木村拓哉、“声”の仕事が人々の記憶に残るのはなぜ? 蒼井優との対話から伝わる俳優としての覚悟

 木村拓哉がパーソナリティを務めるラジオ『木村拓哉 Flow』(TOKYO FM)に、8月のマンスリーゲストとして俳優の蒼井優が登場した。今年11月21日公開の山田洋次監督映画『TOKYOタクシー』でキャスト欄に名を連ねている2人。しかし、今作で蒼井が演じたのは現代を生きる、倍賞千恵子演じる「すみれ」の過去パートであったことから、撮影現場を共にすることはなかったとのこと。だが、撮影中に催されたという監督や共演者たちとの食事会を通じて意気投合した様子がうかがえた。

 木村と蒼井は、2010年にもアニメ映画『REDLINE』で共演。だが、そのときもアフレコの現場は別々だったそう。なかなか直接芝居を交わすことが叶わない2人だが、それでも木村は蒼井の「声」の演技に、「なんてヤツだ」と「一瞬でエンジンに点火された」という経験があると振り返った。

 『REDLINE』では蒼井が先にアフレコを行い、その声に合わせて演じたという木村。「最初は『蒼井優ちゃんの声』というインフォメーションがなかったら、プロの声優さんが(ガイドとして)録ったものなんだろうなと思い込んで作業を続けていた」と、その声が蒼井のものだと瞬時に気づかないほどの仕上がりだったそう。蒼井の声優としての仕事が「あまりにもエグくて」と衝撃を受け、「自分の中で『お前、もう一度ふんどし締め直してやれよ』という感じで本番に挑んだのを覚えています」と明かした。 そう絶賛する木村に、蒼井は「いやー、優しい。全然そんなことないんですけど」と少々謙遜しながらも、「声優のお仕事って実写だと絶対オファーが来ない役もいただける」と声の仕事ならではの醍醐味を語り始めた。

 『REDLINE』で蒼井が演じたソノシー・マクラーレンは、「ん~、もう!」というセリフが似合うキュートでハツラツとした女の子。当時の蒼井は“陰なキャラクター”のオファーが多かったことから、「私のどの作品のどの声を聞いてお話いただいたんだろう?」と驚きを隠せなかったようだ。それでも「思いっきりやろう」と挑んだキャラクターだったという。

 この思いきりの良さと、その世界を楽しむ姿勢が「声優・蒼井優」の大きな魅力だ。8月31日放送回では「声のお仕事って、自分の中で楽しかったりします?」と木村に問いかけられるやいなや「アニメって声だけで空飛べるじゃないですか! あれがすごい楽しくて」と声を弾ませる。

 いきなり「空を飛ぶ」という想定外のシチュエーションが出てきたことに面を食らった木村が「いやいや、そこ?」と思わず笑ってしまうが、蒼井の「声優さんのお仕事って『世界が飛べる』」「パッて全然違うところに連れてっていただける」という熱く語る言葉に、つながるものがあったようで「ああ、そういうね!」と次第に納得していった。

 木村も、声優界のレジェンドである野沢雅子や池田秀一を例に、様々なキャラクターの“声”が瞬時にその作品へといざなってくれる重要な役割を果たしているのだと熱弁。同時に「自分がその立場になる」ということに実写で映ってなにかを表現する以上に覚悟を強く持つこと。そして、蒼井が話していたように声優を本業にしている人たちがいるなかで、声をかけてもらったことに感謝しながら「お邪魔します」「失礼します!」という心持ちで挑んでいるのだと続けた。

【木村さ〜〜ん!】木村拓哉「実家」へ帰る

 振り返ってみれば、木村もこれまで様々なアニメキャラクターに「声」で命を吹き込んできた。なかでも、『ハウルの動く城』のハウルは多くの人々の記憶に残っていることだろう。木村の公式YouTubeチャンネルで今年1月に更新された動画『【木村さ〜〜ん!】木村拓哉「実家」へ帰る』では、ジブリパークでサラッとハウルの声を再現して視聴者を喜ばせたことも記憶に新しい。ハウルを演じたのは今から20年以上も前の作品にもかかわらず、今もセリフを覚えているところもまた、彼がどれほどの覚悟でこの作品に挑んだのかを想像させる。

 蒼井とのトークの中では、山田洋次監督の現場で「すべてが理解で覆われた瞬間に、初めて『本番』になる」という独特な話で盛り上がる場面も。贅沢に時間を使って1カットを撮る。「作品に対する、スタッフ、キャストの愛情というのが全部映画に滲み出る」という蒼井の言葉をきっかけに「ああ、『艶』ね。あの言葉は、自分も聞いていてズドーンとボディーブローのように効きましたね」と木村のテンションが上がる。 もともと持っていた俳優としての並々ならぬ覚悟。そこへ魂を震わせるほど響いた、1カットごとにかける愛情やそこから生まれる「艶」について、蒼井と盛り上がる様子に聞いているこちらまでワクワクした。この2人が実写でも、そして「声」でも、ぜひ直接芝居で対峙しているところが見たくなった。

 どうやら食事会では、山田監督から木村に「すごい情けない役やってほしい」という話があったという。そこに倍賞が「こういうのはいかがですか?」とアイデアを出し、さらに蒼井が「女房役に私が行きます!」と手を挙げたそうだ。そんな贅沢な作品がぜひ実現してほしいものだ。

矢沢永吉、稲葉浩志、木村拓哉はなぜ憧れの存在でいられるのか 3人のスターの意外な共通点

矢沢永吉、稲葉浩志、木村拓哉の共通点を紐解く。

木村拓哉、人生初の家系ラーメンに大興奮「これはぶっ飛ぶぞ」 厚木家店長も唸る上級者の食べっぷりを披露

木村拓哉が、自身のYouTubeチャンネルに「【木村さ〜〜ん!】はじめてシリーズ 木村拓哉「家系ラーメン」へ行く!」を8月16日…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる