久保史緒里が築いた“深夜の居場所”はなぜ井上和へ託されたのか 『乃木坂46ANN』という共に歩む時間

『乃木坂46の「の」』『乃木坂LOCKS!』で見せる井上和ならではの空気感

 そんな久保からバトンを受け取る井上は、すでに次世代の中心的な存在だ。話し方は穏やかで柔らかいが、芯を感じさせる瞬間もある井上。『乃木坂46の「の」』(文化放送)の5期生による月替わりMCでは、先輩メンバーを迎えてトークを進行する役割を担い、番組の空気を整え、相手の言葉を受け止める余裕も自然と身につけてきた。今回の『乃木坂46のオールナイトニッポン』のパーソナリティ就任は、そうした準備期間を経た上での、自然なステップアップと言えるだろう。

 井上の魅力が最も自由に開放されてきたのは、『乃木坂LOCKS!』(TOKYO FM)だった。番組内では突然おはぎに全力で熱を注ぎ、“おはぎMAP”を作り始めるほどのこだわりを見せたことも。リスナーから届いたメッセージに対する距離の近さも含め、井上はすでに夜帯放送のラジオの空気を掴んでいることが伝わってくるだろう。久保が築いてきた安心感とはまた異なる、井上ならではの軽やかさと温度がそこには生まれるのだと思う。

 乃木坂46にはいくつものラジオ番組があるが、その中でも『乃木坂46のオールナイトニッポン』にはどうしても“乃木坂46の王道”であってほしい、という期待が個人的にはある。感情の中心であり、ふと立ち返りたくなる拠り所のような番組。だからこそ、久保の柔らかなトーンを井上が受け継ごうとしているということは、この番組が担う役割をよく理解している証でもあると思う。

 5期生のエースである井上が『乃木坂46のオールナイトニッポン』という舞台で存在感を確立できれば、それは彼女ひとりの成果に留まらず、グループ全体のブランドを引き上げることにも繋がる。久保が築いた深夜の居場所を受け継ぎ、そこに自分らしさを重ねていく。深夜ラジオという場所で、乃木坂46の過去と未来を繋ぐ物語は、井上の声で新たに紡がれていく。

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