乃木坂46、“神宮の夏”はなぜこんなにも特別なのか――10年の歴史に刻んだグループの誇り、未来への約束

『真夏の全国ツアー2025』神宮公演詳細レポ

「ここにいるみんなが主役です」――座長・賀喜遥香が涙ぐむ瞬間も

 ライブ中盤では、先に触れたテーマを軸にしたセットリストを展開。最終日は6期生の海邉朱莉、鈴木佑捺、森平麗心による「君の名は希望」からスタートするのだが、シンプルなピアノ伴奏のみで歌唱する3人の歌声はとてもデビューから1年未満とは思えないほどに堂々としたものだった。一人ひとりのソロパートはもちろんのこと、3人の声が重なりあった時の力強さ、そして終盤で聴かせる絶妙なハーモニーは先輩メンバーにも匹敵するものがあり、彼女たちが乃木坂46の未来を牽引する日も近い……そう予感させる瞬間が多々あったことを特筆しておきたい。なお、前日の公演ではこの3人以外の6期生7人による「命は美しい」が披露されており、瀬戸口を中心に迫力あるダンスをたっぷり見せてくれた。

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

 曲のエンディングではセンターに立つ森平が頭上に王冠を乗せるようなアクションを見せるのだが、これはオープニングで披露された「君に叱られた」でセンターの賀喜が見せるポーズのひとつ。このポーズは以降の楽曲でも引き継がれており、本ツアーのテーマである「メンバー全員がヒロイン」ともリンクしていることが伝わる。田村真佑をはじめとするメンバーが力強い歌とダンスを見せる「錆びたコンパス」、コミカルさと可愛らしさに全振りした弓木、岡本姫奈、冨里奈央による「ぼっち党」、小川を中心に筒井あやめ、五百城茉央、菅原咲月が息の合った歌声を聴かせる「ボーダー」、遠藤を筆頭に梅澤や池田瑛紗が大人の色気を漂わせる「ごめんねFingers crossed」、久保史緒里と井上、中西が持ち前の歌唱力を遺憾なく発揮させる「ひと夏の長さより…」といった新旧の名曲や隠れた人気曲を矢継ぎ早に披露。

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

 そして「Sing Out!」では再びメンバーが勢揃いし、センターの賀喜を中心にクラップで一体感を作り上げていく。終盤、賀喜が「ここにいるみんなが主役です。だから最後は一緒に歌いましょう!」と涙ながらに呼びかける場面もあり、会場が温かな空気に包まれる中「メンバー全員がヒロイン」ブロックは締めくくられた。

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

 神宮4日間だけでもこのブロックは毎日大幅に変更が加えられ、日によっては同じ楽曲でもセンターを務めるメンバーが変わっていたりと、まさに個々に見どころがたっぷり用意されていた。地方公演を含めると、このブロックでは3〜5期生の全メンバーがセンターに経ち、過去に実践された全員センター企画を踏襲するような形で「メンバー全員がヒロイン」として輝くことに。6期生からセンターに立ったのは神宮での「命は美しい」「君の名は希望」での瀬戸口と森平のみだったが、さまざまな曲に出演して爪痕を残す場面もあっただけに、ここからさらに個々の魅力を磨いていき、来年こそは小津を含む11人それぞれがセンターに立つことを願ってやまない。

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

 ライブ後半戦に向けて会場のテンションを一気に上昇させたのが、神宮公演が今年で10回目となることを記念して制作された「真夏日よ」。事前に公開されていたコール動画に沿って、曲中では観客がメンバーの名前を次々にコールしていくのだが、この曲が始まるタイミングに神宮上空に総数1,100機のドローンが登場し、コールとシンクロしてメンバーの名前が描き出されるというかつてない演出が用意された。このほかにも乃木坂46のロゴや「乃木坂46 10th JINGU」の文字、会場にちなんだ野球のボールなども描かれ、大きな節目にふさわしい演出に会場の盛り上がりは急加速していく。

