HAN-KUN、もうひとつの名前“VOICE MAGICIAN”の本当の意味を探す旅――SKY-HIとの共鳴、原点回帰を語る

HAN-KUN、『VOICE MAGICIAN VI』を語る

夏に恋した人の歌、レゲエ愛の爆発――今向き合う直感的な音楽

――1曲目の「Intro 〜THE SIXTH SENSE〜」から2曲目の「Burn It Up」に突入していく流れが気持ちいいです。

HAN-KUN:この2曲はワンセットで作りました。2曲まとめて1曲みたいなイメージですね。

――「Intro 〜THE SIXTH SENSE〜」に入っているパーカッションを聴くと野生の血が騒ぎます。

HAN-KUN:トレンドを意識したいというのもあったので、モチーフとしたのはアマピアノです。『THE SIXTH SENSE』からの連想で“人間の故郷”を想像したんですけど、俺たちがやってるレゲエの考え方で言うと、「人類の発祥はアフリカにある」というものがあるんですよね。ブラックミュージックのルーツもアフリカだし、アマピアノをモチーフにするのは全部が繋がる感じがしました。

――大昔の音楽の遺伝子は、現代まで受け継がれていますよね。

HAN-KUN:アフロビーツから派生したアマピアノで、アフロビーツはアフロとレゲエのダンスホールをフュージョンした形で生まれたし、最近は自分も好きでアマピアノを好きで聴いていたんですよね。こういうのも、今の自分の感覚、「やりたいな」という純粋な直感に従っています。アルバムの最後の「Goodbye」もアマピアノで。もともと好きな音楽はレゲエ、ダンスホール、トラップダンスホールとかなんだけど、最近日常的に聴いていたのはアマピアノ。今の俺が好きな音楽で包み込んでるアルバムなので、「現在の自分をパッケージしているんだよ」って、こっそり添えている感じですね。

――HAN-KUNさんのレゲエに対する愛情もさまざまな曲から伝わってきます。「Reggae Vibes feat. J-REXXX, APOLLO, 775 & Youth of Roots」は、参加している全員のレゲエ愛ですね。

HAN-KUN:JIM BEAMの「OPEN MIC」というYouTubeの企画でラバダブセッション、一発録りのフリースタイル合戦みたいなのをやらせてもらったんですけど、その時に集まってくれたみんなの想いを歌にして、記録に残したかったんです。それで、あらためて声をかけて参加してもらったのがこの曲です。ああいう企画は普段レゲエを聴かない人たちにも音楽が届くチャンスでもあるので、いろんな曲を聴いてもらったり、ライブにきてもらえるきっかけにもなってほしいんです。そういう想いの根本にある「レゲエが好き」という気持ちをシンプルに届けたいと思っていました。

HAN-KUN「Reggae Vibes feat. J-REXXX, APOLLO, 775 & Youth of Roots」Music Video

――レゲエの本場ではない日本でレゲエをやることへの想いが表れているのも印象的です。

HAN-KUN:ジャマイカ人がやっているレゲエをそのまんま表現したかったら、ジャマイカに行って現地で活動してやっていくのがいちばん間違いない形なんです(笑)。でも、日本で頑張ってる人たちもいて、俺もそういう人たちをリスペクトしてるし、今後も頑張り続けてほしいし、一緒に日本にレゲエを広めていきたいんです。そして、日本でも世界発信できるようになっていけたらすごく理想的だなと。プエルトリコでレゲエがレゲトンになったり、アフロとダンスホールでアフロビーツになったりしてきたじゃないですか。そういうことが日本でもあってもいいと思うんです。

――日本ならではのミクチャ―?

