KAT-TUNが歩んだ24年間、hyphenとの絆――長い航海を終え、歴史を刻んだ『Break the KAT-TUN』一万字レポ

『Break the KAT-TUN』一万字レポート

亀梨和也「KAT-TUNというグループがプライドであり、美学であり、誇りでした」

 すぐさま始まったKAT-TUNコール。彼らを呼ぶ大きな声と拍手がスタジアムを包む。これまでのどの公演よりも力強く、彼らを引っ張り出す引力があった。

 アンコールに応えた3人は、天狗などの懐かしのイラストや宝石のイラストをあしらった大きなフロートに乗って登場。アンコールは「ノーマター・マター」からスタート。上下左右と大きく手を振って楽しませたほか、ファンも大合唱。「ゼロからイチへ」「KISS KISS KISS」「ど~にかなるさ」「HEARTBREAK CLUB」と続き、3人のアカペラが響いた「Will Be All Right」、ペンライトが激しく揺れた「Peacefuldays」を経て、「ハルカナ約束」へ。ダンスも歌唱も、エネルギッシュにそして一層の思いを乗せて歌唱した。上田の「飛べ!」でさらに熱気を帯びていく。

 亀梨は息を切らしながら、ステージや仕事に携わったスタッフをはじめ、ステージ、スピーカー、照明、特効など機材にもお礼を述べるおなじみの場面も。上田は「24年間踏み続けてごめんよスピーカー」と、足をスピーカーにかけながら呼びかける。「意外と重要だったぞ、このへこみ」と中丸。育ててくれた家族や友人、そして亀梨は「歩みを続けてくれた、続けた? メンバー3人にも大きな拍手!」と言えば、「どっかいるっしょ!」と笑いを誘う。配信で見守るhyphen、会場に集まったファンに特大の感謝を伝えた。

 そして亀梨が上田とアイコンタクトを交わし、上田から挨拶。「始まる前まではこの日が来なきゃいいなという気持ちと、早くKAT-TUNとしてまたステージに立ちたいなという気持ちと、両方合わさっていた気分でした」と心境を吐露。「いざライブをやってこの景色を見ると本当にすごい幸せでした!」と告げ、ステージに立てたことへの感謝を述べた。「2年、3年前かな『After Life』という舞台をやりまして、もし自分が死んだ時にどの思い出を持っていきますか? っていう舞台で。その時、取材でよく聞かれたんですけど。KAT-TUNのライブですね、どこのシーンかわからないけども、KAT-TUNのライブのシーンを持っていきたいです』って答えていたんです。でも、この後のシーンになるんじゃないかなと、自分は確信しております」と、“定例のやつ”として、ラストの景色になると語った。

 「KAT-TUNとして、KAT-TUNの上田竜也としてはこれが最後のコメントになってしまいますが」と前置きし、「素敵な、10代から、素敵な人生を……歩ませてくれてありがとう」と声を震わせながらファンへの感謝を述べた。

『Break the KAT-TUN』

 中丸も感謝を述べた上で、「日々思っていたことなんですけど、なんか今日、確信に変わったなと思うことがありまして、個人的には本当に人に恵まれたなと思いますね」と、スタッフ、関係者、レコード会社、メンバー、ファンに向けてメッセージを送り、「言葉にしてね、伝えるにはちょっと限界があるんですけど、本当に心の底からね……」と込み上げる涙を抑えきれずに背を向けた。階段に座ってから、再び立ち上がり「立場的に表に立つものとしては美学のひとつではあったんですけど、皆さんに悲しい思いをさせるっていうのは避けなければならないと。そういう信念を持ってやってきたんですけど」と語り、最後に花道を設けてもらったことへの感謝に続き、「やっぱり心の底で悲しいな」と本音を吐露。

 「MCでも話した通り、今後もエンタメの世界にはいるし、6人ともね。まああの、若干1名はハスラーKIDが物理的にエンタメやってないかもしれないですけど。未来のことはよくわからないですけど、どこかで交わったりとかね、そういうことができたらな」と述べ、「めちゃくちゃ良かった四半世紀でした」と締めくくった。

『Break the KAT-TUN』

 亀梨は深い、深いおじぎをした上で「楽しかったですか?」と呼びかけ、「えー……終わります」と切り出した。「10代の時から結成させていただいて、とにかく……自分の青春だったし、最初から最後までKAT-TUNが大切だったし。KAT-TUNというグループが、自分の進んでいく道の中のプライドであり、美学であり、誇りでした」と、やや潤んだ瞳で会場を見渡した。

 「まだまだ、何も全然ない頃から、こうしてたくさんね、ライブを重ねて、やる度やる度に本当に多くの方たちと、想像もできないぐらいな景色を見させてもらって。これからは、これまで歩んできたものをしっかりと、みんなと一緒に心の宝箱にしまって。ふとした時に、それぞれが温もりを与えてほしいなと思いますし、きらんと、きらめく存在でこのグループがあってくれたら嬉しいなと思います。」

