世が世なら!!!は音楽ファンにこそ刺さる? 2nd EP『2025!!!』が実現した“実験精神×普遍性×ユーモア”の共存

J-POPシーンのみならずK-POP界隈をも巻き込んでしのぎを削り合う、近年の国内ボーイズグループシーン。あるグループはダンスの技術やクオリティに焦点を当て活動し、あるグループはビジュアルを含めたコンセプチュアルな見せ方でファンを魅了、またあるグループは国内外で通用するハイセンスな楽曲群でリスナーを熱狂させるなど、個々の強みや個性を発揮させながら群雄割拠のシーンのなかで格闘し続けている。本稿で紹介する世が世なら!!!も、そんな時代に頭ひとつ突き抜けようと日々その魅力を磨き続けているグループのひとつだ。
真面目型おふざけ集団・世が世なら!!!
世が世なら!!!は2021年10月1日、つばさ男子プロダクション設立とともに誕生したボーイズグループ。当初は大谷篤行、橋爪優真、笠松正斗、内藤五胤の4人で活動を始め、その後メンバー自身とスタッフでスカウト活動をし、添田陵輔、中山清太郎が加入して現在の6人編成となる。同年10月から12月にかけてのプレ活動期間を経て、翌2022年8月にデビューシングル『鼓動のFighters』を発表。以降は楽曲リリースと精力的なライブ活動を続けながら、着実にファンベースを拡大し続けている。
“真面目型おふざけ集団”をコンセプトに掲げる彼らだが、こと楽曲制作に対しては「1小節も最後の1音まで妥協しない音楽」をスローガンに、“ラウドロック×トンチキソング”の融合を目指しながら、本格的なバンドサウンドによる良曲を量産し続けている。しかし、“真面目型おふざけ集団”や“トンチキソング”というキーワードがひとり歩きし、その楽曲群に対して正当な評価がなされていないように筆者は感じている。
そんななか、彼らは10月29日に2nd EP『2025!!!』をリリース。「viva☆いー感じっ」や「AIでええ愛」などをはじめ、彼らが今年発表した話題曲がほぼ網羅されている本作を通して、面白いだけでは語りきれない世が世なら!!!の豊かな音楽性を分析してみたい。
多彩かつ高度な音楽性で魅了する『2025!!!』
EPのオープニングを飾るのは、その実験的な作風で反響を呼んだ今年4月配信の「viva☆いー感じっ」。この曲の作詞/作曲/編曲を手がけたのは、自身も清野研太朗名義でシンガーソングライターとして活動する、音楽プロデューサーのけんたあろは。これまでに私立恵比寿中学やでんぱ組.inc、高城れに(ももいろクローバーZ)、THE SUPER FRUIT、麻倉ももなどへの楽曲提供のほか、清野研太朗として発表したTVアニメ『サラリーマンが異世界に行ったら四天王になった話』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマ「異世界協奏曲」が二宮和也にカバーされるなど、非常に注目度の高いアーティストだ。そんなけんたあろはが書き下ろした「viva☆いー感じっ」、一聴するとトンチキソングのように響くかもしれないが、実はこだわりにこだわりを重ねたメロディやアレンジが際立つ、音楽的にも非常に高度な仕上がりであることを忘れてはならない。
この曲のベースにあるのは、聴いているだけで自然と体が動き始めてしまうグルーヴィーなファンクミュージック。本格的なバンドアンサンブルとユーモア溢れる歌詞で聴き手を引き込んでいくのだが、そこに突如〈命がほら消える瞬間〉というシリアスなフレーズとともに飛び込んでくるオペラ調コーラスパートがいいフックとなり、一瞬たりとも聴き手を飽きさせない。コミカルさのなかに潜むシリアスさや真面目さ、ひとつのジャンルにこだわらない実験的な音楽への取り組みは世が世なら!!!、けんたあろは両者に共通する姿勢であり、その両者の魅力が掛け合わさって強力な形で発揮されたのがこの「viva☆いー感じっ」だと言える。
続く「小さな革命」はストレートなロックサウンドに乗せて〈きっと青春は革命の連続だから/戸惑ってる暇はないからさ〉と力強く歌う、世が世なら!!!流メッセージソング。シンプルで心地よいバンドアンサンブルとキャッチーなメロディ、〈今が一番サイコーな俺たち/歳をとることなんか恐れずにいような〉と歌われる普遍性の強い歌詞は、彼らと同世代のリスナーのみならず、その親世代にも響くのではないだろうか。そうした世代を超えて親しまれるであろう楽曲に続くのが、AIに作詞/作曲/編曲させたことで反響を呼んだ「AIでええ愛」(※1)。そのメロディや歌詞、ドライブ感の強いハードロックサウンド含め、とてもAIが作り上げたとは思えないほどキャッチーで、世が世なら!!!らしさもしっかり伝わる質感に、進化したテクノロジーに対する恐怖すら感じてしまうが、そうした話題性を抜きにしてもこの良質な楽曲は幅広いリスナーの琴線に触れるはずだ。
