BEGIN、ニューアルバム『太陽』で紐解かれた“島唄への葛藤” 「涙そうそう」と「島人ぬ宝」の制作秘話も

35周年に改めて“島唄”と向き合った理由
――「ワイキキシェル」は加山雄三さんへの提供曲のセルフカバーです。加山雄三さんに関しては、かつて『ビギンの一五一会 58ドライブ』で、「お嫁においで」をカバーしていたこともあります。この曲を作った経緯、カバーした経緯を教えてください。

比嘉:最初のとっかかりは等でした。
上地:「ハワイアンにしようよ」と言ったのは栄昇なんですよ。加山さんはハワイアンを日本に紹介してくれた原点的な方なので、納得がいきました。それで、加山さんのハワイに関する音楽をいっぱい聴いて作り始めて、できたものを栄昇に渡しました。
比嘉:制作がスタートした時点で、加山さんに歌っていただくことは決まっていました。その時に思ったのは、もし今、岩谷時子さん(※加山雄三作品の作詞を多く手掛けた作詞家。2013年に逝去)がいらっしゃったら、岩谷さんが歌詞を書いたら、加山さんはうれしいだろうなと思うわけですよ。この曲の歌詞を書く時、僕は岩谷時子さんになりきっていました。まず岩谷さんの書かれた歌詞にたくさんふれました。岩谷さんの歌詞は素晴らしいので、あの域には到底及びませんが、岩谷さんのエッセンスが自分の中から滲み出て、加山さんに届けられたらと思いながら書きました。
――レコーディングはどのような感じで進行したのですか?
比嘉:基本的に「せーの」でスタジオで演奏して、その音をそのまま録音しています。昔ながらのレコーディング方法ですよね。石垣島のスタジオは、親父が建設業をやっていた時に使っていた現場小屋に、14ミリの厚さの壁をつけて、無理矢理改造しました。通常のスタジオみたいにガラス張りになっていないので、目を合わせて演奏できません。それぞれヘッドフォンをして、雰囲気で合わせるしかできないので、常にバラバラに終わっていました(笑)。
島袋:でっかいプレハブ小屋なので、雨が降ってきたら、屋根にあたる音がするので、レコーディングができないんですよ(笑)。実は「ワイキキシェル」は、雨が上がった瞬間に、「今だ!」って録音したのですが、ポツンポツンという雨音がかすかに入っています(笑)。
比嘉:不便と言えば不便ですが、多分、昔のモータウンのレコーディングもそうだったと思います。石垣島のスタジオでレコーディングできたのは、「せーの」でやれるバンドだからですね。クリック(一定の周期で正確な拍を刻むガイド音)を基準にして音を重ねていくなら、設備の整った都内のスタジオのほうが圧倒的にいい。僕はクリックどおりに歌えないので、もたったり走ったりという演奏の中で当たり前に起こることをそのまま録音しています。
――「お嫁においで」のカバーでは一五一会(※沖縄の伝統楽器である三線の手軽さとアコースティックギターの音色を併せ持つことを目指して開発された指一本で弾き語りができる楽器。BEGINの比嘉が考案した)を使っていましたが、今回の「ワイキキシェル」では使っていませんよね。アルバム収録曲で、レコーディングで一五一会を使った曲はありますか?

