故・西尾芳彦氏は「人生に音楽の道を与えてくれた」 家入レオ、苦楽を共に過ごした恩師との思い出

『レコード大賞』受賞時には「私のことを私以上に信じてくださっていた」

 その甲斐あって、デビューした2012年の『第54回 輝く!日本レコード大賞』(TBS系)で、家入は最優秀新人賞を受賞する。

「西尾先生はストイックな方だから、活動の中で大きい何かが決まったとしても、もう次を目指しているようなところがあるんですけど。『レコード大賞』で最優秀新人賞をいただいたときは、私より喜んでくれていましたね。楽屋でもずっと『よかったな〜!』って嬉しそうにしていらっしゃって。私がまだ事務所もレコード会社も決まってないときから『絶対いいものを持ってる』と、私のことを私以上に信じてくださっていたんです」

 家入はその後、キャリアを重ね、さまざまな作家やミュージシャンと楽曲を手がけたり、セルフプロデュースも行うようになった。それでも「もしこの曲を街中で西尾先生が耳にすることがあったら、なんて言うだろう。やっぱり『頑張ってるな』と思ってもらいたい」とふと西尾氏の顔が頭をよぎるという。音楽を志した道のりで、かけがえのない恩師と出会えたことを彼女はこれからも忘れることはない。

「夜中まで2人でスタジオで制作していて、『もう何も浮かばない!』ってなると西尾先生がいきなりニコッと笑い出すんです。『どうしたんですか?』って聞いたら、『こういうときにこそ、音楽の神様が絶対見てるんだよ』って。『音楽の神様』という言葉がすごく好きな方でもありました。何か迷うことがあっても、1日1日ちゃんとやることをやって音楽を作っていたら、それだけでいいんだなって思えたのも西尾先生を見てきたから。先生はどんな状況でも常に音楽の分析をしていたし、体調が悪くても、亡くなる直前まで曲作りをしていたそうです。そういう音楽への一途さや姿勢には教わることしかなかったですね。

 もちろん、お互いに不器用な人間ですし、これほど喜怒哀楽を互いにぶつけ合うなんて、血が繋がっていてもなかなか難しいことだと思うんです。もう常にゼロの距離感で『私はこんなふうに歌いたい!』とか『これじゃない!』とか本気でやり合ったことも数え切れないほどでした。あまりお会いできていない時期もありましたが、それでも亡くなる少し前にも『たまには顔見せにおいで』と連絡をくださって。ずっと私の活動を見てくれているんだなと思ったし、西尾先生が亡くなった今も、その存在を感じています。私の人生に音楽の道を与えてくれた西尾先生に、本当に感謝しています」

 音楽の神様を信じた故・西尾芳彦氏の想いは、これからも家入をはじめ多くのミュージシャンが音楽にして届け続けてくれることだろう。

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