『山人音楽祭 2025』、刺激と温もりに満ちた第10回 G-FREAK FACTORYと繋がった縁、途切れることなき“クライマックス”

『山人音楽祭 2025』総括レポート

 2025年9月20日、21日。G-FREAK FACTORYが主催するロックフェス『山人音楽祭 2025』が開催された。場所はもちろん、彼らの地元である群馬県、日本トーターグリーンドーム前橋。『GUNMA ROCK FESTIVAL』から引き継ぎ、2016年にスタートした『山人音楽祭』は今年10回目の節目を迎える。群馬に拠点を置くローカルバンド・G-FREAK FACTORYが繋いできた縁が結実し、今年もバンドから弾き語り、ラッパーまで、多彩な38組のアーティストが集結した。ライブハウスの熱と地元愛がごちゃ混ぜになって、刺激的でありながら温かくて優しい『山人音楽祭』。最初から最後までクライマックスの連続だった2日目のレポートをお送りする。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真

 ようやく猛暑が落ち着き、秋の気配が漂う会場。初日は雨模様に見舞われたが、2日目は青空が広がる気持ちいいフェス日和のなかで開幕となった。

 NAIKA MCの前説と景気いいフリースタイルラップを皮切りに、トップバッターを務めるバックドロップシンデレラが赤城STAGEに登場した。昨年セカンドステージである榛名STAGEのトリを担った彼らは、初の赤城STAGE出演。姿を現すと同時にアリーナに飛び込んだでんでけあゆみ(Vo)を、オーディエンスが巨大なウォールオブデスで出迎える。1曲目の「バズらせない天才」から歌えや踊れやの狂騒状態となり、「フェスだして」では大合唱。豊島“ペリー来航”渉(Gt/Vo)が「初赤城で伝説を作りたい!」と宣言していた通り、“ウンザウンザ”(「本気でウンザウンザを踊る」「月あかりウンザウンザを踊る」)にG-FREAK FACTORYへの愛情と感謝を添えて、赤城STAGEに深い爪痕を残した。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真
バックドロップシンデレラ

『山人音楽祭 2025』ライブ写真

 バックドロップシンデレラが作り上げたカオスを、『山人音楽祭』常連の四星球がさらに加速させた。リハーサル後にステージ上で着替え始めるというオープニングから、カップリングツアー『ザ・ローカルズ』で見たG-FREAK FACTORYの可愛いところランキング紹介や、茂木洋晃(Vo)と原田季征(Gt)を呼び込んでのAKB48「恋するフォーチュンクッキー」のカバーなどやりたい放題。と同時に、『ザ・ローカルズ』を経て生まれたというエモーショナルな新曲「あんぽんたん」でしっかり心の琴線に触れてくるのがニクい。笑わせて泣かせて笑わせる、四星球の矜持を見せつけた。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真
四星球

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 四星球の北島康雄(Vo)がG-FREAK FACTORYに向けて「10年後も続けてくださいね! みなさん60代になってますけど」と叫んでいたが、60歳の年にして現役バリバリのロックバンドが榛名STAGEに初降臨していた。JUN SKY WALKER(S)である。いきなり「MY GENERATION」を放ち、その後も「歩いていこう」「白いクリスマス」と名曲を惜しみなく披露。拳を突き上げ、大声で歌うオーディエンスとともに、終始前のめりなライブで圧倒した。ロックに年齢制限なんてないのだ。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真
JUN SKY WALKER(S)

『山人音楽祭 2025』ライブ写真

 続く山嵐も、結成30周年を目前にして『山人音楽祭』初出演。凶暴なギターリフとラップが暴れる「PAIN KILLER」や、祭り囃子のリズムを取り入れた新曲「嵐山山」など、鍛え上げたミクスチャーサウンドで榛名STAGEをライブハウスに変えてみせた。もともと榛名STAGEは地下にあり、広いアリーナとは真逆の空気感が魅力。「遠慮なくいつものライブハウスみたいにやっちまえ」というメッセージを感じられる場所だ。

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山嵐

『山人音楽祭 2025』ライブ写真

 一方で、『山人音楽祭』の特徴といえば、ファミリーが多いこと。3階席とアリーナに親子エリアが設けられ、バンドマーチを着こなしたキッズたちがたくさんライブを楽しんでいた。また、会場外の前橋公園で開催されているMAEBASHI PARK PARTYにはチケットがなくても入ることができ、フェス飯の屋台だけでなくキッズ向けのアクティビティが充実。特に、実際の雪で作られたスノーボートエリアは大人気だった。会場内のロビーにも、アパレルの出店のほか、子育て支援のブースや、反戦・平和をテーマとしたアートのワークショップなどが並び、たくさんの親子が参加していた。本気のロックフェスと、子どもたちの笑顔が溢れる地域のお祭り。その両方が共存しているのが『山人音楽祭』であり、G-FREAK FACTORYが目指すものなのだろう。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真

 少しずつ陽が傾き始めた頃、屋外の妙義STAGEでは『山人音楽祭』お馴染みの山人MCバトル×戦極MCバトルの真っ最中。昨年優勝したDOTAMAをはじめ、小学生ラッパー FCザイロスや女性ラッパー RISANOなど多彩な顔ぶれが勢揃いし、観客を審査員として白熱のバトルが展開していく。山々が連なる雄大な景色とラップバトルというギャップが面白いが、これもまた『山人音楽祭』でしか見られないものだ。結果、優勝を果たしたのは2年連続となるDOTAMA。来年は、彼を倒す挑戦者の登場に期待が募る。

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山人MCバトル×戦極MCバトル

 フェスも終盤戦にさしかかる赤城STAGE。ともに「フェス主催者」の顔を持ち合わせるHEY-SMITHと04 Limited Sazabysが、G-FREAK FACTORYへの感謝とリスペクトを音に込めて掻き鳴らしていた。それはすなわち、遠慮なく「今日いちばん」を勝ち取るつもりでやり切ること。両者とも、数々のフェスで“優勝”してきたフェスアンセムを連投し、オーディエンスをまったく休ませない怒濤のライブで駆け抜けた。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真
HEY-SMITH
『山人音楽祭 2025』ライブ写真
04 Limited Sazabys

 「今日いちばん」を目指すバンドは、榛名STAGEにもいる。2018年以降毎年出演している群馬出身バンド・FOMAREだ。「群馬代表!」と宣誓し、「夢から覚めても」でいきなりシンガロングを巻き起こす。今年結成10周年を迎え、誰よりもG-FREAK FACTORYの背中を見てきた彼らのロックは、まっすぐ突き進むエネルギーに満ちている。このフェスに客として参加していた時からの夢に向かい、まだまだ止まらない意志を『山人音楽祭 2025』に刻みつけた。のちに茂木がMCで「『山人音楽祭』の動員の約6割は群馬県民」と明かしていたが、いつかこの日の観客のなかから、FOMAREのような次世代の群馬代表バンドが生まれるかもしれない。

『山人音楽祭 2025』ライブ写真
FOMARE

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