PassCode「やめるっていう選択肢はなかった」 コロナ禍での体制変更、さらなる高みを目指す覚悟

「仕事の中でレコーディングが一番ってぐらいに好き」(有馬)

ーーそんな11月開催の横浜BUNTAI公演に向けて、久しぶりにリリースされるオリジナルアルバム『INSIGNIA』。ライブ映えする曲がずらりと並ぶ力作に仕上がりましたが、制作にあたって皆さんの中ではどんな作品にしたいと考えましたか?
南:今回の『INSIGNIA』に関しては、ファンの方が主役になれる曲が欲しいなとずっと思っていて。PassCodeのライブはいろんな楽しみ方がある中で、じゃあ何がファンの人たちが一番主役になれる瞬間なのかと考えたときに、みんなで声を出すっていう誰でも参加できる手法こそがそれなんじゃないかと思ったんです。それで、サビでシンガロングできる曲が欲しいという話を平地さん(サウンドプロデューサーの平地孝次)に話して、そういう曲をたくさん作っていただいて、そこから「せっかくだからファンのみんなから声を集めてCDに録音しよう」という話になって完成したのが1曲目の「DESTINEX」。そういう従来の“らしさ”に加えて、有馬が初めてPassCodeで作詞作曲してくれた「A certain Motor-Heart is not working right!」とか、グループの歴史を感じさせつつも「まだまだ新しいことにもチャレンジするよ」という、PassCodeの今を全部感じてもらえるようなアルバムになったかなと思います。
ーー有馬さんにとってはPassCode加入後初めてのフルアルバムですが、制作に臨む際に考えたことって何かありましたか?
有馬:アルバムに入る新曲が6曲あるということで、レコーディングまみれになるなと(笑)。私、いろんな仕事の中でレコーディングが一番ってぐらいに好きなんです。
南:レコーディング好きなんや!
有馬:好き。どれだけ時間を“まける”かに命をかけるくらいに(笑)。
南:そっちが楽しみなんや(笑)。
ーーアルバムは新曲6曲に既存曲6曲というバランスですが、全体を通して起承転結がはっきりとした構成になっていると思いました。ここでは新録曲中心にお話を伺っていきますが、まずはアルバムの幕開けを飾るリード曲「DESTINEX」について。この曲は横浜BUNTAI公演のライブタイトルにも用いられていますし、これからのPassCodeにとって重要な楽曲になりそうな印象があります。
南:「ザ・PassCode!」って感じがする曲ですよね。
大上:「DESTINEX」というタイトルは「運命(=Destiny)」と「その先(=Next)」を掛け合わせた造語なんですけど、それもあってかラストサビにある〈僕らが世界中で繋いでく / 淀みない願いと閃きを〉というフレーズを読むと「世界中にPassCodeをつないでいくぞ」みたいな意思が伝わってきて。そういう強い思いが込められた曲をアルバムの1曲目に持ってくるってところに、これが新しい始まりになるのかなと感じました。この曲が先行配信されたあと、ファンの方も「PassCodeのこの先が楽しみになってきた!」とSNSに書いてくれていたので、私たちの思いが伝わっているんだなと思いました。
高嶋:PassCodeはここまで10数年続いていて、すでに安定していると思われているかもしれないですけど、メンバー的にはもっと高みを目指したいという思いを抱えてもがいていて。その思いがこの曲の中で強く表現されているので、ファンの人もこれを聴いて「俺たちもついていくぞ!」って気持ちになってほしいですね。
ーーオープニングに相応しい王道ナンバーに続いて、2曲目は「MIRAGE WALKER」。ミドルヘヴィなサウンドの中でシャウトする冒頭で、一気に心掴まれました。
有馬:嬉しい。実はこの曲、南と高嶋もシャウトで掛け合いをしていて。
南:そうなんです。初めてレコーディングでシャウトに挑戦しました。平地さんが「まだやったことのない新しいことって、10年も続けていたらなかなかないよなって思ったけど、まだあったわ」と言ったので、「え、なんですか?」って聞いたら私に「シャウトがあるわ」と言って。確かにやったことがないことだったから、ちょっと面白そうだなと思ってチャレンジしたんですけど、〈Chains out〉から始まる中盤のたたみかけるパートで「有馬→南→高嶋→有馬→南→高嶋」みたいな流れでやっています。
ーー個人的にこの曲、大好物でした。
南:本当ですか? どのへんが好きですか?
ーーサウンドの質感や歌やシャウトはもちろんですけど、ミドルヘヴィな序盤からテンポアップする構成や楽器隊のちょっとしたフレーズなど、好みの要素が多い1曲なんです。
南:嬉しい。楽器の音の聴こえ方が今までとはちょっと変わっていると言っていたので、平地さんに伝えたらすごく喜んでもらえると思います。
ーー有馬さん、この曲はいかがでしょう。
有馬:シャウトに関しては、私はいつも重心高めなんですけど、この曲は結構重心低めでやっていて。そこがポイントです。
ーーオープニングとエンディングでのシャウトの気持ち良さは、ちょっと格別ですもんね。
有馬:そうですね。私、結構破裂音が得意なんですよ。だから〈Break〉とか〈Blaze〉みたいなフレーズがたくさん入っていてよかったです。
南:しかも滑舌がいいというか。普通に言うだけでも難しいのに、ちゃんとリズムにハメて滑舌よくシャウトできるってすごいんじゃない?

ーー確かに。既存曲の「SKILLAWAKE」を挟み、4曲目は「VIRIVIRI」。これはかなり新鮮な1曲ですね。
南:「VIRIVIRI」は、「このアルバムはこの曲をリリースするために作ったぐらい気合いが入っている」と平地さんが言っていたくらいで。
有馬:サビの歌メロの後ろでイントロのメロディが鳴っているという回収の仕方をしていて、それが構成としてめっちゃ綺麗やから、私はこの曲がめちゃくちゃ好きで。平地さんがこれを出すためにアルバムを作ったと言っているのも、理解できます。
南:しかもこんなにがっつり4つ打ちの曲って、PassCodeではありそうでなかったからね。問答無用でノリやすいので、ライブでめっちゃ映えそうやなって思います。フェスとかイベントで披露しても、PassCodeのことを知らない人にも刺さるんじゃないかな。
ーー中盤に配置された「One Time Only」で、アルバムの空気が変わり始めます。
南:サウンドやメロディだけで聴くと「爽やかなタイプのPassCodeだ」って感じると思うんですけど、私は最初に聴いて……ライブで披露したときにサビでめっちゃ盛り上がっている光景が浮かんできて。たぶん音源で聴いたときとライブで聴いたときに、一番変化を感じる曲になるんじゃないかなと思っています。
大上:ラストサビの〈この日々は / もう戻れない もう戻れないんだ〉とか、めちゃくちゃ共感できるんですよね。このタイトルもそうですけど、〈もう戻れない〉って進んでいるからこそ言えるというか。きっと〈あの日々にもう戻れない〉だったらただ過去を振り返っているだけだけど、〈この日々はもう戻れない〉だと前向きに受け取れるじゃないですか。今も前に向けて進んでいるからこそこういう解釈ができると思うので、すごく大好きなフレーズです。
南:実はこの曲、もともと「Chase your style」というタイトルだったんです。歌詞の最後にあるフレーズから用いたものなんですけど、この曲で一番伝えたいのは「これが自分たちのスタイルだぜ」ということよりも、陽奈子が言った「この日々を大事にしよう」っていうことなのかなという話になって、今の「One Time Only」に落ち着いたんです。



















