THE ALFEE、伝説の数々を作り出す3人の絶対的な信頼 人々の心に深く刻まれた記録と記憶

 THE ALFEEが1986年8月3日、東京湾13号埋立地(現台場地区)で開催した野外ライブ。その模様が4Kリマスター版として蘇り、10月23日に『伝説のコンサート THE ALFEE』(NHK BS)で放送され、話題を集めた。

 同番組は、音楽フェスが今ほど一般的ではなかった当時、1日で9万2500人を動員して「日本初の10万人単独コンサート」と呼ばれたTHE ALFEEによる伝説的な大規模野外ライブの模様を特集したもの。幅120メートル、高さ75メートルという巨大ステージセットを背景に、高見沢俊彦(Vo/Gt)、坂崎幸之助(Vo/Gt/Per)、桜井 賢(Vo/Ba)が狂熱のパフォーマンスを繰り広げたのだ。

 なかでも注目されたのは、同コンサートのアンコールで披露された「ROCKDOM -風に吹かれて-」の演奏場面。3人が楽器演奏を止めてアカペラで、そして顔を近づけあって1本のマイクで熱唱する光景は、THE ALFEEというバンドのあり方を象徴していると思えた。

 THE ALFEEは、この10万人ライブ以外にもさまざまな記録を残している。直近では、2023年に日本武道館でのライブ数が100回に到達したこと。1983年8月24日の『OVER DRIVE 1983 ALFEE BUDOKAN -FOR THE BRAND-NEW DECADE-』から足掛け40年。高見沢は日本武道館での100回目のライブの舞台で「デビュー50周年、どこまで行けるのか、最長不倒距離としてこのままやっていこうと思う」(※1)と、新たな目標を語っていた。

 思い返せば過去の公演でも高見沢はファンに向けて「みんなの青春がTHE ALFEEなら、みんなの青春は二度と、絶対に終わることはないよ。断言しよう」と“不滅宣言”をした。つまりTHE ALFEEの活動は、これまでも、そしてこれからも、何事もまず“続けること”が一つのテーマであることが分かる。

 偉大な記録で言えばもう一つ。74thシングル『HEART OF RAINBOW』で、シングル連続TOP10入り獲得作品数が59作に及んだことだ(オリコン調べ/※2)。時代の移り変わりに合わせて日本でも流行する音楽ジャンルが多様になっていくなか、50年以上活動を続けてきたバンドの曲が時代を越えて受け入れられているのは、まさに驚異的。ただそれは、THE ALFEEがこれまでいろんな音楽の要素を取り入れて楽曲制作を行ってきた経験によるものが大きいとも言えるだろう。

 THE ALFEEは、1973年のバンド結成からしばらくはフォークを中心に楽曲を発表していた。しかし、1980年前後より徐々にロック系の要素も多く取り入れていった。そして、10万人ライブ以降は、ヨーロピアンなテイストを絡めたり、ポストロックを取り入れたりするなど、さらにバンドの音楽性が広く、深くなっっていったのだ。

 ちなみに、1980年代に奏でられたTHE ALFEEの音楽は、のちにJ-POPと呼ばれることになる。ドキュメンタリー映画『THE ALFEE 40th Anniversary Film THE LAST GENESIS 40年の軌跡と奇跡』(2015年)でも、「ALFEEはJ-POP1号アーティスト、そう言っても過言ではない」と解説されている。ここで言う“J-POP”とは、それまでの日本の音楽のメインであった歌謡的なものをさらに発展させつつ、海外のロック、ポップスをアーティストそれぞれが解釈し、大衆性も意識しながら音楽へ落とし込んでいくものこと。THE ALFEEはメジャーアーティストのなかでもいち早く、そのスタイルで活動していたのだ。THE ALFEEの音楽はそういった枠組みの広さと骨組みの多さが特徴だが、これこそが時代を飛び越え、59作連続でシングル連続TOP10入りを達成したと要因とも言える。

 幼少期からずっと関西で暮らす筆者としては、毎年1月に開催される『大阪国際女子マラソン』のイメージソングをTHE ALFEEが担当し続けたことも触れておきたい。彼らは1987年から2018年までの31年間、同大会のためにイメージソングを作り続けた。これは「同一国際スポーツ大会のテレビ放送における同一アーティストによる最多テーマソング数」としてギネス世界記録にも認定されている(※3)。1月中旬頃になるとテレビからはTHE ALFEEの曲が何度も、何度も聴こえてきた。そこで「もうすぐ『大阪国際女子マラソン』か」とカレンダーを見て、THE ALFEEの楽曲を聴くのが毎年の恒例だったのだ。

 記憶と記録の両方が深く刻まれている、THE ALFEE。それはひとえに、高見沢、坂崎、桜井の3人が50年間、メンバーチェンジもなく、また解散/再結成などもなく、活動を続けていることにある。映画『THE ALFEE 40th Anniversary Film THE LAST GENESIS 40年の軌跡と奇跡』で語られていたが、活動期間中、3人全員が絶好調なときは少なかったという。それでもずっと続けることができたのは、誰かが不調なときはほかの2人が支えてきたからなのだろう。

 桜井は映画内で「だからこそ40年、やってこれたということ。ほかのバンドでも、ボーカルの人が風邪を引いたり、喉を痛めたらコンサートを飛ばすしかない。そこは俺たち、3人いるから。1人がダメなら2人でなんとかカバーしようっていう。それでもコンサートはできるし。本当に、1人じゃできないなって」と3人で活動している意味について話し、高見沢も「自分が唯一委ねられるのは、あの2人だけだから」と全幅の信頼を寄せていた。

 桜井は映画内で「だからこそ40年、やってこれたということ。ほかのバンドでも、ボーカルの人が風邪を引いたり、喉を痛めたらコンサートを飛ばすしかない。そこは俺たち、3人いるから。1人がダメなら2人でなんとかカバーしようっていう。それでもコンサートはできるし。本当に、1人じゃできないなって」と3人で活動している意味について話し、高見沢も「自分が唯一委ねられるのは、あの2人だけだから」と全幅の信頼を寄せていた。

 偉大な記録の数々は、決して狙って達成したものではないだろう。記録の背景にあるのは、メンバー同士の信頼。それがなければバンドが続くことはなかったはずで、驚異的な記録も生まれなかったのではないだろうか。それに、3人の間にはきっと「この3人でいる限り、THE ALFEEは絶対に終わらない」という確信もあったはず。

 10万人ライブで、1本のマイクに3人が顔を寄せ合い、楽器も鳴らさず自分たちの声で「ROCKDOM -風に吹かれて-」を届けた場面は、その後もずっと3人の関係性が変わらず続くことを示唆していたように思えてならないのだ。

※1:https://realsound.jp/2023/12/post-1531661.html

※2:https://www.oricon.co.jp/news/2399660/full/

※3:https://www.alfee.com/news/info_pop/info_181225.html

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