバンドが生まれる土壌になったのは、アニメの影響は小さくないはずだと僕も思います。

――そのなかでもアルバムの1曲目「超!うたうぼっちのテーマ」と最後の「COMICAL」が、アルバムのメッセージ的にとても重要な位置付けにあると感じました。

ぼっちぼろまる:その2曲は完全にアルバムの両端を支える“柱”ですね。「超!うたうぼっちのテーマ」の原曲は、2019年頃――まだ聴いてくれている人が全国で100人くらいの時期に出した曲で。当時僕が思っていたことを、とにかく吐き出したくて作った曲なんです。

――この曲って、“音楽を続ける意味”よりも“音楽をやめない理由”を歌っている曲のように感じて。

ぼっちぼろまる:ああ、そうかもしれませんね。音楽活動って、見つけてもらえてない時期がいちばんしんどいじゃないですか。それでも“やめないでいる自分”を肯定する曲と言えるかもしれません。そして、それは今も気持ち的には何も変わっていない。だから、アルバムの始まりの歌としてもう一度録り直して、今のバンドサウンドで収録しました。

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