島袋:使おうかという話もあったんですが、今回は使っていないですね。
――一五一会を考案されたのは2003年のことでした。新しい楽器を作る発想も素晴らしいです。
比嘉:一五一会は、現在世界大会も開催されていて、楽器として歩き出していますね。僕の場合はライブでギター、三線、ウクレレ、一五一会、ウォッシュボードも弾いていますが、本当の意味での“一五一会弾き”の方々がすでにいらっしゃるんですよ。そういう方々が集まって世界大会を開催しています。そのプレイを見ると、「すごいなぁ」と思います。発想したのは僕で、最初に弾き方の扉を開いたのは優なんですが、その優が、一五一会を弾いている人を見ると、「すごい」と思うようです。
島袋:たまにYouTubeを見るんですが、素晴らしいプレイをしていますよね。
比嘉:一五一会はすでに1つの楽器として、確立されているのかなと思います。
――話はアルバムに戻りますが、アルバムのラストに収録されている「なんくる君であれ」は、BEGINにとっての島唄の新しい代表曲になるのではないかと感じました。この曲はどんなきっかけから生まれたのですか?
比嘉:沖縄音楽にとっては、BEGINの影響が良かった部分もあれば、光と影のように良くなかった部分もあると僕は思っているんですね。島唄、もしくは沖縄民謡の線引きが難しくなったところがあるからです。多分、喜納昌吉&チャンプルーズ、ネーネーズ、りんけんバンドくらいまでは、線引きが濃くあったんですが、THE BOOMの「島唄」が流行歌になり、BEGINが「島人ぬ宝」を作ったあたりから、島唄のラインが広くなっていきました。「三線とアコギで島唄をやっています」という人たちがいっぱい出てきて。それはとてもいいことだと思うし、そこから沖縄民謡に入ってきて、コアな沖縄民謡にいく人も増えているし、実際に三線の人口も全国的に増えたんですよ。その意味では良かった部分もあったんですが、「これが島の情緒だよね」みたいな部分を、自分はしっかり表現できていたんだろうかという自問自答は常にありました。「イラヨイ月夜浜」は、大島保克と一緒に作った曲で、完全なるまぐれでできた曲でした。島の民謡酒場などでも定番の歌になりましたが、あれはまぐれだから、もうそういう歌は作っちゃいけないという気がしていたんですよ。でも今回、35周年ということで、一生にもう1回、自分たちなりの島唄が作れないだろうか、あの頃の気持ちに立ち返って島唄と向き合ってみようと思って作ったのがこの歌でした。
――この歌はBEGINの新たな島唄だと感じました。最後にこの曲が入ることで、BEGINはまた新たにスタートを切ったんだなと感じました。

上地:35周年という年にアルバム『太陽』ができたのは、とてもラッキーだったと思います。と同時にBEGINの活動のスタイルとしては、ライブがいちばん似合ってると思うんですよ。いいアルバムができたと思っているので、その楽曲たちを僕らがいちばん得意とするライブで、全国を回って広げていきたくなりました。
――ホールツアー『「さにしゃんサンゴSHOW!!」~35年目の音楽旅団ツアー~』も発表になりました。充実した35周年になっているのではないですか?
島袋:アルバムを完成させて、すぐライブハウスツアーのリハーサルが始まって、ホールツアーも控えているので、35周年を充実して過ごせているのはありがたいことですよね。3人とも57歳ですし、恐ろしいぐらいのスケジュールが入ってきそうで怖いですが、まだまだやれるなという気持ちでいます。
――ツアータイトルはどういうことから付けたのですか?

