Leinaが目指すのは聴く人を抱きしめるような音楽 学生時代の経験や影響源など明かす

Leinaが目指す“音楽”とは

 昨年リリースした「どうでもいい話がしたい」と「うたたね」が、立て続けにバイラルヒットを記録するなど、今年の活躍にも注目が集まる18歳のシンガーソングライター・Leina。彼女は、どんな学生時代を過ごし、どんな音楽に影響を受けてきたのか。ここまでにリリースされた楽曲の制作エピソードとともに、Leinaというアーティストの表現の核に迫った。(編集部)

作詞作曲を始めた頃の気持ちに戻って書いた「HAITE」

――この半年程で「Leina」という名前が一気に広まったと思います。ご自身の実感としてはどうですか?

Leina:そうですね。この半年くらいで、数年先のビジョンが見えるようになったというか、自分なりの夢が具体的に広がりました。それまでは漠然と「武道館でできたらいいな」とかだったものが、「この時までにはこれくらいのキャパ数でできるようになりたい。そのためにこれくらいの認知を取りたい。そのためにはどうしたらいいか」と明確に逆算して細かいところまで考えられるようになったというか。そういう感覚になってきた違いがありますね。

――自分の音楽が世に届いている実感が出てきたからこそ、より具体的に行くべき道ややるべきことが見えるようになったと。

Leina:ライブの大きさやストリーミングの再生数がこれまでと変わってきたというのもありつつ、去年は清水翔太さんのツアーにオープニングアクトとして回らせていただいて、そこで学ぶこともありました。あと、色々調べるようになりましたね。いろんなアーティストさんがどのような活動をしていて、そのために何をしてきたかを知ろうと思って。

――そういう時にLeinaさんがロールモデルにするアーティストは誰ですか?

Leina:自分も今SNSを頑張っているので、imaseさんのSNSの活動の仕方を見たり。Vaundyさん、King Gnuさんとかの過去を振り返って、いつどういったことをやっているか、どういう楽曲を出して大衆性に寄り添ってきたのかとか、いろんなアーティストのことを自分なりに調べて分析しました。

――「Leina」としてどういう音楽を作って、何を表現すればいいのか、というビジョンがLeinaさんの中で明確になってきているのだろうなと、ここ最近の楽曲を聴いて感じていました。最新曲「HAITE」はどういうことを考えて今この曲をリリースしようと思ったのでしょう。

Leina:この曲自体は、去年の6月とかに書いたもので。ストレートな曲じゃないですか。作詞作曲を始めたばかりの14歳の頃は、ラブソングも書いてはいたんですけど、どちらかというとつらいことや死生観について多く書いていて。最近はそういうストレートな曲をあまり書いてなかったんです。でも歳上の友達が昔のLeinaのストレートな楽曲を聴いて「これを学生時代とかに聴いていたら救われてたな」って言ってくれて、やっぱりこういう曲には何かをもたらす影響があるんだなと改めて思って、あの頃に気持ちを戻って書いてみようかなと思ったんですよね。歌ったところで、聴き手の代わりになる言葉は歌えたとしてもその人の人生とか行動、考え方を変えることはできないかもしれない。でも多少なりとも希望や勇気を与えられる中で、自分が歌うことによって聴き手に何をもたらすことができるんだろうと思った時に、ストレートな言葉を使ってちょっとアップテンポのかっこいい曲を書いてみようと思って書いたのが「HAITE」です。

――14歳の時(2019年)にリリースした「ねえ 誰か」とかもそうですし、「HAITE」も、自身で痛みや孤独を経験していないと書けないような歌詞だなと思ったんですね。Leinaさんとしては、どんな経験からこの曲を書くことができたのでしょう。