 「あぁ……ふふっ、終わりだ」と涙をこらえた様子で続け、「とにかくこの形が最高の未来のために、未来に進んだ時に、メンバーともみんなとも最高の形だったと思えるように、それぞれが次の一歩を踏み出さなければいけないと思っています。また、想像もできないような景色をそれぞれが作って共有して。また、なんかの青春ができたらいいなと思ってますので、その時には、思いっきり騒ぎましょうね」と告げる目には、光るものがあった。

『Break the KAT-TUN』

 「本当にKAT-TUN……(胸を3回叩いて)ありがとうございました」と述べた。

 「さあ、手を繋いで!」と亀梨が仕切り直す。ふたりのメンバーと目を合わせ、一呼吸おいてから、亀梨の「We are!」の叫びに、「KAT-TUN!」とオーディエンス。

 大輪の花火が打ちあがり、ほどなくしてメンバーは「Thank You KAT-TUN」、「楽しかったぜ!」、「ありがとうございました!」と口々に語った。

 そして、暗転した会場に響く、亀梨の〈ギリギリで〉と「Real Face#2」がスタート。中丸のボイパとカウント、上田のラップ、先ほどまでのしんみりとした感情を吹き飛ばすように、熱い歌唱を続ける。特効もマックスレベルの派手な演出だ。亀梨の舌打ちからはさらに激しさを増し、〈リアルを手に入れるんだ〉ではファンのペンライトも高く掲げられた。

 そして2番の冒頭を歌った亀梨が、上手のステージ端に駆け寄る。咄嗟の出来事に驚きつつも、〈笑いたきゃ笑えばいい〉からをすぐさまファンが歌い繋いだ。

 亀梨が手にしたのはシャンパンボトル。中丸も歌いながら取りに行き、上田もボトルを手にしながらも自分のパートを歌いつつ、「いくぞ、いくぞ」と準備に取り掛かる。亀梨はボトルを振って、笑顔を浮かべ、「いくぞ」と笑顔でシャンパンファイトをしてみせた。ボトルに口を付けて飲んだかと思えば、手慣れた様子でシャンパングラスに注ぎ、客席に乾杯と掲げて飲む。中丸も手酌で注ぎ、再び亀梨がシャンパンファイト。

 激しい特効の光に照らされながら、それぞれの合図で、爆発音が鳴り響く。最後はカラフルな花火が何発も、それもとんでもない量が放たれ、のちにわかったのだが3000発の花火を打ち上げていたという。花火の音とKAT-TUNの音楽の饗宴だ。

 そして、火の粉が舞うステージの中で階段を上っていく3人。ツアーロゴをあしらった布を背に、上段からスタジアムを愛おしそうに眺める中丸、上田、亀梨は「ありがとう」と伝えながら投げキス。スモークに包まれ、彼らはステージを後にした。

 怪しげに光るステージ。爆発音が鳴り響くとステージを支えていた骨子が相次いで倒れる。スクリーンには「-」が表示され、それを中央に、再び「KAT-TUN」の文字が点灯する。3回鐘が鳴り響いて、ラストライブが幕を閉じた。

 最後に彼らは勝利の美酒を堪能し、 タイトルに掲げたように船を“Break”したのだ。

 正直、ライブが始まる前までは、“終幕”という言葉に抵抗感があった。そもそも馴染みがないほうがいいのだろうが、当日を迎えてもまだどこか「信じられない」という気持ちが大きかった。しかし、『Break the KAT-TUN』と掲げたそのタイトル通り、終盤の演出で吹っ切れる、腹落ちするという感覚と、そしてひとつの壁を突破したような気持ちにもなった。

 晩秋の夜空に、次々と打ちあがる大輪の花火に見惚れ、その尺は思ったよりもずっと長くて。煌びやかで美しく堂々としていながらも、どこか尖った花火はKAT-TUNを象徴していた。

 何があってもKAT-TUNとして最後の最後までステージに立ち続け、勝利の美酒のように清々しい様子でシャンパンを飲む。そして最後にセットが倒壊ーーKAT-TUNとしてステージに立ち続けた3人の姿は立派だった。

 亀梨らがシャンパンボトルを取りに向かった時に、きっと誰もが「何が起こるのだろう!?」と視線が釘付けになったはず。開栓して、笑顔でシャンパンファイトをする姿に、思わず笑みがこぼれたのも束の間、流れ続ける曲をこぼさぬようにと、hyphenがこれまた慣れた様子で歌い繋いだ。「歌って」と言われたわけではない、この自然発生こそがこれまでに築いてきた“絆”なのだろう。

 10代の頃からKAT-TUNとして活動を続け、2025年にスタジアムで3万人を動員して自ら幕を下ろした。天候も前日より5度低い予報だったが、風も控えめ。1日遅ければ雨模様だったことを思えば、天候をも味方につけた彼らは、大輪の花火を打ち上げて、最後の航海を終えた。

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