「俺(東京人)でもエエやん!」は再びけんたあろはが作詞/作曲/編曲を手がけた、軽快なポップサウンドとコミカルな歌詞が融合した1曲。90年代以降脈々と続くダンスポップに、ひとクセもふたクセもある流麗なメロディ、一度耳にしたら忘れられないシンガロングパート、そして“東京人”が頑張って駆使する“エセ関西弁”をモチーフにした歌詞と、高度な音楽性のなかにもウィットが効いた作風となっている。
そして、「走ラン歌」はチップチューンサウンドを採用した応援ソング。曲中に挿入される「Fu~ Fu~」といった掛け声や、〈ドンマイ ドンマイ〉や〈オーライ オーライ〉などの合いの手含め、どこか“お祭りソング”的な色合いも含まれているが、曲の主人公をRPGのプレイヤーとリンクさせることで、わかりやすい形で聴き手の背中を優しく押してくれる歌詞は出色の仕上がりだ。最後に、ボーナストラックとして世が世なら!!!の遠い親戚とされる“ノンデリカシーHIPHOP集団” Doppelgänger Männerのデビューラストシングル「元赤ん坊は声上げな!」も追加収録。90年代半のジャパニーズラップ黎明期に耳にしたことがあるようなサウンドやリリックが散りばめられたこの曲も、世が世なら!!!が大切にしている「1小節も最後の1音まで妥協しない音楽」に沿った、非常に凝った楽曲となっている。
以上、2nd EP『2025!!!』に収録された全6曲をざっと解説してみたが、いかがだろうか。本テキストを読むことで、世が世なら!!!が生み出す楽曲たちがいかに音楽的に練り込まれた作りであるか、少しはご理解いただけたのではないだろうか。最新のテクノロジーを取り入れながら果敢に取り組む実験精神や、音や言葉でリスナーをクスリと笑わせるユーモア、そして時代を超えて広く愛される普遍性と、この3つの要素が高次元で混ざり合った楽曲の数々は、実は新たな刺激を求める音楽ファンにこそ刺さるのではないかと、筆者は確信している。音楽に本気で向き合い、ほかの誰にも似ないオリジナリティを確立しつつある世が世なら!!!に、まずはこのEPを通じて触れてみてほしい。
※1:https://realsound.jp/2025/06/post-2067077.html
■リリース情報
2nd EP『2025!!!』
発売中
配信リンク:https://sndo.ffm.to/a2mme91
購入:https://lnkfi.re/hQ8hFUua
レーベル:TSUBASA RECORDS

・初回限定盤(CD1枚+Blu-ray1枚+ブックレット)
価格:¥7,200(税込)
品番:TRAK-0239/0240

・通常盤(CDのみ)
価格:¥2,400(税込)
品番:TRAK-0241
<収録内容>
01. viva☆いー感じっ
02. 小さな革命
03. AIでええ愛
04. 俺(東京人)でもエエやん!
05. 走ラン歌
06. ボーナストラック(元赤ん坊は声上げな!)
■公演情報
『世が世なら!!! COUNTDOWN LIVE 2025→2026 in OSAKA - なんでやねん!!! -』
日程:2025年12月31日(水・祝)
会場:Music Club JANUS(大阪)
時間:開場 22時30分/開演 23時00分
<チケット>
一般発売中
価格:¥5,800(税込)+1drink
購入:ぴあ、ローソン、イープラス
『世が世なら!!! 心底 下剋上、はじめました。 in LINE CUBE SHIBUYA』
日程:2026年2月27日(金)
会場:LINE CUBE SHIBUYA(東京)
時間:開場 17時30分/開演 18時30分
<チケット>
一般発売:2025年12月20日(土)10:00~
価格:¥6,800(税込)
購入:ぴあ、ローソン、イープラス
■関連リンク
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