はるかぜに告ぐ とんず、KANA-BOONやRADWIMPSらに目覚めた青春時代 邦ロック好き芸人がトゲナシトゲアリに受けた衝撃

はるかぜに告ぐ とんず、トゲトゲを初視聴

人生観に影響を与えたクリープハイプとGalileo Galilei

はるかぜに告ぐ とんず

ーー道中でどんどん仲間を増やしていくタイプですね(笑)。ご自身の価値観や人生観に影響を与えたバンドや楽曲はありますか?

とんず:クリープハイプとGalileo Galileiですね。この2組は結構両極端に感じていて。クリープハイプは泥臭くて生々しいじゃないですか。出会った当時中高生だった自分からすると、ちょっと年上のフリーターのバンドマンの曲という感じがして。でも、将来を考えた時に「あるな、この人生」って思ったんです。6畳一間の生活もアリやし、夢を追いかける人間の生々しさに感銘を受けたというか。こういう人もおるっていう安心感。クリープハイプが色んな曲を出すほど、6畳一間の人間の世界が広がっていく感じがして、自分の人生観も勝手に広がったところがあります。

 逆にGalileo Galileiは表現がすごく美しい。曲も綺麗で、旅行に近い感覚というか、聴いてると「うわ、自分って感性豊かやな」って思える(笑)。無理に自分を曲に当てはめて涙したり、頑張らなあかんってならんでいい。一人でバスに乗ってる時みたいに、ぼーっとしてる時間に彩りを与えてくれる音楽でしたね。

ーー自分の中で、特別な楽曲があれば教えてください。

とんず:たくさんありますけど……まずはKANA-BOONの「かけぬけて」。受験の時にめっちゃ聴いてて、今でも頑張らなあかん時に聴きたくなります。最近、よしもと漫才劇場のバトルライブで負けてしまって、オーディションからやり直しになったんですけど、その時も聴いて「もう一回エンジンかけ直さな」ってなりました。3回ネタバトルライブで勝ったら劇場に戻れるシステムで、売れてるとか売れてないは関係なく評価されるので、劇場って結構シビアな世界なんです。

 それとRADWIMPSの「ドリーマーズ・ハイ」は、初めて行ったライブのオープニング曲だったんで、自分の中の「殿堂入りオープニング曲」ですね。歌い出しの歌詞が〈勇敢な僕たちは〉なんで、これを聴けば勇敢な自分の1日が始まるわけですよ。

 最近の曲だと、Age Factoryの「SONGS」も特別です。うちら(はるかぜに告ぐ)は芸歴1年目から売れてしまって、必死に仕事こなしていたなかで、ゲロ吐きそうなくらいスベった日があったんですよね。でも、その日はAgeのライブがあったので、「もう別にスベってもええわ」みたいな気持ちでひらひらってライブに行って、この曲を聴いたらめっちゃ涙が出てきたんですよね。そこで「あ、私、悔しかったんや」って気づかされた。今もまだ3年目やけど、もっと生々しいところの初心を思い出させてくれる曲です。

 あとはやっぱり、出囃子で使わせてもらってるofuloverの「サイトジャックラブ」。この曲は賞レース前には絶対に聴きますし、それがルーティン化しつつあります。自分が主役みたいな感じの歌詞なので、この曲を聴いて「おら、今日はうちらが主役じゃボケ!」くらいの気持ちになれるんですよ(笑)。

ーー戦う人の応援歌みたいなラインナップですね。

とんず:そうですね。とにかく頑張らなあかんし、自分の感情を押し殺したくないんで、音楽で発散させてもらってます。嬉しい時も悔しい時も、音楽が相棒みたいな存在なんですよね。だから、相棒からはネチネチ言われるより、元気に声をかけてほしい感じです。

お笑いとバンドの違い「どれだけネタを書いても印税は入らない」

はるかぜに告ぐ とんず

ーーとんずさんは、メンバー全員が吉本芸人のオルタナティブロックバンド・フェンスのギターボーカルとして、今年4月よりバンド活動を始めました。もともと自分でバンドをやることに興味はあったのですか?