Leina:中学3年生の時に音楽活動を始めたんですけど、その時、すごく馬鹿にされたことがあって。その時、というか、元々ちょこちょこ馬鹿にされるタイプだったんです。「質問箱」というアプリがあって、匿名でいろんな言葉が書けて、誰が書いたかわからない言葉が届いて、それをSNSに出して返信するみたいなことが流行っていたんですよ。そこでいろんな心ない言葉を書かれたり、学校の廊下で変な声で自分の曲を歌われてゲラゲラ笑ってたり。自分も相手も幼かったからっていうのもあるんですけど。そこまでひどいいじめではないんですけど、当時の自分はすごくつらかったんですよね。そういうことをもとに書き始めました。

――冒頭の〈馬鹿みたいな言葉が降りかかって/不利に掛かって/蔓延る廊下に群がって叫んで雑音真似しないで〉からもう、〈廊下〉とかの描写までリアルな体験なんですね。

Leina:リアルと混ぜつつではあるんですけどね。自分は小さい頃から音楽が好きで必然的にやると決めていたので、周りにどうこう言われたとしても「自分にはできないかな」とか一切思ったことがなかったんです。ただやっぱり悲しかったから。マイナスなことを思った時にあまり言えないし、怒りもできないし、飲み込んじゃうタイプで。そういう方って多いと思うんです。だから代わりに吐いてくれるような楽曲にしたいし、怒りのこもった楽曲になってもいいんじゃないかなと思って荒々しい楽曲にしました。

――それが、冒頭に続く〈出来ないだとかお前は無理とか/そんな話じゃ無いんだって〉という歌詞で、Leinaさんにとっての音楽は「できる/できない」「叶える/叶えない」みたいな次元の話じゃないということですよね。

Leina:そうですね。でも自分に限らず、みんなやり方次第で何にでもなれると思っているので。だからこそ頑張りたいなって思うし。夢を追っている人や何かを頑張っている人は必ず、後ろ指を指されることがあるだろうけど、自分の中にある信念を信じて挑み続けていたらきっと叶うよ、ということも込めて書きました。

――〈「逃げろなんて簡単にいう割には逃げ場なんて無くて/ただ同じ孤独の匂いがするから縋った」〉、ここはメロディがなく語りのパートになっていてかなりインパクトがありました。「逃げてもいいんだよ」みたいなことを言われても、逃げ場がないことって往々にしてありますよね。

Leina:狭い世界なりに一生懸命生きていることがきっとあると思うので、それを歌えたらなって。

Leina「HAITE」MV

Leinaの孤独な夜を救ってきた音楽

――孤独を感じた時、Leinaさんが縋ったものは何でした?

Leina:音楽ですね。自分でもなんでそんなふうに感じていたのかよくわからないくらいなんですけど、孤独な夜があったので。14、15歳の時はかなり感じてました。でも、そういう時は音楽を聴いて何とかなってました。

――私も振り返ると14歳の頃に音楽に救われていたタイプで、私の場合はスクールカースト上位の子が次々とターゲットを変えていく、みたいなことが一番大きな要因だったんですけど……。Leinaさんの場合、音楽を馬鹿にされることが孤独の要因としては一番大きかったですか?

Leina:いや、正直、そこというよりは……中学生の頃、すごくいじられキャラだったんですよね。いじられることがつらかったですね。今でも仲良い子もいるんですけど、中学生だったからお互い「それは度がいきすぎてるよね」とかがわからなくて。Leinaもあまり言えなかったし、うまく伝えれてなかったんだろうなと思います。なんか、笑っちゃうんですよね。それであっちもわかんなくて、とかもあるし。

――笑っちゃう、というのは一種の自己防衛の反応ですよね。

Leina:自分は周りと違うんだなって、ちょっとズレとかも感じていたし。なんか……1回笑えなくなったら、笑えなくなっちゃうんですよね。気分が沈んだらなかなか戻せなくて。そういう時にみんなといると、「あ、やばいな。今自分、めっちゃつまんないやつだな」みたいにどんどん落ちていって。今よりも感情をうまくコントロールできてなかったですね。それが一番孤独だったかなあ。居場所がなかったという感覚だったかもしれないです。学校でもそういう感じだし、安定した家庭ではなかったので。「理解者がいない」「なんで誰もわかってくれないんだろう」みたいに感じてました。自分は人の話を聞くのが好きで、悩みとかを相談されることが多かったんですけど、いざ自分が悩んだり悲しくなったりした時に聞いてくれる人がいない、みたいなふうに思っていたからかもしれないです。

