PSYの“びしょ濡れライブ”からK-POPアニメ映画の旋風まで――韓国トレンドレポート 2025年7月号

 K-POPや韓国ドラマにとどまらず、2025年の韓国カルチャーはアート、ファッション、フード、ストリートまで多彩な分野を横断し、グローバルでの存在感をさらに強めている。この連載では音楽・ファッション・食が交差する“いま”の韓国を毎月スナップしていく。

 6月の動きを追う7月号では、『イカゲーム』(Netflix)完結編のフィナーレや、アニメ映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(Netflix)のグローバルヒット、PSYによるびしょ濡れライブ『싸이흠뻑쇼 SUMMERSWAG 2025』の熱狂的な盛り上がり、伝説的HIPHOPオーディション番組『SHOW ME THE MONEY』(Mnet)の復活決定、そしてaespaとキッズアニメ『キャッチ!ティニピン』(KBS/キッズステーション/TOKYO MXほか)の異色コラボレーションまで、注目の5トピックを通して2025年6月の韓国カルチャー最前線を読み解く。

『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』、全世界のK-POPファンを魅了

“Golden” Official Lyric Video | KPop Demon Hunters | Sony Animation

 アニメ映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』が、6月20日の公開以降、世界的な注目を集めている。K-POPガールグループを題材とした本作は、配信直後にNetflix上で圧倒的な人気を誇り、8月には史上最も視聴された映画作品となった。

また、8月23~24日には北米でシングアロング版の限定劇場公開が行われ、週刊興収ランキングで首位を獲得。Netflixオリジナル映画として初めて全米興行収入1位を達成した。サウンドトラックもSpotifyグローバルチャート上位を独占するなど大きな話題を呼び、その熱狂はさらに拡大。OSTからは「Golden」を含む4曲が米ビルボードHot 100のTOP10入りを果たし、そのうち「Golden」は1位を獲得した。1作品のOSTから4曲がTOP10入りするのはビルボード史上初の快挙である。

 主人公は、魔法の力でファンを悪魔から守る“デーモンハンター”という裏の顔を持つ、スタジアム級の人気を誇るK-POPグループ・HUNTR/X。彼女たちは、ボーイグループに偽装した悪魔・Saja Boysと、壮絶なパフォーマンスバトルを繰り広げる。本作には、韓国の伝統文化とK-POPカルチャーへの深いリスペクトが随所に盛り込まれている。OSTにはTEDDYをはじめとするK-POP界のトッププロデューサーが参加し、TWICEも歌唱で参加。声優にはイ・ビョンホン、キム・ユンジンなど韓国の実力派俳優が名を連ね、キャラクターデザインや舞台演出にも現実のK-POPや韓国ドラマを思わせる意匠が数多く見られる。作中に登場する動物キャラクターも、韓国の伝統的な民画をモチーフに創作されたという。

 韓国内でも、「K-POPの歴史や韓国文化への深い理解と愛情が感じられる」と絶賛されており、街並みの描写や人々の服装、登場する料理など細部へのこだわりにも驚きの声が上がっている。映画とサウンドトラックの人気が広がる中、K-POP第1世代を代表するS.E.S.のBADAをはじめ、IVE、RIIZE、NMIXXといった現実のK-POPアーティストたちが、劇中の楽曲をカバーしたり、ダンスチャレンジ動画を投稿する現象も相次いでいる。

PSYの「フムポクショー」、今年も韓国の夏をずぶ濡れに

ROSÉ & PSY - APT. (live from 싸이흠뻑쇼 SUMMERSWAG 2025)

 PSYの『흠뻑쇼』=『フムポクショー』は、韓国の夏を代表するコンサートシリーズだ。“フムポク”とは日本語で“びしょ濡れ”を意味し、その名の通り、観客全員が全身ずぶ濡れになって盛り上がる、まさに“水の祭典”である。このショーは、街頭でのサッカーW杯応援イベントに着想を得て、PSYが2011年に初開催。以降、毎年夏に全国ツアーとして定着してきた。放水砲やスプリンクラー、シャワーがフル稼働する中、火柱や花火が交差する圧巻の演出は、“伝説の夏ライブ”とも称されている。

 2025年は、6月28〜29日の仁川公演を皮切りに、全国9カ所全16公演にて開催。SNSでは国内外からイベントに参加するための“『フムポクショー』遠征”が話題となった。初日にはBLACKPINKのROSÉ、2日目にはBIGBANGのG-DRAGONがサプライズ登場し、観客を熱狂させた。CL、JANNABI、ソン・シギョンなども各地でゲスト出演し、世代やジャンルを超えた盛り上がりを見せている。

 毎回万単位の観客がスタジアムに集結し、水と炎が交差するフィナーレで幕を閉じるその光景は、今や韓国の夏を象徴する“風物詩”となっている。音楽と演出、そして観客の熱気が一体となったこの特別な体験は、K-POPライブの枠を超え、韓国ならではの季節行事として文化的な存在感を放っている。

『イカゲーム』、世界的ヒットシリーズがついに完結

Squid Game: Season 3 | Official Trailer | Netflix

 大ヒット韓国ドラマ『イカゲーム』が、ついにシーズン3で完結を迎えた。2021年に配信されたシーズン1は、当時のNetflix史上最多視聴数を記録し、アメリカ「エミー賞」をはじめとするアワードでは、非英語作品として初の主要賞受賞を果たした。最終章となる今シーズンでは、衝撃的な結末が話題を呼んでいる。

 ソウルでは大規模な没入型展示やファンイベントが開催され、世界各国でも同時試写会が行われるなど、“最大級の話題作”にふさわしい盛り上がりを見せた。配信直後にはアメリカ、日本、フランス、ブラジルなど93カ国でNetflixランキング1位を記録し、グローバルな関心の高さをあらためて証明した。一方で、衝撃的なラストやシリーズ完結編としての構成をめぐっては、ファンの間でも賛否が分かれている。

 中でも特に注目を集めたのは、エンディング間際に登場したケイト・ブランシェットのサプライズカメオ出演だ。彼女はアメリカ地域の新たな“リクルーター”として現れ、物語の続編を予感させた。この演出をきっかけに、Netflixが開発中とされるアメリカ版『イカゲーム』への期待が再燃している。現時点で公式発表はないものの、 Netflixはこれまでにリアリティ番組やゲームなど多様な形で『イカゲーム』IPを展開してきただけに、国際的なヒットIPを今後も活用していくのではないかとの見方が強い。 今後の展開に大きな注目が集まっている。

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