『山人音楽祭 2025』、刺激と温もりに満ちた第10回 G-FREAK FACTORYと繋がった縁、途切れることなき“クライマックス”

『山人音楽祭 2025』総括レポート

 気づけば夜の帳が下り、終演が近づいていることを知る。名残惜しさを跳ね飛ばし、まだまだ血気盛んなオーディエンスが集まる赤城STAGEにBRAHMANが現れた。結成30周年のムービーが流れ、最新アルバム『viraha』収録の「charon」でスタート。その後、「全力で! BRAHMAN始めます!」というTOSHI-LOW(Vo)の言葉を合図に、アグレッシブなナンバーを間髪入れずに畳みかける。ステージで魂を鳴らすメンバー4人と、そこに食らいつくオーディエンスとの真っ向勝負といった様相だ。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真
BRAHMAN

『山人音楽祭 2025』ライブ写真

 そして、群馬が生んだレジェンド BUCK∞TICKの「ICONOCLASM」カバーを交えたり、「最後の少年」を茂木とともに歌ったりと、BRAHMANらしいスタンスで『山人音楽祭』への愛情を表現していく。生年月日も血液型も同じという茂木に対し、「似たくないけど似てくるんだよ」と笑顔を浮かべるTOSHI-LOW。根本にパンク、レゲエというレベルミュージックーー反抗の音楽があることも共通点だと語り、「俺たちはずっとずっと中指を立ててるんだ」と変わらぬアティテュードを示す。同時に小指を立てて自分自身との約束を守ってきたという想いを込めて、「やりたかったこと、簡単に捨てんじゃねえぞ!」と「順風満帆」を叩きつけた。力強いサウンドとメロディに胸倉を掴まれるような衝撃に震える。TOSHI-LOWが投げ捨てたマイクの残響を置き土産に、G-FREAK FACTORYへのバトンを繋いだ。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真

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 バトンを繋いだのはBRAHMANだけではない。初日から参加したすべてのアーティストの汗が染みこんだバトンを託され、ついにG-FREAK FACTORYが赤城STAGEに立つ。

 静寂から、ギター、ベース、ドラム、キーボードと音を重ね、ゆっくりとG-FREAK FACTORYのグルーヴが生まれていく。そこに茂木が合流し、「お手並み拝見。やるかやらねえか、できるかできねえか……G-FREAK FACTORY始めます。来いよ!」と口火を切って「SOMATO」へ。レゲエのビートで揺らしたあと、そのままパンキッシュな「WHO UNCONTROL」になだれ込む。残った体力を使い果たす勢いのオーディエンスを見渡し、茂木は「ローカルフェスの最高傑作にようこそ」と微笑んだ。「昨日含め、ひとつも問題は届いてねえ。ほんとにありがとうな」と讃え、ピアノと歌で始まるバラード「Parallel Number」を丁寧に贈った。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真
茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)
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原田季征(G-FREAK FACTORY)
『山人音楽祭 2025』ライブ写真
吉橋“yossy”伸之(G-FREAK FACTORY)
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Leo(G-FREAK FACTORY)

 「もう終わっちまうぜ、山人!」と煽った「Too oLD To KNoW」からは、本格的にラストスパートに突入。〈汗は流せ ナミダを流せ でも二度と無駄な血は流すな〉の大合唱が響き渡る。さらに、愛を歌い上げる壮大な「HARVEST」を経て、もはや『山人音楽祭』のテーマソングと言ってもいい「ダディ・ダーリン」では、オーディエンスがスマホライトを掲げるなかTOSHI-LOWが登場。平和について歌う中盤部分が、ふたりで交互に詞を朗読するアレンジになっており、ひときわ切実なメッセージが突き刺さった。そんな感極まるムードを断ち切るように、茂木の壮絶なシャウトが轟く。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真

 準備期間から本番まで絶えずステージ裏を奔走し、メンバーは疲労困憊に違いない。特に数々のゲストボーカルを務めた茂木は満身創痍に見えた。だが、彼は叫ぶ。群馬という土地を、集まった仲間たちを、熱く抱き締めるように叫ぶ。「『山人音楽祭』でみんなの心のなかに少しでも点いた火があったら、その点いた灯、どうか消さないでくれ」と届けた「Fire」では、バンドの音に背中を預けながら、膝をついてマイクを握りしめて叫んでいた。主催者としての覚悟とローカルバンドとしての誇りが脈打つ圧巻のステージだった。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真

 フィナーレとして、『山人音楽祭』の入り口を2日間通して守った高崎だるまへの目入れや、ライブペイントエリアで完成した作品の掲示がステージ上で行われた。それらを感慨深げに見渡し、何度も感謝を告げる茂木。そして、「また遊ぼうぜ!」と約束を交わして「らしくあれと」で祭を締め括った。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真

『山人音楽祭 2025』ライブ写真

 最後の写真撮影で集合した全出演者の表情には、眩しい笑顔が溢れていた。会場を出て帰路につく観客も、出演者に負けないほどの笑顔。全員が、今日の思い出と心に点いた火を道標に、それぞれ別々の人生を歩んでいく。そしてまた、この場所に帰ってくるのだろう。

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