米津玄師「1991」、羊文学「1999」、MAN WITH A MISSION「1997」、andymori「1984」……“西暦ソング”の特別な意味

 10月10日公開の実写映画『秒速5センチメートル』の主題歌を、米津玄師が担当することが発表された。楽曲タイトルは「1991」。米津と映画の監督を務める奥山由之が互いに西暦1991年生まれであること、そしてその年号が映画のキーワードでもあることからこのタイトルがつけられたのだという。

 公開されている予告映像では、美しいピアノの音色に切ない歌声が重なる楽曲の一部を聴くことができる。米津は同曲について、「わたしの半生を振り返るような曲」(※1)とコメントしていた。全貌はまだ明らかになっていないが、米津自身と結びつきの深い楽曲になっているのではないだろうか。

劇場用実写映画『秒速5センチメートル』予告2|主題歌 米津玄師「1991」【10月10日(金)公開】

 こうした西暦をタイトルにした楽曲は、過去にも数々存在してきた。たとえば、羊文学の「1999」は、サビにも〈それは世紀末のクリスマスイブ〉とあるように1999年を表した楽曲である。浮遊感のあるサウンドは、美しくもどこか儚い。歌詞も〈ぼくはどうしたらいい?〉という問いかけに始まり、〈誰もが愛したこの街は/知らない神様が変えてしまう〉と、自分ではどうすることもできない運命への戸惑いが垣間見える。1999年といえば、人類滅亡を示唆するような予言が駆け巡るなど、2000年を前にした不安と期待が入り交じっていた年。さらにクリスマスとなると、その年が終わるまで残り1週間というタイミングだ。そんな混沌とした時代を見つめた一曲なのだろう。

羊文学 "1999" (Official Music Video)

 MAN WITH A MISSIONの「1997」は、その名の通り1997年を意味している。〈Hi-Standard rocking on the stage to Stay Gold〉と歌詞にあるが、1997年はHi-STANDARDが中心となって企画されたフェス『AIR JAM』が初開催された年だ。ほかにも〈Husking Bee was there for me, I’m walking〉〈Rock of Truth goes on with Super Stupid〉と、同フェス初開催時に出演したHUSKING BEE、SUPER STUPIDの名前がそれぞれの楽曲名を交えながら歌われている。『AIR JAM』は、MAN WITH A MISSIONが音楽を始めるきっかけになったフェスだ。ライブの光景をそのまま描いたような歌詞、疾走感のあるバンドサウンドからは、彼らがライブで得た興奮、衝動が伝わってくる。そして、この曲が発表されていることこそが、当時のことを忘れずに音楽を続けるという宣言にも思えるのだ。

 andymoriの「1984」は、〈1984 花に囲まれて生まれた〉という歌詞からも分かるように、小山田壮平(Vo/Gt)が生まれた1984年を意味している。この曲で特に印象的なのは、何度も繰り返される〈ファンファーレと熱狂 赤い太陽 5時のサイレン 6時の一番星〉のフレーズだ。夕方5時や6時というと外で遊んでいた子どもたちが家に帰り始める時間で、そこから少年時代を描いた楽曲なのだと想像できる。ノスタルジックなメロディも相まって、子どもの頃のまぶしかった世界に思いを馳せるような一曲だ。

 Omoinotakeが2017年にリリースしたアルバム『So far』には、「1992」という楽曲が収録されている。1992年は、メンバー3人が生まれた年だ。サビでは〈1992 言葉はもう/rainy rainy season 要らない/kiss me kiss me, take me faraway/踊るslowly slowly 明かり落として〉と歌われており、同じく自身の生まれ年を表している楽曲でも、andymoriの「1984」のように過去を振り返るような描写は曲中にない。だが、「1992」という数字がタイトルとして、そして歌詞にも刻まれることで、自分がここに存在することを示すような意味にも聴こえてくる。そんなふうに“自分自身の物語”という付加価値が生まれることも、生まれ年が楽曲に使われる面白さだろう。

 こうした西暦ソングには、アーティストのパーソナルな物語や、その時代の空気が閉じ込められているとも言える。数字だけの一見シンプルなタイトルだからこそ、その奥深さを味わえる楽しみがあるのだ。

※1:https://reissuerecords.net/2025/08/21/1991_5cm/

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