比嘉:デビューの頃、「僕らは音楽旅団」というキャッチコピーで活動していたんですよ。35周年になって、その旅がまだ続いていきそうなので、このタイトルにしました。若い世代を見ていると、音楽コンテンツって全部デジタルになっているから、時代を超えて聴けるじゃないですか。でも、ふとした時に、「プレスリーはもういないよ。The Beatlesもポールとリンゴしかいないよ」って、若い世代に言いたくなるんですよ。「だけど生身の人間はそうじゃないよ」と思いますよね。僕はボーカルなので、自分がこの声で歌えるのが、あとどれくらいなのか、わからないんですよ。でも、今だったら、「恋しくて」も「涙そうそう」もいい感じでいけるので、今のいい状態のBEGINをぜひ観に来てほしいですね。「そのうち観に行こう」と思っている人も多いと思うんですが、そういう方々に、「今年、観に来たほうがいいよ」と言いたいです。
■リリース情報
『太陽』
2025年7月2日(水)リリース
通常盤(CD):3,500円(税込)
初回限定盤(CD+Blu-ray+フルカラーフォトブック):8,800円(税込)
アスマート限定スペシャルセット(CD +Blu-ray+フルカラーフォトブック +“太陽“オリジナルグッズ- フード付き冷感タオル –):10,350円(税込)※数量限定
予約リンク:https://lnk.to/begin_taiyou_CD
<アルバム収録曲>
01. 太陽
02. ほなバイバイ~大阪マドロス女~
03. 沖縄 Sunshine Day
04. ワイキキシェル
05. 星空の下の RADIO
06. 4 匹のチワワ
07. ただ雲になる
08. 開拓者
09. 夜空にブルースを
10. 空気いただきます
11. なんくる君であれ
<Blu-ray 収録曲>
BEGIN 35周年記念公演『さにしゃんサンゴ SHOW!!』(3月30日 日本武道館公演)
01. 東京音頭
02. 炭坑節
03. 渋谷百年総踊り
04. いつものように
05. 恋しくて
06. 涙そうそう
07. 三線の花
08. 海の声
09. 砂糖てんぷら
10. アサイーボウル
11. 国道 508 号線
12. 笑顔のまんま
13. 太陽
14. ただ雲になる
15. ほなバイバイ~大阪マドロス女~
(マルシャメドレー)
16. バルーン
17. 上を向いて歩こう
18. 365 歩のマーチ
19. 自動車ショー歌
20. お祭りマンボ
21. 好きになった人
22. ガラスのジェネレーション
23. 勝手にシンドバッド
24. 銀河鉄道 999
25. ソウセイ
26. 竹富島で会いましょう
27. オジー自慢のオリオンビール
28. かりゆしの夜
29. なんくる君であれ
EN1. ボトル二本とチョコレート
EN2. 島人ぬ宝
<特典映像>
・35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW!!』バックステージムービー at 日本武道館
・Album「太陽」ジャケット・ブックレット撮影ドキュメント & メンバートークセッション
・BONUS TRACK - 大阪城ホール公演への感謝を込めて -
35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW!!』「おつかれさん」「防波堤で見た景色」ライブ映像 at 大阪城ホール
■ライブ映像情報
「なんくる君であれ」ライブ映像(35周年記念公演 さにしゃんサンゴ SHOW!! at 日本武道館)
下記YouTubeチャンネルにて公開中。
■ツアー情報
『BEGIN「さにしゃんサンゴSHOW!!」~35年目の音楽旅団ツアー~』
特設サイト:https://www.begin1990.com/35show-tour/
[2025年]
9月19日(金)東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
9月20日(土)神奈川・小田原三の丸ホール
9月23日(火・祝)新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
9月27日(土)静岡・静岡市清水文化会館マリナート大ホール
9月28日(日)三重・イスのサンケイホール鈴鹿(鈴鹿市民会館)
10月3日(金)石川・金沢市文化ホール
10月4日(土)長野・長野市芸術館 メインホール
10月11日(土)鹿児島・宝山ホール(鹿児島県文化センター)
10月12日(日)宮崎・日向市文化交流センター 大ホール
10月17日(金)奈良・なら100年会館 大ホール
10月18日(土)兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
10月25日(土)島根・島根県民会館 大ホール
10月26日(日)香川・サンポートホール高松 大ホール
11月8日(土)福島・いわき芸術文化交流館アリオス アルパイン大ホール
11月9日(日)岩手・奥州市文化会館 Zホール 大ホール
11月13日(木)山形・酒田市民会館「希望ホール」大ホール
11月15日(土)秋田・由利本荘市文化交流館カダーレ 大ホール
11月16日(日)青森・弘前市民会館
11月23日(日)熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
11月24日(月・祝)福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
[2026年]
1月16日(金)沖縄・宮古島市文化ホール(マティダ市民劇場)
1月18日(日)沖縄・那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
1月31日(土)北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)
2月7日(土)宮城・東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
2月14日(土)山口・三友サルビアホール(防府市公会堂)
2月15日(日)広島・広島上野学園ホール
2月23日(月・祝)京都・ロームシアター京都 メインホール
3月1日(日)愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
3月8日(日)東京・NHKホール
3月14日(土)愛媛・しこちゅ~ホール(四国中央市市民文化ホール)
3月15日(日)高知・高知市文化プラザかるぽーと・四国銀行ホール
3月20日(金・祝)大阪・オリックス劇場
3月21日(土)大阪・オリックス劇場
3月28日(土)沖縄・石垣市民会館
3月29日(日)沖縄・石垣市民会館
■関連リンク
BEGIN35周年さにしゃんスペシャルサイト:https://www.begin1990.com/35show/
BEGIN オフィシャルサイト:https://www.begin1990.com/
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