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

 以降は「Monopoly」や「ありがちな恋愛」を筆頭に、人気楽曲の連発で客席の熱気は高まり続けるばかり。本編ラスト曲「Same numbers」の前には座長の賀喜が、毎公演その時に感じたことを述べる時間が用意されているのだが、この日はツアーを通して悩み続けながらも、メンバーやスタッフ、ファンの笑顔を見るにつれて「(この夏掲げた目標を)少しは達成できたのかな」と感じるようになったことを口にする。

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

 『真夏の全国ツアー2022』で初めてツアーの座長を務めた際、多少の心細さを見せた賀喜だったが、今やあの頃の彼女の姿はどこにもなく、目の前には逞しく成長した立派な“乃木坂46のセンター”の姿があった。だからだろうか、「Same numbers」で見せる凛々しい表情やパフォーマンスには今まで以上に心奪われるものがあった――そう感じたのは、きっと筆者だけではなかったはずだ。だからこそ、アンコールでも観客の熱気が一度も下がることなく、予定外のWアンコールに繋がったのだろう。と同時に、そのWアンコールに選ばれた楽曲が「君に叱られた」だったのも、「メンバー全員がヒロイン」というツアーテーマに沿ったものであることも納得いくものだった。

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

 2014年8月に第1回目を開催した乃木坂46の明治神宮野球場公演。以降の10年(2020年、2021年を除く)で合計28公演(2014年:1公演、2015年:2公演、2016年:3公演、2017年:2公演、2018年:秩父宮ラグビー場との同時開催で3公演、2019年:3公演、2022年:3公演、2023年:4公演、2024年:3公演、2025年:4公演)を行なっているが、これは同会場でのコンサート開催数1位という圧倒的な記録となっている。その神宮も、来年2026年に設立100周年という大きなアニバーサリーを迎える。キャプテンの梅澤は公演終盤、「今の私たちの強みは、メンバーみんなが乃木坂46に向ける愛情の強さ。みんなが乃木坂46を愛してここで頑張っているから、乃木坂46らしさが生まれるんだと思いました。私たちは私たちなりの表現の仕方で、これからもファンの皆さまを幸せにしていきたいです。そして、また来年もみんなでここでお祝いしたいです。神宮11回目に必ず繋いでいけるように頑張ります!」と高らかに宣言したが、結成14周年を超えてもなお伸び代を感じさせる今の彼女たちなら、来年も、そしてその先も眩しいくらいの“神宮の夏”を見せてくれるはずだと信じている。

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

『真夏の全国ツアー2025』(撮影=鈴木健太(KENTA Inc.))

※1:https://realsound.jp/2023/08/post-1417540_2.html
※2:https://www.thefirsttimes.jp/report/0000479764/
※3:https://realsound.jp/2025/05/post-2033350.html

■セットリスト
『真夏の全国ツアー2025』
2025年9月7日 明治神宮野球場

00. Overture
01. 君に叱られた
02. ジコチューで行こう!
03. 裸足でSummer
04. ガールズルール
05. 好きというのはロックだぜ!
06. ネーブルオレンジ
07. なぜ 僕たちは走るのか?
08. ってかさ
09. 不道徳な夏
10. 君の名は希望
11. 錆びたコンパス
12. ぼっち党
13. あんなに好きだったのに…
14. ボーダー
15. ごめんねFingers crossed
16. ひと夏の長さより…
17. Sing Out!
18. 真夏日よ
19. Monopoly
20. ありがちな恋愛
21. 制服のマネキン
22. Actually...
23. 夏のFree&Easy
24. おひとりさま天国
25. I see...
26. Same numbers
アンコール
EN1. チートデイ
EN2. 他人のそら似
EN3. ジャンピングジョーカーフラッシュ
EN4. 乃木坂の詩
Wアンコール
WEN1. 君に叱られた

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