『VOCAROCK PARTY!』開催記念対談 Vol.2:みきとP×てにをは×伊根、ボカロシーンの今と絆を語り合う!

ボカロカルチャーは「みんなにとって都合のいい場所であり続けてくれる」
――ボカロ音楽やボカロカルチャーの魅力は何だと思いますか?
てにをは:聴き手も作り手も、ファジーで曖昧な立ち位置でいられるところですね。昨日まで聴き手だったけど明日から作り手になれる、その免許のいらない感じが魅力だと思います。大人としても聴けるし作れるし、子供としても聴けるし作れる。子供の脳も大人の脳も満たせる感じがいいと思います。やろうと思えば兼業だったらいくらでも自由にやっていい。下世話な気持ちで入ってもいいし、純粋にやってもいい。その自由な感じがいいなと思います。
伊根:僕はまさにその感じに助けられたところがありますね。ずっと聴き手側で作り手側になると決意したわけでもないのに、気づいたら作り手側としても受け入れてくれていた。ボカロ文化はそれぞれの距離感で受け入れてくれる感じが魅力です。ほっといてくれもするし、無視もされない。いい意味でみんなにとって都合のいい場所であり続けてくれる。
みきとP:そこにずっと誰かがいるのがいいと思っていて。常に世代交代もあるし、なくなりようがない文化ですよね。きっと伊根くんの音楽を聴いた世代がまた入ってくるし、それを聴く世代が次にまた入ってくる。常に誰かが何かを作り続けていて、なくならないのがいいのかなと思います。
――みなさんはお互いの作品にどんな印象を持っていますか?
みきとP:伊根くんは理系の印象ですね。
伊根:まさにそうです(笑)。
みきとP:でも曲にある仄暗さは自分ともシンパシーを感じていて、そういう意味では僕の楽曲の上位互換だと思っています。
伊根:それは恐縮すぎます。
みきとP:てにさんは自分の持っているものを時代やトレンドに融合させる天才だと思っていて。たとえばAdoさんに提供した楽曲もそうですけど、てにさんの中に昔からあるものだったり、てにさんらしさをちゃんと曲にしている。てにさんの色がしっかりあるんだけど、新鮮味があって古くない。それってトレンドをしっかり押さえているからだと思うので、その融合がめっちゃ上手だなっていつも思っています。僕もそういうことは意識するので、そういう意味でも僕の曲の上位互換ですね。
全員:(笑)。
――影響を受けることはありますか?
みきとP:突き放す意味ではなく、てにさんからはないですね。てにさんはてにさんの音楽だと思うから。伊根くんはブレイクとかちょっとしたギミックが面白かったりするので、ちょっとパクろうかなと。
一同:(笑)。
みきとP:でもそこだけパクってもかっこよくなかったりするので、やっぱり流れがあるんだろうなと思います。
てにをは:伊根くんの印象は“SF感”だと思っているんです。自分はSFが大好きなんですけど、伊根くんの音楽は音にSFが宿っていると思うことがあります。曲のタイトな感じもそうだし、全体的に達者だなと思いつつ、いい意味でのプラスチックさもある。でも、ギターのサウンドのそのシャープな中に、血の巡りもある。そのバランスのよさを感じますね。
伊根:すごく嬉しいです。ありがとうございます。
てにをは:みきとさんはボカロ界の細野晴臣だと思っていて。このまま職人気質で、かつ思考停止せず、常に悩みながら、でも周りにはそう悟らせない人であってほしいですね。あと、みきとさんはガレージ的サウンドの中から何かを発掘しようとしてる感じを勝手に汲み取っていて、今みんなが蔑ろにしているところからみきとさんが見つけてくる音の中に「もしかしたらブレイクスルーがあるのかも」と、これまた勝手に期待を寄せてます。
みきとP:がんばります!
――てにをはさんは伊根さんやみきとPさんから刺激を受けることはありますか?
てにをは:伊根くんはちゃんと丁寧に作っているなと音から感じるんです。「ここはいい加減でもいいか」ってなりそうなところもきっちり作っている。なので自分もまだまだやりようがあるんだろうなと思いますね。みきとさんからは、逆にそのアナログ感とか数値化できないところのグリッドと関係ない感じに気持ちよさを感じます。自分はバンドを通っていないので、そこの揺れを信じ切れていない面もあって、パッションで揺らいでいきたい時もあるのに、中々みきとさんのようにはできない。
みきとP:西沢さん(TOKOTOKO)の曲を聴くとすごく丁寧にギターを弾いていると思って、自分も一時期すごいグリッディに作っていた時がありました。
てにをは:たしかに。
みきとP:もともとはルーズが格好いいと思ってやっていたけど、一時期ピタッと合わせてやるようになった。けど、最近またルーズに戻そうとしています。DTMもみんなお上手だし、逆に揺らいだギターを聴く機会も減っている気がしていて、その揺らぎ感はあえて意識しているかもしれないですね。
――伊根さんから2人はどう見えていますか?
伊根:てにをはさんは僕が聴いた第一印象だと、有機的で人格を感じます。それが押し付けられている感じでもなく、洗練されていてすごいバランスだなと。音はかっちりしてるのにすごく有機的な感じで、さっき「全部出し切ってから腹八分目を探るスタンス」とおっしゃっていたのが意外でした。そういうところも含めて職人的な雰囲気は感じていたかもしれないです。みきとさんはサービス精神旺盛なのに、すごく実験もされている印象です。それこそ音の揺らぎもそうですけど、色々と試されていつつ僕ら聴き手も楽しませてくれる気さくな印象を持っています。

















