Superfly、ボーカリストとしてのスキルに脱帽 オリジナル&名曲カバーで響かせた心を震わせる歌声

Superfly、圧倒的なボーカルスキル

 初のカバーアルバム『Amazing』をリリースした後、札幌文化芸術劇場hitaru公演を皮切りに各地を巡った約10年ぶりの全国ホールツアー『Superfly Hall Tour 2025 “Amazing Session”』。カバーした曲の1つ1つを心を込めて歌い、新たなアレンジを施したオリジナル曲を輝かせるツアーとなった。ファイナルを迎えた11月6日・東京ガーデンシアター公演の模様をレポートする。

 ステージを覆っている紗幕の向こう側でスポットライトを浴びながらアカペラで歌い始めたSuperfly。バンド演奏が合流して幕が開くと、1曲目「Beautiful」が会場の隅々にまで響き渡った。歌声と演奏を全身で感じながら手拍子をする観客の心の震えが、周囲から自ずと伝わってくる。「今日はカバー曲をたっぷり。そしてオリジナル曲もたっぷり。ごちゃ混ぜで行きたいと思います。みんな、最後まで一緒に楽しもうね」という言葉と共にスタートした「フレア」も、ステージを見つめる人々を幸福感で満たしているのを感じる。温かなサウンドが観客を出迎えたオープニングであった。

 「名曲カバーの数々を歌わせていただきますし、自分の曲はセルフカバーの気持ちで作ってきました。これから先、この内容でライブをお届けすることはきっとないと思うので、存分に楽しんでほしいです」――「SISTER」(back number)を歌った後、観客に呼びかけたSuperfly。「彩り」(Mr.Children)と「果てない空」(嵐)も披露されたが、言葉の1つ1つを輝かせ、メロディを躍動させる表現力が圧倒的であった。アルバム『Amazing』でカバーしているのは、全てが男性ボーカルによる曲。「男性の心情を理解して自分のものとして表現できるのだろうか」という不安が大きかったと序盤のMCで語っていた。「理解するためには歌うしかなくて、たくさん歌って練習したんです。楽曲ってまるで人みたいなんですよ。何回も歌うと突然本当のことを教えてくれるというか、心を開いてくれるような瞬間があるんです。その瞬間がやってきた時は嬉しいというか、喜び。『ああ、やっと繋がれたなあ』って。楽曲からいろんなことを教えてもらったり、気づかせてもらうことがたくさんありました。音楽って私にとって腐れ縁みたいで、時々喧嘩をしたりもするんですけど、それでもやっぱり仲良しで、なんでもオープンに話せる大親友みたいな存在だなと思わせていただいた楽曲です」ーーこのMCの直後に届けられた「メロディー」(玉置浩二)では、彼女と楽曲が深く繋がり合っているのを感じた。歌声を優しく彩っていたピアノの音色。他の楽器の演奏、コーラスも加わり、安らかなトーンのアンサンブルが構築された。息を呑んで耳を傾けていた観客。エンディングを迎えた瞬間、客席の全エリアから沸き起こった拍手がものすごかった。

 オリジナル曲に特別なサウンドアレンジが施されていたのも、このライブの大きな見どころであった。バンドメンバー各々が何らかの曲のアレンジリーダーを担当してアイデアを出したのだという。中盤で披露された「輝く月のように」は、印象的だった曲の1つとして思い出される。聖歌にも通ずる清らかな調べで包まれたステージを見つめていると、胸がいっぱいにならずにはいられなかった。そして「Ashes」を皮切りに、「タマシイレボリューション」「Alright!!」「Crazy Crazy」(星野源)……エネルギッシュなサウンドで再び満たされた会場内。ビートをダイナミックに乗りこなしながら歌うSuperflyは、ロックスターそのものであった。パンチの利いた歌声を響かせながらステージ上を巡る姿から目を離せない。果てしなく熱量を高め続けるサウンドを受け止めながら、観客は歓声を上げていた。

 スティールギターのブルージーな調べで彩りながらミステリアスな音像を響かせた「Charade」。アコースティックギターの温かな音色と歌声の融合が心地よかった「たしかなこと」(小田和正)。壮大な展開を遂げるバンドサウンドに包まれながら歌うSuperflyの姿が雄々しかった「Wherever you are」(ONE OK ROCK)……終盤も強力な曲の連続だった。「みんな、一緒に歌いましょう!」という言葉に応えて、観客が大合唱した「愛をこめて花束を」。そして「僕のこと」(Mrs. GREEN APPLE)で締めくくられた本編。客席に向かって降り注いだ歌声が、眩しい光を放つかのように神々しかった。

 「7千人の拍手、嬉しいです。歌っていいですよね? 歌うぞ!」ーー鳴り止まない手拍子と歓声に応えてステージに戻ってきたSuperflyは、観客に明るく呼びかけた。そしてアンコールの1曲目に届けられたのは、アルバム『Amazing』には収録されていない「楓」(スピッツ)。テレビ番組で秦基博とのデュエットでカバーしたことがある曲だが、コーラスの竹本健一と稲泉りん、Superfly各々のソロパートをたっぷりと盛り込んだ新鮮なアレンジが施されていた。歌声を交わし、ハーモニーを響かせる3人が喜びで満ち溢れている。耳を傾けていると心が温まるひと時であった。

 観客の激しい手拍子を誘った「スキップ・ビート」(KUWATA BAND)を経て迎えた小休止。Superflyは、カバーアルバムについて改めて振り返った。「不思議だったんだけど、男性の曲なのに母性を感じたり、『こういう風に生きていきたい』という女性像を思い出したり、『自分とそっくりかもしれない』と思ったり、音楽ってすごいなと思いました。音楽って性別、肩書、年齢とかを簡単に超えられるんだなと。自分の曲を書くのは孤独で、ずっと答えを探し求める旅みたいな寂しい作業なんですけど、今回のカバー曲を歌う行為は、そこに誰かが待っていてくれるような、『会えた』という喜びがあった不思議な制作期間でした」ーーそして「めちゃめちゃかっこいい曲をお届けします。これからもそれぞれ自分らしく、かっこよく生きていきましょう」という言葉が添えられ、「人として」(SUPER BEAVER)がラストを飾った。撮影がOKだったので、観客が一斉にスマホを掲げながら聴き入っていたが、液晶画面の光で満たされた客席の風景が幻想的。歌いながらSuperflyが浮かべた笑顔が、とても幸せそうだった。

 バンドメンバーたちと共にステージに並んだ彼女を包んだ拍手と歓声。音源で聴いても圧倒的な歌声の持ち主だが、ライブ会場で直に受け止めるのは本当に素晴らしい体験だった。ステージからの去り際に「また遊びに来てね!」と観客に手を振った彼女もライブがとても好きなのだと思う。約10年ぶりに全国のホールを巡った今回のツアーで得たエネルギーは、今後の活動を力強く後押しするに違いない。

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