Conton Candy、PompadollS、Chevon……SNSで広がるライブバンドの熱 現場の活性化にもつながる新たな潮流
Spotify「バイラルトップ50(日本)」のTOP10の楽曲を紹介する「バイラルチャート分析」の記事(※1)を2020年6月から隔週で執筆している中で、コロナ禍以降のチャートアクションにおいて、注目したい特徴がある。新人バンドの拡散の仕方だ。SNSのバズからヒットにつながった後、ライブでも動員を伸ばしていくバンドが定期的に出てくるようになったのだ。筆者は、インディーズシーンを応援するプラットフォーム『Eggs』で、1年弱に渡り複数のインディーズバンドに取材をする機会に恵まれたが、活動するにあたり、SNSで知ってもらいライブに来てもらう、だからSNSも頑張りたい……という意味の発言をするバンドが多くいた。また、バンド漫画・アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の影響で、その聖地となるライブハウスの動員が増えているという話も聞いている。SNSでのバズを通過点として、結果的にバンドの本懐であるライブの活性化へとつながっているのだとすれば、この潮流は日本の音楽シーンにとっての光明ともいえるだろう。
本稿ではSNSを自分たちの武器のひとつにして、今、ライブシーンを沸かすバンドをピックアップし、その魅力を考察していきたい。
バイラルヒットの波を逃さずライブの魅力を伝えたバンドたち
まず、楽曲のバイラルヒットからライブ動員数を伸ばしていくパターンのバンドをよく見かけるようになったのは、2023年の春頃からだ。同年3月~8月にかけて、Conton Candy「ファジーネーブル」、チョーキューメイ「貴方の恋人になりたい」、トンボコープ「Now is the best!!!」、シャイトープ「ランデヴー」、Fish and Lips「会いたくなったら」などが、軒並みバイラルチャートの上位にランクイン。Conton Candy、シャイトープ、トンボコープはメジャーデビューに至っている。
Conton Candyは、2022年から自主企画イベント、2023年からは東名阪を中心とした全国ツアーを開催するなど、リリースとライブを両軸に活動しているバンドだ。チョーキューメイも、結成以降、確実にライブを重ねてきたバンドである。彼らがバズを起こした時には、すでにライブバンドとしての実力が備わっていたのだ。それゆえ、バイラルチャートでバズを起こしている時期に、TikTokなどを中心にリリックを入れ込んだライブ動画を頻繁にアップしていったことも、後のライブ動員に大きく影響していると考える。ライブ映像そのままではなく、リリース音源を重ねたライブ動画をアップしたことで、鑑賞者が集中して視覚的にライブをインプットできたことも大きいだろう。また、ヒットの要因として特筆しておきたいのが、楽曲にキャッチーなタイトルがうまく組み込まれていることである。Conton Candyはサビの頭に、チョーキューメイはサビ前のフックに楽曲タイトルを持ってきている。短いフレーズが繰り返されるパートは強烈なパンチラインとなっていて、一聴してそのメロディを覚えられることに加え、中毒性も高い。それらの楽曲は、ライブにおいても強力なパワーを放つキラーチューンとして親しまれている。
@contoncandy_official ライブで聴いて欲しい!!!🍑🍊 #ContonCandy #ファジーネーブル #邦ロック #邦ロック好きと繋がりたい #ライブハウス #ライブバンド #スリーピース #newmusic #恋
SNSできっかけを掴む唯一無二のオーラを持つバンドも
2024年以降は、SNSからの“きっかけ”が変化・多様化してきていると思う。PompadollS、Chevon、NELKEをピックアップしてさらに考察していきたい。
PompadollSは2024年12月に「悪食」がデイリーバイラルチャートにランクイン。12月23日に首位を獲得すると、以降3日連続で1位をキープしている。「除夜の鐘」や「お正月」など年末年始の定番曲が恒例で同チャートの上位に入ってくる中、年明けも4位にランクインするなど圧倒的な強さをみせた。このバンドもTikTokのライブ&リリック動画が拡散され、バイラルチャートにランクインしてきたパターンであるが、童話をモチーフにし現代を風刺した歌詞、メンバーの演奏スキル、ダイナミックなサウンドが世代を超えて支持されたことは、ヒットの大きな要因のひとつだと考えられる。
@pompadolls PompadollS-悪食