とんず:高校、大学と軽音楽部で楽器には触れていたんですけど、周りに自分より上手い人が山ほどいて、「これは勝てないから、やるべきじゃないな」と思ってたんですよ。バンドって、ステージにポッと放り出された時に60~70点くらいできる人間じゃないとダメというイメージがあって。それってお笑いで言うと、全く未経験でネタを書いて合わせてパッと出されてもそこそこできる人間なんですよね。そんなん自分はようやらんって感じやったんですけど、よしもとミュージックさんから「芸人バンドやってみない?」って声をかけていただいて、「本気の遊び」をやる意気込みで始めました。

ーーメンバーは軍艦の仁さん(Gt/Vo)と梅野さん(Gt)、ピン芸人のでるさん(Ba)とやましたさん(Dr)の5人。楽曲は軍艦のお二人が制作しています。

とんず:この中だとやましたさんが一番芸歴が上で、他も1~5年目くらいの近い世代なんで、もともとライブで一緒になったりしていたんですよ。軍艦さんは2人ともバンド経験者なので、私が声をかけたら「俺らシューゲイザーしかできんで」って言われたんですけど(笑)、お笑い芸人のバンドでそのジャンルはおらんし、私もきのこ帝国とか好きで聴いてたので、おもしろいかなと思って。一応、加減をしてくれたうえでいい曲を作ってくれるので、みんな「全然いいやん」って感じでやってます。

ーーバンドの始動から間もない4月14日には、同じく芸人バンドのWARTとRunny Noizeによる対バンライブ『ウォート対ラニーノイズ』に出演。6月には初音源となる1st EP『ショートケーキ』をリリースしました。実際にバンドをやってみての感触はいかがですか?

とんず:メンバーが決まって動き出したのが去年の夏ぐらいで、最初は知識がなさすぎて、レコーディングに1カ月かかるとか知らなくて、想定よりも2〜3カ月遅れたんですよ。(アーティスト)写真も撮ってなかったし(笑)。でも、その時にメンバーが全然イライラしなくて、すごくいい空気やなって思いました。

 お笑い業界って楽しい界隈ではあるんですけど、賞レースとかバトルが多くて結構ピリピリしてるんですよね。うちら(はるかぜに告ぐ)も劇場のバトルライブが2カ月に一度あるし、「M-1グランプリ」に「THE W」「キングオブコント」、他にもテレビ局とかYouTubeの企画とかを含めると、シーズンオフなしでずっと戦ってるんです。でも、バンドには「M-1」みたいに獲ったら人生が変わるような固定の賞レースがない。だから普段の空気とは違う活動ができて、すごく憩いの場になってます。そういう意味では草野球チームに近いかも。10月からは賞レースが始まるんで一旦お笑いに集中して、その間に曲作れたらなっていう感じで、焦らずマイペースにやってます。

ーーお笑いとバンド活動で、違いや共通点を感じることはありますか?

とんず:お笑いはスベったとしてもアドリブでごまかせたり、お客さんの前でやりながらネタを練っていくんですけど、音楽は練習がより大切で、ライブで実力がもろに出るし、音楽って完成したものを出すからごまかしが効かない。そこが難しいですね。その場で歌詞とか変えたくなったらみんなどうするんやろう? と思って。あと、音楽は曲を書いたら印税が入るけど、私がどれだけネタを書いても印税は入らない(笑)。それに音楽は名曲の場合、やればやるほど喜ばれるけど、うちらは同じネタをやればやるほど飽きられるので、そこは厳しいですね。

 共通してるのは、作品に自分の感性が出るっていうところと、「一緒に楽しもうぜ」っていう感覚ですね。お笑いも音楽も人を楽しませてなんぼやと思うので。自分も人を楽しませたいというか、一緒に楽しみたいっていうマインドはずっとあるので、そこは変わらないです。

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