HAN-KUN:はい。日本のみんなが“レゲエ”として聴かなくても全然いいんです。いつか新しいジャンルとして根付いて認識してもらえる時代がきたら、どんな呼び名でも構わない。J-POPだってロックと歌謡曲の融合だったりもしますし、レゲエもそうなっていく道を俺たちが作って、それを次の時代に渡していきたいと思っています。

――さまざまな要素を取り入れながらサウンドのテイストを広げ続けているJ-POPって、すごく面白いですよね。

HAN-KUN:音楽以外でも、日本のミクスチャーは世界に誇るべきものがあると思います。J-POPだって、世界に対しても誇れる音楽ですもんね。アニソンも曲の構成がとんでもなかったりしますし。あんなの、世界中がびっくりしますよ(笑)。

――今回のアルバムも、レゲエの魅力を幅広いリスナーに自然な形で伝えられる作品だと思います。たとえば「Linky Dem」は、オーセンティックなレゲエをポップスとして楽しめます。

HAN-KUN:オーセンティックレゲエは、やっぱりアルバムのなかで触っておきたかったんです。これはジャマイカのバンドマンにお願いして、現地で演奏してもらったものを送ってもらって、そこに歌を乗せました。今ジャマイカに滞在している友達がいて、その日本人のミックスエンジニアにお願いしてレコーディングを進めてもらったんです。

――ラブソングもすごくいいですね。「夏のメロディー」は、おそらく片思いであろう男性の姿が浮かびます。

HAN-KUN:夏に恋した人の話です。夏はすぐにいなくなっちゃうし、終わる頃は寂しいですからね。

――この主人公の恋は実らないでしょうね。

HAN-KUN:実ってないですね、夏はどこかに行っちゃうので(笑)。「夏は終わったよ」とまわりに言われてるのに、意地でも半袖短パンでいる感じ。

HAN-KUN「夏のメロディー」Music Video

――叙情的なメロディが気持ちいいです。

HAN-KUN:自分の音楽性を振り返ると、どの曲も「メッセージを残そう」「引っかかりを作って、聴いてくれる人に何かを残さなきゃ」という想いで歌を書いている節があるんですけど、「夏のメロディー」は珍しいんですよ。「引っかかりがない」「聴き流せる」と言うと語弊があるかもしれないですけど、「心地好く聴ける」ということに特化した曲です。歌詞が届きやすいように間を大切にしていて、他の曲と比べても言葉を減らしています。ちゃんと歌詞を追いながら聴いてもらえると、夏に対する切ない片思いみたいな部分がイメージできるし、聴いてくれる人それぞれの恋愛にも当てはめてもらえたら嬉しいです。

――ロックステディ風味もありつつ、ポップスに仕上がっている印象です。

HAN-KUN:ここにもオーセンティックレゲエをブレンドしています。みんなが聴きやすい感じでありつつも「実はレゲエだった」ということを形にできました。

――ご自身の曲を通してレゲエを幅広い人たちに広めたいというのは、音楽活動のキャリアのなかでずっと抱いてきた想いですか?

HAN-KUN:はい。でも、やり方は年々変わってきていると思います。今の自分が昔の自分を振り返ると、すごく押し売りをしてたのを感じて。熱さもよさとしてとらえてくれたら嬉しいけど、熱すぎてうるさいと思われがちだったのかもなあ、とか。だから、何気なく並んで座ってる時に流れてた曲がレゲエで、「今日は楽しかった。ありがとう。流れてる音楽もよかった」って言われて、「実はこれレゲエでさ」くらい感じになれたらいいなあと思うようになりました。

――「君となら・・・ feat. RYOJI」も、そういう感じで聴けると思います。

HAN-KUN:これは完全にポップスだと思います。RYOJIくんがプロデュースしてくれることになったので、「彼の音楽性のなかで自分がどういうふうに楽しみながら歌詞に落とし込んでいけるのか?」って。自分がRYOJIくんの作品に客演として参加しているくらいの感覚で作って、その曲を世のなかに出すのは不思議な感覚です。こういうのは今までにやったことがなかったので、やってみたかったんです。

――個人的に〈いまだに仲間にもその衝撃を/正直に言えぬまま/なのは“シー”〉が、すごく好きです。〈シー〉って、あまり使う機会がない言葉だったので、新鮮でした。

HAN-KUN:言葉にしない言葉が音になって伝わるのは音楽の楽しみ、音の楽しみだなと思うんです。この〈シー〉もノリで出てきたので大切にしたくて。〈シー〉で尺を結構使っちゃってるんですけどね(笑)。

HAN-KUN「君となら・・・ feat. RYOJI」Music Video

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