Chevonは、一度観たら忘れられないパフォーマンスの実力がライブハウスシーンで評価を集め、観客がTikTokやInstagramなどの公式ライブ映像を拡散していったことにより、SNSで存在感を高めたバンドである。このブームに呼応するように、「冥冥」の全国29ラジオ局での2024年7月度パワープレイ、全国6カ所ワンマンツアーの完売と、着実にリスナーを獲得していった彼らであるが、一気にその知名度をあげたのは、2024年に香取慎吾とのコラボ楽曲を発表したことだろう。香取からアプローチを受けてリリースした楽曲「Circus Funk(feat. Chevon)」は香取が主演を務めたテレビドラマ『日本一の最低男※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系/2025年1月期に放送)の主題歌に起用。音楽番組で披露した同曲のコラボパフォーマンスをきっかけに、彼らの存在感が再びSNSを賑わせることとなった。さらに2025年4月には東京スカパラダイスオーケストラの“VS”シリーズに登場。「私たちのカノン(VS.Chevon)」をリリースしている。これまで幾多のアーティストやときに役者とまでコラボレーションをし、名曲を残してきた東京スカパラダイスオーケストラだが、メジャーデビュー前のアーティストとコラボレーションするのは珍しい。
@chevon4472 感情、愛もないよ最期なんだ 冥冥 / Chevon #Chevon #シェボン #冥冥 #邦ロック #LIVE #MERRYROCKPARADE
最後は3月にバンド初の全国ツアー『NELKE ONEMAN LIVE TOUR 2025-2026“Diary”』を発表したNELKEについて触れたい。NELKEは、元々シンガーソングライターとして活躍していたRIRIKO(Vo/Gt)が結成したバンドであるゆえ、SNSでもある程度の地盤があったと思うが、ライブシーンで頭角を現し、観客がその正体をdigる際に本人たちのSNSに辿り着くというパターンで着実にフォロワー数を伸ばしてきたと考える。その数はTikTokだけでも本稿既出のバンドの中で最大だ。今やSNSや音楽配信サブスクリプションサービスは、確実にファンにリーチするという意味では、情報発信以外にバンドの媒体としての役割も担いつつあるように思う。そんな彼らの全国ツアーは全国11カ所全11公演にて行われ、ツアーファイナルは2026年1月14日Zepp DiverCity(TOKYO)。過去にLIQUIDROOMでのワンマンもソールドアウトさせており、ライブ規模はインディーズとしては突出している。間違いなくこのバンドの実力の証明である。
@ririkoriri 「また会おう」で乗り切るLINEがいくつもある。#RIRIKO #オリジナル曲 #花図鑑 #作詞作曲 #fyp #おすすめにのりたい #ライブ映像 #バンド
バズの先にある、確かなライブバンドとしての熱と実力
本稿でピックアップしたバンドに共通するのは、リリースとライブというバンドとしてあるべき布石を着実に刻んできたことだ。本人たちのSNSにライブ&リリック動画、もしくはリリック動画をしっかり投稿しているところも類似している。この投稿が媒体の意味を果たし、バンドの魅力を伝えたことは確かだが、なによりもSNSの先にあるライブという実態が、バズやSNSを凌駕する熱量を放っていたこと、さらに曲のよさ、演奏スキル、ボーカル力、そしてフックのある歌詞が揃っていたからこそ、リスナーの注目が持続し、ネクストブレイク候補になっていったのだと思う。現に彼らはバイラルヒットを起こした時点で、すでにライブ活動をしっかり展開していた。これにより、リスナーが曲を知り、バンドの存在を認知した後、すぐにライブに足を運べる……という導線が確立されていたのだ。
ここまで紹介してきたバンドたちには、コロナ禍で思った通りに活動できない、ライブができない期間があったという点も共通している。活動の制限をされた時にSNSを駆使し、制限が解除されて待望のライブを叶えた。このストーリーがあるからこそ、彼らは記述したような、SNSとライブという、最初は乖離していた要素をうまくつなげる最適解を見出すことができたのだ。
最適解はひとつじゃない。バンドによって違うだろう。これからどんどん新しい最適解が出てくるのでないか、そしてそれが邦楽ライブシーンの次なる展開につながるのではないか。そう考えると、これからのライブシーンに期待せずにはいられない。
※1:https://realsound.jp/tag/viral-chart-focus



























