トゲナシトゲアリ×ダイヤモンドダスト、高め合う2バンドが激突した『ガールズバンドクライ』2周年記念ライブ

『ガールズバンドクライ』2周年ライブレポ

 ティザービジュアルとともに『ガールズバンドクライ』プロジェクトが情報解禁されたのが2023年4月24日のこと。あれから2年を経た現在、テレビアニメは好評を博し劇場版総集編の公開も2025年10月に控えており、同作から誕生したロックバンド・トゲナシトゲアリも着実にライブ活動を続け、9月23日には待望の日本武道館公演『奏檄の叫』を行う。

 そんな『ガールズバンドクライ』プロジェクト始動2周年を祝福するべく、4月27日に東京・Kanadevia Hall(旧・TOKYO DOME CITY HALL)にて『「ガールズバンドクライ」2nd Anniversary LIVE』が開催された。本公演開催に際して公開されたメインビジュアルには、トゲナシトゲアリのほか劇中ライバルバンド・ダイヤモンドダストの姿も描かれており、ライブ当日は2組の対バンになることがアナウンスされていた。アニメ本編では因縁の関係にあったトゲナシトゲアリとダイヤモンドダストがリアルのステージで、一体どんな絡みを見せるのだろう……そんな期待を胸に、筆者は会場へと足を運んだ。

 定刻が過ぎた頃、会場が暗転するとスクリーンにはアニメの名場面を詰め込んだオープニングムービーが流れ出す。続いて、ステージにはトゲナシトゲアリの理名(Vo/井芹仁菜役)、夕莉(Gt/河原木桃香役)、朱李(Ba/ルパ役)が登場し、この日のライブが間違いなく“特別な夜”になることを告げる。そして、理名の合図とともにステージ前方に紗幕が下されると、サポートメンバー2名を迎えたトゲナシトゲアリは「雑踏、僕らの街」からライブをスタート。紗幕にアニメのオープニング映像が投影される演出と相まって、フロアのオーディエンスの熱気は一気に加速する。定期的にライブ活動を行なっていることもあってか、1年前の初披露から幾度となく演奏されてきた「雑踏、僕らの街」は極上のグルーヴ感を伴って観る者を圧倒。音源にはなかったハーモニーが追加されるなど、ライブを重ねる中で進化を遂げていることも伝わり、トゲナシトゲアリがアニメから生まれたバンドという枠を飛び越え、現在進行形のライブバンドとして日々成長し続けているのだと実感させられた。

 スピード感の強いテクニカルな演奏と派手なレーザー演出の相乗効果で観客をノックアウトする「極私的極彩色アンサー」、夕莉&朱李によるステージ上でのアクション含めバンドとしての鉄壁さを提示する「理想的パラドクスとは」、理名が背中を向けて左手小指を高く掲げる姿も印象的な「傷つき傷つけ痛くて辛い」など、ライブ序盤はアニメ放送前から耳にしてきた楽曲群が続く。曲によってはスクリーンにキャラクターを用いた映像が使用されるものの、このブロックでは“リアルロックバンド”トゲナシトゲアリの等身大の姿が強調されているように映った。

 そんな空気が一変したのは、理名がMCで「アニメ第5話で仁菜があのへん(と客席を指差し)でダイダス(ダイヤモンドダスト)のライブを観ていたんですよね」とこの日のライブ会場について触れたあたりからだろう。「ここからはもっともっと、(アニメの)ストーリーに入り込んでライブを進めていこうと思います」の言葉に続いて披露されたのは、『ガールズバンドクライ』とトゲナシトゲアリにとっての“はじまりのうた”である「名もなき何もかも」。ステージ後方のスクリーンにはアニメ内で同曲が初披露された第7話の映像も投影され、ステージ上のリアルなパフォーマンスとシンクロしていく。続く「空の箱」では冒頭で夕莉による弾き語りバージョンもフィーチャーされ、アニメ第1話での仁菜と桃香の邂逅を再現。「声なき魚」ではアニメ第3話での“新川崎(仮)”初ステージを追体験させるなど、昨年9月開催の2ndワンマンライブ『凛音の理』(※1)を彷彿とさせるステージが展開されていった。

 メンバーがステージから一度捌けると、スクリーンにアニメ第5話でTOKYO DOME CITY HALLの前で会話する仁菜と安和すばるの映像が映し出される。この演出に客席からどよめきの声が上がると、映像はそのままダイヤモンドダストのライブシーンへと続き、オーディエンスの期待を煽っていく。すると、ステージ上にはダイヤモンドダストの衣装を身に纏った近藤玲奈(Vo/ヒナ役)、松岡美里(Ba/ナナ役)、漆山ゆうき(Gt/リン役)、宮白桃子(Dr/アイ役)が登場。4人はアニメ第5話とリンクする形で「ETERNAL FLAME〜空の箱〜」を披露し、フロアはさらなる熱気に包まれていく。トゲナシトゲアリが影や陰を投影させているとするならば、今目の前でパフォーマンスするダイヤモンドダストはまさに陽を具現化したような存在であり、眩しすぎるほどのオーラで会場を照らし続けた。

 そんなステージを目にして、筆者はあることに気付く。2ndワンマンライブではトゲナシトゲアリの成長譚を追体験する形で表現されたが、特に仁菜と桃香の葛藤や成長を描く際に欠かせないのがダイヤモンドダストという存在であり、『ガールズバンドクライ』2周年という大きな節目だからこそ彼女たちをリアルライブの場に引き込むことができたわけだ。それにより、トゲナシトゲアリというバンドの誕生と成長に特化した2ndワンマンライブから一歩踏み込んで、仁菜とヒナ、桃香とダイヤモンドダストの関係にスポットを当てることも可能になる……つまり、今回の『「ガールズバンドクライ」2nd Anniversary LIVE』は『ガールズバンドクライ』というコンテンツの2周年を祝福すると同時に、トゲナシトゲアリの2ndワンマンライブの延長線という意味も持ち合わせているのではないかと、個人的に腑に落ちるものがあった。

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