(sic)boy「Heartache」が再生数3億回超えでバイラルヒット 確かなスキルとリリックで大衆を魅了する求心力

(sic)boy、大衆を魅了する求心力

 (sic)boyが2021年にリリースしたアルバム『vanitas』の収録曲「Heartache」が、現在TikTokを中心にバイラル。同プラットフォームで同曲を使用した動画投稿数は26,000件を超え、再生数も約3億回を突破している。シンプルかつメランコリックなギターのアルペジオが感傷的なムードを醸し出すイントロが、日常の風景動画や楽曲紹介等のBGMとして使用されているようだ。TikTokが広まって以降、こうして過去の楽曲が突然注目を集めることはもはや珍しくはなくなった。例に漏れず、この曲で初めて(sic)boyの音楽に触れたリスナーが多数存在することは間違いないだろう。そこで本稿ではそんな新たな(sic)boyリスナーに向けて、彼の音楽のさらなる魅力を伝えるべく、6曲をピックアップ。(sic)boyの多彩な表現の入り口のいくつかを紹介しよう。

 (sic)boyは、L'Arc-en-Cielをはじめとしたロックバンドに多大な影響を受けながらも、2010年代後半に世界的な盛り上がりを見せたエモラップの潮流を国内で独自に昇華し、SoundCloudに曲をアップし始めるとメキメキと頭角を現した。そこからプロデューサーのKMと出会い、さらに勢いに乗ってロックとヒップホップをクロスオーバーしたスタイルで国内におけるエモラップ、およびミクスチャーロックシーンで注目を集める存在へと成長。さらに2023年のアルバム『HOLLOW』に収録された「Miss You」ではSEVENTEENのメインラッパーを務めるVERNONとコラボレーションするなど、今や特定のシーンに囚われない活動を展開している。

(sic)boy - Heartache (Animated Lyric Video)

 1曲目に紹介するのは現在バイラルしている「Heartache」だが、実はこの曲には2つのバージョンが存在する。今多く聴かれているのは前述の通り2021年のアルバム『vanitas』に収められたもので、こちらは(sic)boyとしてデビューする以前にSid the Lynch名義でSoundCloudに投稿された彼の初音源にして1stミックステープ『NEVERENDING??』(2018年)に収録されていた「Heartache」のセルフカバーである。一聴してわかる通り、両曲はもちろんベースは同じだが、オリジナルバージョンには荒削りながら彼のキャリアを通じての特徴となるキャッチーなメロディーを携えたボーカルがすでに光を放っており、オリジナルをいまだに愛聴しているファンも少なくない。また、『vanitas』収録バージョンではアーティストとしてのキャリアを進めた(sic)boyとして綴られたリリックが追加されており、(sic)boyの足跡を辿りたければマストで両者を聴き比べる必要があるだろう。

(sic)boy,KM - Heaven's Drive feat.vividboooy

 2曲目は(sic)boyの出世作と呼んでもいいであろう1曲、「Heaven's Drive feat.vividboooy」だ。本稿執筆時現在でYouTubeに投稿されたMVの再生数は2342万回を超えている(sic)boyの特大ヒット曲で、今や国内のヒップホップを代表するプロデューサー、KMとタッグを組んだ1stアルバム『CHAOS TAPE』に収録。軽やかにギターがループするトラックに、誰もが抱えた焦燥感に寄り添うようなリリック、心地良いライミング、キャッチーなフックなど......どこを取っても中毒性のある1曲であり、(sic)boyの存在を世の中に広く知らしめることになった必聴の1曲だ。

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