サザンオールスターズ、ニューアルバムを携えたツアーの威力の凄まじさ 兵庫慎司による東京ドーム公演濃密レポ

 2025年5月28・29日、東京ドームにて、『サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」』のファイナル公演が行われた。10年ぶりのニューオリジナル・アルバム『THANK YOU SO MUCH』のリリース(3月19日)をまたぎながら、1月11・12日の石川県産業展示館4号館を皮切りに、この東京ドーム2デイズまで、8都市のアリーナと5都市のドームを回ったツアーの千秋楽である。動員は1日50,000人×2日に加え、全国272館・589スクリーンでライブビューイングも行われ、約150,000人がリアルタイムで鑑賞。入場者全員に、曲に合わせて点灯する「THANK YOU SO MUCH ライト」が配布され、ライブの後半からそれが一斉に光って客席を彩る、という、近年のサザンのライブで恒例になっている演出が、今回も施されていた。以下、その1日目=28日のレポートをお届けする。

 この日演奏されたのは、以下の本編24曲、アンコール4曲だった。

1 逢いたさ見たさ 病める My Mind
2 ジャンヌ・ダルクによろしく
3 せつない胸に風が吹いてた
4 愛する女性(ひと)とのすれ違い
5 海
6 ラチエン通りのシスター
7 神の島遥か国
8 愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~
9 桜、ひらり
10 神様からの贈り物
11 史上最恐のモンスター
12 暮れゆく街のふたり
13 風のタイムマシンにのって
14 別れ話は最後に
15 ニッポンのヒール
16 悲しみはブギの彼方に
17 ミツコとカンジ
18 夢の宇宙旅行
19 ごめんね母さん
20 恋のブギウギナイト
21 LOVE AFFAIR~秘密のデート~
22 マチルダBABY
23 ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
24 マンピーのG★SPOT
アンコール
25 Relay~杜の詩
26 東京 VICTORY
27 希望の轍
28 勝手にシンドバッド

 以上の全28曲のうち、アンコールの2曲目の「東京VICTORY」は、東京公演でのみ演奏された。

 『THANK YOU SO MUCH』収録の全14曲からは、2023年の「茅ヶ崎ライブ2023」で披露された「盆ギリ恋歌」と「歌えニッポンの空」を除く12曲が演奏された。

 「桜、ひらり」で、ステージ後方のビジョンに桜の画が広がったり、ポップミュージックのすばらしさを教えてくれた昭和のクリエイターたちへの敬愛を歌った「神様からの贈り物」では、後半で尾崎紀世彦・宮田輝・弘田三枝子・永六輔・服部良一・植木等などの写真が映し出されたりと、それぞれの曲に合わせた演出あり。

 後半の21曲目以降からアンコールにかけては、定番の人気曲が並ぶ、言わば「大熱狂ゾーン」で、花火や火炎等の特殊効果、EBATOダンシングチームによる演舞などで、ステージが華やかに彩られた。東京ドームということで、アンコールの最後の「勝手にシンドバッド」では、巨人のマスコットのジャビットくんも登場した。

 「桑田、このツアーが終わると二度と使わない新作の被り物を頭部に装着」でおなじみの「マンピーのG★SPOT」では、いつにもましてアレな演出が入っていた。なんだかもう「まいりました」としか言いようがない気持ちになりました。

 そして。その後半より前のセットリストの、『THANK YOU SO MUCH』の収録曲以外は、ライブで披露されることがめずらしい曲が多数、の選曲になっていた。2024年9月23日の「最後の夏フェス出演」だった『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA』でも演奏されたのは、5曲目の「海」、7曲目の「神の島遥か国」と、8曲目の 「愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~」ぐらいではないか。

 たとえば1曲目の「逢いたさ見たさ 病める My Mind」は、ライブで演奏されたのは、1991年以来。6曲目の「ラチエン通りのシスター」は、2013年以来。14曲目の「別れ話は最後に」は1980年以来で、15曲目の「ニッポンのヒール」は1999年以来である。

 1stアルバムからの「別れ話は最後に」と、2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』からの「ラチエン通りのシスター」は、1978年・1979年の曲。「逢いたさ見たさ 病める My Mind」は1982年のアルバム『NUDE MAN』、「ニッポンのヒール」は1992年の『世に万葉の花が咲くなり』の曲である。

 インタビュー等でも語られているように、『THANK YOU SO MUCH』には、結成当時の自分たちへの原点回帰的な側面もあり、ゆえに、デビュー前に作ったが音源化されていなかった「悲しみはブギの彼方に」を収録する、ということも行われた。

 「別れ話は最後に」と「ラチエン通りのシスター」は、そのようなニューアルバムの趣旨に合わせて、初期の曲をセレクトした、ということなのではないかと思う。なお、「別れ話は最後に」と、その次の「ニッポンのヒール」は、アコースティックコーナーとして、各メンバーが楽器を持ち替え、座って演奏された。

 MCが入ったタイミングは、頭2曲が終わったところと、9曲目「桜、ひらり」に入る前と、13曲目の「風のタイムマシンにのって」を原 由子が歌い終えたところと、15曲目の「ニッポンのヒール」のあとと、アンコールの最初、の5回。一度目のMCでは、桑田、「東京ドームに帰ってまいりましたー! ただいまー!」と挨拶。オーディエンスの「お帰りー!」の声に「マンモスうれピー! 6年ぶりの東京ドームでございます」と、40年くらい前の流行語で応え、「すっかり老けちゃって。でも、THE ALFEEよりも年下です!」と力強く言い切る。この「THE ALFEEよりも年下です」は、今回のツアーのお気に入りだったようで、桑田、このあとも何度も言う。「THE ALFEEよりも年下です。石破総理より年上です」というアレンジバージョンもあった。

 二度目のMCでは、10年ぶりのアルバム『THANK YOU SO MUCH』がリリースされたことと、「大きな声じゃ言えないんですけど、おかげさまで」チャート1位になったことに触れ、ここでも「マンモスうれピー!」。

 三度目では、メンバーそれぞれに「調子どう?」と訊いたり、巨人の岡本和真選手が楽屋に差し入れを持って来てくれたことに触れたりする。その中で、桑田と原がツアーの前半でコロナに罹ってしまったり、大変なこともあったが、こうしてファイナルまで完遂できたことも、報告した。

 四度目のMCでは、来月でデビューして47年になることを伝える。ここで「THE ALFEEより年下です。石破総理より年上です」が出た。

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