――わかります……。って簡単に言うべきじゃないけど、私も当時どこに相談すればいいかわからなくて、将来自分は音楽を届けられる仕事をするか、カウンセラーになって誰にも相談できてない人を助けられたらなと思ってました。

Leina:あ! めっちゃ考えてました、それ! Leinaも、音楽じゃなかったらカウンセラーかなって思ってました。一時期、資格取りたいなと思ってたくらいです。

――当時、どんな音楽やカルチャーに触れてましたか? 14歳の時にリリースしたEP『Crying memories』を聴いた時は、宇多田ヒカルさんの「First Love」を聴いた時の衝撃を思い出したんですね。「この年齢の人が、なんでこんなことがわかるの? なんでこんなことを書けるの?」っていう。どういうものがLeinaさんのソングライティングの血肉になっているのでしょう。

Leina:小さい頃から音楽、映画、少女漫画、ドラマとかに触れていて、中学の時は美術部に入ってました。1年で帰宅部になっちゃったんですけど(笑)。音楽でいうと、森山直太朗さんの「生きてることが辛いなら」、欅坂46さんの「黒い羊」、中島美嘉さんの「僕が死のうと思ったのは」とかにめちゃくちゃ救われて、当時はその曲を聴いて朝がきてましたね。音楽を始めた当時には、back numberさんの清水(依与吏)さん、RADWIMPSさんの野田(洋次郎)さん、米津玄師さん、川谷絵音さんとか歌詞にすごく注目してました。あとは、想像するのが好きなんですよね。想像した時に鮮明に浮かぶというか。頭で見えた情景をペンに落としてる感じですかね。たとえば「こことここがもしもの関係で……」とか、これ(隣にあった観葉植物)が人だったら「すごく悲しそうに見てるな」とか、いろんな「仮」から想像を膨らませたりします。映画とか、友達の話とかも、すぐ感情移入しちゃうんですよ。想像した先で感情がすごく感じちゃうというか。

――Leinaさんにとってそうやって想像を広げて曲を書くモチベーションって何ですか? さっき話してくれたように「リスナーに対して」という想いもあると思うんですけど、それ以外にもある気がして。

Leina:そういうことが好きなんですよね。曲がどんどんできていく、あの感覚もすごく好きですし、出来上がった時の「うわあ、いいものできた」みたいな感覚も好きですし。曲を作るのが好きなんですよね。歌うのも好きだし。今は「次はこういう曲がいいのかな」とか、いろんな視点で考えるので、ちょっと前とは作り方とか作る時の気持ちやモチベが変わってきているんですけど、始めた当時はやっぱり「好きだから」ですね。楽しい。表現するのが好きですね。

――「表現するのが好き」というのは、Leinaさんの場合、自分を知ってほしい、自分を見てほしいみたいな欲とはまたちょっと違う感じがするんですけど、いかがでしょう。

Leina:ああ、どうなんですかね……。もしかしたら無意識にそこがあるのかもしれないし。でもやっぱりそれよりも、本当に、好きで楽しいとしか言いようがないな(笑)。

――その原動力で手を動している人こそ、生粋のクリエイター気質と呼ばれるものですよね。たとえばEP『tulip』の楽曲では、愛への焦燥感、振り回される想い、愛と憎しみの揺らぎとかがテーマになっているものが多いですよね。そういったことを歌うのは、どういう考えからだといえますか。

Leina:もちろん喜怒哀楽全部に寄り添いたいんですけど、「頑張れ」とかを言えるタイプじゃないというか、「もう頑張ってますよね」みたいな。倒れそうになった時にその人の背中をそっと支えられるような音楽とか、その人が「行こう」と思うタイミングまで待ってるような音楽が好きなんです。自分の性格的にもそういう感じで、自分なりに大事にしているところが音楽に繋がってるのかなと思いますね。

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