JASRAC、2025年度上半期事業報告会見 CD分野にみられた上昇傾向、生成AIに対する言及も

JASRAC、2025年度上半期事業報告会見

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が、2025年度上半期事業報告会見を10月22日に都内にあるJASRAC本部にて行った。

 登壇したのは理事長の伊澤一雅氏、常務理事の増田裕一氏、常任理事の露木孝行氏。伊澤氏が統括説明、増田氏が徴収関係、露木氏が分配関係の詳細な報告を担当している。

伊澤一雅理事長
伊澤一雅 理事長
増田裕一 常務理事
増田裕一 常務理事
露木孝行 常任理事
露木孝行 常任理事

 

分配額は上半期としては過去最高 対象作品数は初の300万曲超

 2025年度上半期の音楽使用料徴収額は735.4億円。前年度比は+9.3%、62.6億円の増額となる。JASRACが今期レコード会社から報告を受けているCD出庫総数は4,636万枚で、これは前年の同期比で104.9%、5%ほどの上昇。今期新たに発行された、いわゆる新譜のカタログ数は8,655で、前年の同期間の新譜と比べると107.5%という数値になっている。

 権利者への分配総額は721.3億円で、上半期の分配額としては過去最高となる。また、分配対象作品数は約304万曲となり、上半期としては初めて300万曲を超えた。

 2025年度の年間の徴収の見通しについては、配信/コンサートの分野が牽引する形で下半期についても引き続き前年を上回る使用率の伸びが続くと考えられ、上半期が前年度比+9.3%であったことを見れば、年間の使用料の聴取額としては初の1500億円台に届くと見込んでいると伊澤氏は話す。

生成AIに対する向き合い方、海外展開に向けた取り組み

 さらに、伊澤氏は徴収・分配の話題以外に、クリエイターファーストの立場からJASRACの生成AIに対する向き合い方、日本の音楽の海外展開についてもコメントした。日ごとに高度化、普及が進んでいる生成AI。JASRACの理事会はクリエイター、出版社、学識経験者で構成されており、AIに関する様々な情報を共有し、意見交換をするAIに関する講話会を設けている。「そこでのクリエイター、出版社、学識経験者などとの持ち寄った意見あるいは情報などを、行政やプラットフォーマーとの向き合い方に活かしていきたいと考えています」と伊澤氏は宣言する。

 また、日本の音楽の海外展開に関して、海外からの著作権使用料の徴収は、JASRACが近年最重要事業の一つとして取り組んでいるものと説明。2025年度上半期の外国入金の推移は11.9億円。2020年度上半期比で3倍以上に増加してはいるが、JASRACの徴収額全体から見ると、この数字はまだまだ小さく、伸びしろがあると伊澤氏は捉えている。

 JASRACは、YouTubeなどの動画・音楽配信サービスのコンテンツ情報と著作権管理団体の楽曲情報を共有・交換するプラットフォーム「GDSDX」を2023年にローンチ。配信コンテンツのIDと楽曲を特定する楽曲コードの情報を世界中の管理団体間で共有するための取り組みだ。120余の外国団体と連携しながら、国際間で楽曲データベースや情報を共有し、日本のコンテンツの海外展開をサポートすることを表明しながら、「『MUSIC AWARDS JAPAN』の成功など、音楽業界を挙げて海外への展開の視点が強まっています。こういった中で、JASRACは多面的な取り組みを通じて、音楽クリエイターの海外進出を著作権使用料の還元という形でしっかりと応援していきます」と声明している。

フィジカルCDで徴収実績に伸び 対生成AIで重要視すること

JASRAC 上半期事業報告記者会見

 質疑応答では、徴収実績において、配信やコンサートの分野だけでなく、移行が進んでいると言われるフィジカルCDの分野でもポジティブな動きが見られたことの背景について記者から質問が飛んだ。このことについて増田氏は、JASRAC側のデータで出庫枚数が10万枚を超えるようなヒット作が上半期で46作品あり、昨年に比べて40%ほど増えていると説明。一方、10万枚に満たないヒット作は10%ほど減っており、「CDは特にファンダムビジネスというところで、内外問わずアイドルグループのCDの売り上げがだいぶ伸びているというようなところが内容としてはあると思います」とコメントした。

 この話題について伊澤氏は、CDを買ったことがなかった20〜30代の若年層がCDプレイヤーを購入してまでCDを買っていたり、アメリカにおいてもCDの生産がシュリンク傾向だったものが上がったという情報をレコードメーカーの関係者から聞いていると明かす。一方で、徴収額で見ると案外低下しているのはダウンロード配信であり、ストリーミングは非常に高い角度で伸びていると説明した。

 生成AIは、他人の著作物などを生成AIが享受目的をもって無断利用するなどの著作権者の権利が侵害されるリスクが強く懸念され、このような利用が既成事実化される前に、適切な対応を検討すべきだとされている。さらに、本来著作権者が行使できる権利が無視された状態で、対価が還元されず、AI開発の利益を得る側にだけメリットがある現著作権法は、大きな問題を抱えている。このことについて伊澤氏は、「AIというものを中心に考えるのではなくて、人間中心のAIだというその考え方においては、政府の考え方も私ども、権利者が求めていることもそこに変わりはないと思います」と話す。続けて、「大事なのは学習利用の対価の話ではなく、学習利用というものについての透明性、文化や音楽創作者に対するリスペクトというものをどう考えるのか。その部分について社会とあるいはクリエイターと同じ考え、共感をもってAIに臨んでいただけるのか。それとも文化を根絶やしにしても、AIによる利益追求を求めるものなのか。そのあたりの答えを政府関係者には求めていきたいと思っております。そういった中でJASRACが果たすべき役割というものは何なのか、ということを問われる声がどんどん強まっていると感じております。責任をひしひしと強く感じているところでございます」と意見した。

JASRAC、2024年度の使用料徴収額・分配額は過去最高に 「2025年JASRAC賞」金賞は2年連続「アイドル」

日本音楽著作権協会(JASRAC)が、2025年定例記者会見および2025年JASRAC賞の発表を5月16日に都内にあるJASR…

経済産業省「音楽ビジネス報告書」を深読み アニメタイアップ=海外ヒットという好況への懸念

経済産業省から「音楽産業の新たな時代に即したビジネスモデルの在り方に関する報告書」が発表された。本資料をもとに“日本の音楽の海外…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ニュース」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる